もくじ
1. ハザードマップとは
2. ハザードマップの種類
3. ハザードマップの使い方
4. ”いざ”に備えて防災対策を
5. 命を守る行動をとるために備えよう
ハザードマップとは
ハザードマップとは、災害発生時に想定される被害範囲を地図化したものです。日本で唯一の国家地図作成機関である国土地理院では、ハザードマップを次のように定義しています。
自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図
参考:
ハザードマップを活用することで、災害発生時のエリア別の危険度がわかるため、安全なルートで避難しやすくなります。
ハザードマップで分かること
ハザードマップでは、地形や地盤の特徴や過去の被害状況などから、エリアごとの危険度が可視化されています。ハザードマップを活用することで、次のことが分かります。
・どのエリアに洪水や土砂崩れのリスクがあるか
・どこに避難すべきか
・安全性の高い避難経路はどこか
ハザードマップでは、災害の発生リスクに合わせて赤・黄色・緑などで色分けされているため、直感的な判断が可能です。現在では、「ハザードマップ」という名称が広く浸透していますが、自治体によっては防災マップ、被害予測図、被害想定図、アボイド(回避)マップ、リスクマップと表記しているケースもあります。
ハザードマップはなぜできた?
ハザードマップは1991年の長崎県雲仙普賢岳の噴火や1995年の阪神・淡路大震災を契機に、重要性が認識されるようになり、国と自治体が協力しながら本格的な作成がスタートしました。
実際の災害で効果を発揮したのは、2000年に発生した北海道有珠山の噴火だといわれています。有珠山は、おおよそ20年から30年の周期で噴火を繰り返している活火山です。2000年の噴火では、前兆の観測とハザードマップの活用によって、死傷者を出すことなく住民全員が無事避難できました。
その後、2015年の水防法改正により水害ハザードマップの作成が必要になるなど、法整備も進んできました。2020年からは、宅地建物取引業法施行規則の一部改正により、不動産取引時に水害ハザードマップを用いて説明することが義務化されています。
ハザードマップの歴史はそれほど古くありませんが、この30年で急速に整備され、活用場面も広がっています。
ハザードマップの種類
ハザードマップには、次の6種類があります。
・洪水ハザードマップ
・地震ハザードマップ
・津波ハザードマップ
・火山ハザードマップ
・高潮ハザードマップ
・内水ハザードマップ
洪水ハザードマップ、津波ハザードマップ、高潮ハザードマップ、内水ハザードマップ
を総称して「水害ハザードマップ」と呼びます。それぞれのハザードマップの特徴を見ていきましょう。
洪水ハザードマップ
河川が氾濫したときに想定される浸水域や浸水深を表示した地図です。基本的には1枚の地図のなかに、小学校などの避難場所や緊急指定病院、防災関係機関の情報がまとめられています。
東京23区の場合、荒川に隣接する足立区や江東区、江戸川区などが浸水リスクが高いといわれています。2019年5月に江戸川区が発刊した「江戸川区水害ハザードマップ」では、「ここにいてはダメ」というインパクトのある文面で、区外への避難を呼びかけています。東京23区の東側は海抜ゼロメートル地帯も多く、浸水深の想定が2階以上の天井までつかる5.0m以上となるエリアも少なくありません。
参考:
地震ハザードマップ
地震が発生したときに想定される揺れの強さや建物倒壊のリスクを表示した地図です。火災危険度や液状化のリスク、避難・消火・救助の困難さなどが記載されているケースもあります。
東京都では都市整備局が「あなたのまちの地域危険度」パンフレットを作成し、地震に関する危険度を公開しています。こちらも洪水ハザードマップと同様に、23区の東側がリスクが高い傾向です。豊島区や杉並区、練馬区をはじめとする西側の危険度ランクが低い理由としては、地盤の強固さが挙げられます。ただし、23区の西側であっても、谷底低地エリアは存在するため、各自治体が発行する地震ハザードマップで詳細を確認しましょう。
参考:
津波ハザードマップ
津波が発生したときに想定される浸水域や浸水深を表示した地図です。津波の被害は海沿いの自治体に限られるため、すべての自治体が作成しているわけではありません。東京23区では、江戸川区、江東区、中央区、港区、品川区、大田区が海に面していますが、東京湾は外洋からの入口が狭い地形なため、大きな津波が発生するリスクは低いと考えられています。
港区の津波ハザードマップでは、防波堤や水門などの防潮施設が正常に機能した場合、ほとんど被害は出ないという予想です。ただし、防潮施設がすべて損傷した場合には、液状化による地盤沈下や2.0m程度の津波被害も想定されています。一部の津波避難ビル周辺も浸水する可能性があるため、状況に応じて避難場所や避難経路を見直す必要があります。
参考:
火山ハザードマップ
火山の噴火による火山灰や噴石、火砕流などの影響範囲を表示した地図です。現在日本には111の活火山があり、北海道から沖縄まで広く分布しています。ただし、近畿地方や四国など活火山がないエリアも存在します。
東京では、伊豆大島、新島、神津島、三宅島、八丈島、青ヶ島の火山ハザードマップが作成されています。伊豆諸島は火山活動が活発なエリアで、2000年の三宅島噴火では全島民が避難生活を余儀なくされました。火山は前兆が予測しやすい災害といわれていますが、噴火の度合いによっては被害が大きくなる可能性があります。ハザードマップでリスクが低いエリアでも、噴火に備えて何らかの対策を講じることをおすすめします。
参考:
高潮ハザードマップ
高潮の発生で海水が堤防を越えたときに想定される浸水域や浸水深を表示した地図です。高潮とは、台風や低気圧などが原因で高波やうねりが起こり、海面が通常時よりも高くなる現象を指します。
東京都江東区の高潮ハザードマップでは、想定される深水に加えて、避難に関する情報や浸水継続時間の目安も記載されています。江東区の想定では、浸水継続時間が1週間以上となるエリアも少なくありません。高潮のリスクが高い地域は、避難が長期化することも踏まえた対策が必要です。
参考:
東京湾に高潮が発生したときの 災害避難地図 (想定し得る最大規模)
内水ハザードマップ
下水道や水路の排水能力を超えた大雨のときに想定される浸水域や浸水深を表示した地図です。最近は、集中豪雨や局所的大雨(ゲリラ豪雨)による被害が増加傾向にあります。内水(うちみず)による被害は河川から離れたところでも発生する可能性があるため、洪水ハザードマップと合わせて確認しておきましょう。
東京都足立区では、水害ハザードマップとして「洪水」「内水」「高潮」の3種類が作成されています。水害発生時は周辺より海抜が低い場所、いわゆる「アンダーパス」に注意しなければなりません。避難する際は、ハザードマップでアンダーパスなどの危険な場所を確認し、できるだけ安全なルートで移動することを心がけます。
参考:
ハザードマップの使い方
不動産取引のときに説明が義務付けられているのは水害ハザードマップのみとなるため、地震や火山などの危険度が知りたい場合は、自分自身で情報を収集する必要があります。
ハザードマップは、市区町村役場や国土交通省のポータルサイトなどで入手できます。ここからは、「重ねるハザードマップ」と「わがまちハザードマップ」の使い方を解説します。
参考:
国土交通省の「重ねるハザードマップ」
「重ねるハザードマップ」では、洪水、土砂災害、高潮、津波のリスク情報、道路防災情報、土地の特徴・成り立ちなどを地図や写真に重ねて表示できます。使い方の手順は、次のとおりです。
1.検索したいエリアを指定する
2.災害の種類を選ぶ
3.危険度を確認する
洪水、内水、高潮など複数の水害リスクが該当する場合は、浸水深がもっとも大きくなる情報のみが表示されます。指定したエリアのさまざまな災害リスクを一括検索したいときに便利なサイトです。
「わがまちハザードマップ」
「わがまちハザードマップ」は、全国の市区町村のハザードマップが閲覧できるリンク集です。使い方の手順は、次のとおりです。
1.都道府県と市町村を指定する
2.ハザードマップの種類を選ぶ
3.確認したいハザードマップのリンクを開く
リンクを開くと各自治体のハザードマップのページが表示され、詳細な情報が確認できます。わがまちハザードマップでは、「ため池ハザードマップ」や「土砂災害ハザードマップ」なども検索可能です。
いざ”に備えて防災対策を
日本は地形・地質・気象などの特性により、災害が発生しやすい国土といえます。実際に、2020年7月の熊本豪雨、2021年7月の伊豆山土砂災害、2022年3月の福島県沖地震をはじめ、全国各地で毎年のように甚大な被害がもたらされています。
災害は、いつどこで発生するかわかりません。”いざ”に備えて防災対策をしておくと、自分と大切な人の命を守ることにつながります。
食料の備蓄
災害が発生すると物流が滞り、通常時のようにスーパーやコンビニで食料が確保できない可能性があります。電気やガス、水道などのライフラインが正常に機能しないケースも想定されるため、飲料水や調理が必要ない食料などを備蓄しておきましょう。
飲料水と食料は最低でも3日分、できれば1週間分用意しておくと安心です。注意したいのが、防災対策として備蓄した食料の賞味期限切れです。一般的に備蓄食料の賞味期限は、3~5年程度となるため、定期的に入れ替えを行って災害に備えましょう。普段の料理でも使える缶詰やレトルトパックを多めに購入し、日常生活のなかで「備える」「食べる」「買い足す」を繰り返す、ローリングストックという方法も注目されています。
非常用持ち出しリュックの準備
災害時は迅速な行動がその後の状況を大きく左右します。被害が大きくなる前に確実に避難するためには、非常用持ち出しリュックの準備が欠かせません。避難の際にあると便利なものは次のとおりです。
・飲料水
・食料
・衣類(下着)
・ポータブル充電器
・懐中電灯
・防災用ヘルメット
・軍手
・救急用品
・常備薬
・タオル
・ウェットティッシュ
・貴重品
これらはあくまで一例です。小さな子どもがいる家庭はおむつやミルク、高齢者がいる家庭は介護食やお薬手帳のコピーが必要になるなど、家族構成によっても持ち出すべきものは変わってきます。家族で相談しながら、非常用持ち出しリュックに詰めるべきものを決めていきましょう。
家具の転倒防止対策
家具の転倒防止対策は、命を守ることに直結します。タンスや食器棚などの大型の家具はもちろん、寝室に置かれた本棚やテレビなども転倒しないよう壁に固定しましょう。転倒防止対策としては、突っ張り棒や粘着マットを設置する方法があります。
転倒防止の重要性は認識していても、手間に感じたり、見た目が悪くなることを嫌がったりして、対策を後回しにしてしまう人は少なくありません。そんなときは、カタログギフトを活用するのもおすすめです。「LIFEGIFT」は、防災に特化したカタログギフトで、おしゃれな対策グッズが多数掲載されています。大切な人の”いざ”というときの備えとなるよう、出産のお祝いや離れて暮らす家族へのプレゼントとして贈ってみてはいかがでしょうか。
家族と安否確認方法の決定
災害時には携帯電話がつながりにくくなることをご存知の方は多いかと思います。しかし、そこから一歩踏み込んで家族と安否確認の方法まで話し合っておくことが重要です。防災対策としては、次の3つの方法が挙げられます。
・災害用伝言ダイヤル「171」を利用する
・災害用伝言板を利用する
・防災アプリを利用する
災害用伝言ダイヤル「171」は、電話回線を使い、伝言を録音することで家族間でコミュニケーションをとる方法です。災害用伝言板はインターネットを経由してメッセージのやりとりができるサービスで、災害用伝言ダイヤル171のウェブ版やNTTドコモ、au、ソフトバンクなどの携帯キャリアが提供するものがあります。
防災アプリは、一般企業や東京都などの自治体からリリースされており、さまざまな種類があります。複数の手段を確保しておくことで、家族の安否確認が迅速に行いやすくなります。
避難場所や経路の確認
ハザードマップは災害発生前から活用することで、効果を高められます。みなさんは、自分が避難すべき場所を知っていますか?「自宅から一番近いところにある学校や公共の施設に避難すればいい」と考えている人は、今一度ハザードマップを確認してみてください。
最寄りの学校が最適な避難場所の可能性もありますが、危険度の高いエリアを通ったり、冠水のリスクが高いアンダーパスが存在したりするルートは避ける必要があります。避難場所とそこに至るまでの経路を確認したうえで、「どこに避難すべきか」を決めておきましょう。
命を守る行動をとるために備えよう
法制度が整ってきたことを背景に、ハザードマップを目にする機会は増えつつあります。ですが、「不動産会社からハザードマップの案内があったから安心」と思うのではなく、自分自身でもしっかりと確認し、選択に責任をもつことが大切です。
家族や友人など、大切な人が引っ越したタイミングで防災グッズをプレゼントするのも、いざというときの対策になります。実用性とデザインを兼ね備えたLIFEGIFTのアイテムを、ぜひ一度ご覧ください。
5PM Journalでは、「あらたな気づき」を生み出すことを掲げてWebメディアを運営しています。暮らしに役立つ情報やこだわりのブランドをピックアップしていますので、もしよろしければ、ほかの記事もチェックしてみてくださいね。
参考
【KENTEM】ハザードマップと防災マップの違いとは?使い方や種類について徹底解説