SDGsには、17の目標と169のターゲットが掲げられています。ターゲットとは、17の目標を達成するために必要な具体的目標のことです。それぞれの目標の内容や目標に関連する世界の課題を紹介します。
2-1 1.貧困をなくそう
SDGsの目標1は、貧困をなくすことです。
サハラ以南のアフリカ地域では、未だ多くの人が極度の貧困から抜け出せていません。先進国においても、5人に1人の子どもが相対的貧困状態です。
目標1の5つのターゲットでは、世界中のあらゆる形の貧困をなくすことを目標に掲げています。極度に貧しい暮らしをしている人をなくすことだけでなく、各国の基準で貧しいとされる人の割合を半減させることが重要な課題です。
また、生活を守るための仕組みを重要視している点も特徴です。弱い立場の人が災害や金融ショックの被害に遭うことを減らし、生活に欠かせないサービスや金融サービスを使えるようにするなど、生活面をトータルで底上げする目標となっています。
2-2 2.飢餓をゼロに
目標2は、飢餓をなくすことです。
世界の約3割の人は、質・量ともに十分な食料を得られていません。量は取れていても質に問題があったり、栄養バランスが悪かったりすれば、栄養不良と判断されます。飢餓人口は2014年までは減少していましたが、近年は再び増加傾向にあるため、各国の対策が必要です。
目標2の5つのターゲットでは、すべての人が栄養のある食料を十分に手に入れられるよう、環境を守りながら農業を進めることを目標としています。また、小規模の食料生産者の生産性と収入を倍にすること、種子や生産される植物、家畜の多様性を守ることも目標に定め、持続可能な農業の実現を目指しています。
2-3 3.すべての人に健康と福祉を
目標3は、すべての人が健康で幸せな生活を送れるようにすることです。
医療や福祉のサービスが不十分な地域の多くは、開発途上国です。ワクチンが行き届かず命を落とす子どもや、知識や情報がないゆえに命の危険にさらされている人がいます。薬物やアルコールの乱用を防ぐことも重要課題です。
目標3の9つのターゲットでは、すべての人が必要な医療や福祉サービスを受けられる社会を目指しています。赤ちゃんや幼い子どもが予防できる原因で命を落とさないようにすること、エイズや結核などの伝染病をなくすことなどが、目標として掲げられています。
また、開発途上国では妊娠・出産で命を落とす人も多いのが現状です。そこで、性や出産などの保健サービスや教育、情報を得られるようにするとしています。
2-4 4.質の高い教育をみんなに
目標4は、すべての人が質の高い教育を受けられることです。
教育格差は地域によって大きく、サハラ以南のアフリカ地域では5人1人が小学校に通えません。世界の約半分の幼児は、小学校入学前の幼児教育を受けられずにいます。貧しい地域では教育を受けるメリットを親が理解できず、子どもを学校に通わせないケースもあるのが現状です。
目標4の7つのターゲットでは、だれもが公平に、一生にわたって学べる機会を広めることを目標に掲げています。すべての子どもが公平で質の高い教育を無料で受け、小中学校を卒業できるようにすること、すべての人が読み書きと計算ができるようにすること、仕事に関する技術や能力を備えた人を増やすことなどを目指しています。
2-5 5.ジェンダー平等を実現しよう
目標5は、ジェンダーの平等を実現することです。
21世紀になっても、人身売買や暴力、児童婚など、女性の権利が守られていない地域があります。子どものうちに結婚する「児童婚」は減少しているものの、以前として行われているのが現状です。2030年までに児童婚をなくすには、これまでの12倍のスピードで対策が必要であるとされています。
目標5の6つのターゲットでは、男女平等を実現し、女性の可能性を広げることを目指しています。すべての女性と女の子に対するあらゆる差別をなくすこと、人身売買や暴力、児童婚をなくすことなどが目標です。
また、子育てや介護、家事などが、報酬のある仕事と同様に大切な「仕事」であることを認めるようにするといった内容も盛り込まれています。
2-6 6.安全な水とトイレを世界中に
目標6は、だれもが安全な水とトイレを使用できることです。
水道のない暮らしをしている人は22億人以上、トイレのない生活をしている人は4億人以上いると言われています。安全な水を持続的に利用するには、上下水道の設備が不可欠です。しかし、上下水道の整備や管理には技術が必要なうえ、莫大な費用がかかります。
目標6の6つのターゲットは、今後も清潔な水を確保し、管理していくことを目指すものです。安全な水を安い価格で利用できるようにすること、屋外で用を足す人をなくすことなどを目標としています。
同時に、水質の改善や生態系の回復、水の再利用を増やすなどの取り組みも行い、持続的に安全な水を利用できる循環を作るとしています。
2-7 7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
目標7は、すべての人が安全で現代的なエネルギーを、今後も利用できるようにすることです。現在、電気を使えない人は世界に7億人以上います。
目標7の3つのターゲットは、エネルギー問題の解決を目指すものです。だれもが安い値段で、安定的で現代的なエネルギーを使えるようにすること、再生可能エネルギーを使う方法の割合を大きく増やすことを目標に掲げています。
再生可能エネルギーとは、原料として使っても減らず、二酸化炭素を排出しない太陽光や風力などのエネルギー源のことです。世界で使われているエネルギーのうち、再生可能エネルギーの割合はまだ2割以下。目標を達成するには設備の拡充や技術開発など、急ピッチで進める必要があります。
2-8 8.働きがいも経済成長も
目標8は、安定した経済成長を進め、人間らしく生産的な仕事ができる社会を作ることです。
世界では5人に1人の若者(15~24歳)が教育や職業訓練を受けられず、仕事に就けていません。失業率の上昇は社会不安につながるため、正しい経済政策を行うことが重要です。
目標8の10個のターゲットでは、各国の状況に応じて、人々が経済的に豊かになれることを目指しています。仕事や通学をしていない、また職業訓練を受けていない若者の数を大きく減らすこと、だれもが働きがいのある人間らしい仕事ができるようにすることなどを目標としています。あらゆる形の児童労働をなくすとしている点にも、注目です。
また、経済の生産性を上げる、新規企業の立ち上げや中小規模の会社の設立や成長を応援するなど、社会全体で豊かになろうとする姿勢が読み取れます。
2-9 9.産業と技術革新の基盤を作ろう
目標9は、産業と技術革新の基盤を作ることです。災害に強いインフラを作るには技術と費用が必要なため、開発途上国への支援が求められています。目標9の5つのターゲットでは、質が高く信頼でき、持続可能な災害に強いインフラを作ること、新しい技術を安定した産業へと成長させることが目標です。
また、各国の状況に応じて農業や漁業以外の産業の割合を増やすこと、小さな工場や会社が金融サービスを利用しやすくし、市場に広く組み込まれるようにすることなども目指しています。多方面から産業を活性化させようとする意図が読み取れます。
2-10 10.人や国の不平等をなくそう
目標10は、人や国の不平等をなくすことです。
多くの国で、富や所得格差が広がっています。2017年には世界の人口の1%の人が持つ資産が、世界の資産の33%に相当するというデータが発表されました。また、同じ国でも都市部と農村部における格差が広がっています。
目標10の7つのターゲットは、主に所得格差の是正や、混乱のない安全な移住や移動を進めることが目標です。各国で所得の低い方から40%の人々の所得の増え方が、国全体の平均を上回るようにすること、より効果的で信頼できる、納得できる経済・金融制度を作るなどの目標が掲げられています。
また、金融市場や金融機関に対するルールが守られているかを監視するとしている点にも注目です。
2-11 11.住み続けられるまちづくりを
目標11は、安全に暮らせる災害に強いまちづくりです。
自然災害により、避難や移住を迫られるケースが増えています。気候変動の影響で干ばつや豪雨、砂漠化などが増えると食料不足の危機につながるおそれもあり、早急な対応が必要です。
目標11の7つのターゲットでは、安心・安全に重点を置いた目標となっています。災害によって被害を受ける人や命を落とす人の数、経済的な損害を減らす、都市部に住む人が環境に与える影響を減らすなどとしています。
また、すべての人が安全で住むのに十分な家に、安い価格で住むことができるようにする、安い値段で、安全に持続可能な交通手段を使えるようにするといった環境整備にも言及しているのが特徴です。
2-12 12.つくる責任、つかう責任
目標12は、地球環境と人々の健康を守るために、生産者も消費者も責任のある行動をとることです。
世界で生産される食料のうち、3分の1が生産から消費の過程で捨てられています。日本の食品ロスは523万トン。毎日国民1人当たり、お茶碗約1杯分の食料を捨てている計算になります。
目標12の8つのターゲットでは、ごみの削減やリサイクル・リユースに言及。1人当たりの食品ロスを半分に減らす、国や自治体が物やサービスを購入する際は持続可能な形で行われるようにする、などの目標が掲げられています。
また、天然資源を持続的に管理し、効率よく使う、化学物質やごみが環境に影響を与えないように管理するといった難題にも取り組むとしています。
2-13 13.気候変動に具体的な対策を
目標13では、気候変動から地球を守るために具体的な行動を起こすとしています。
国連が行った1995~2015年に起きた災害に関する調査によると、特に増えている災害は洪水と台風、ハリケーンやサイクロンです。特に台風やハリケーン、サイクロンは命にかかわる危険が高く、個人でも防災対策をしておく必要があります。また、温室効果をもたらす二酸化炭素の排出量は世界で増加しており、気候変動の要因となっています。
目標12の3つのターゲットでは、気候に関する災害や自然災害に備えること、気候変動への対応を国の政策や戦略、計画に入れることが目標です。気候変動を警戒する教育や啓発をより良いものにし、人や組織の能力を高めるなどの目標も盛り込まれています。
2-14 14.海の豊かさを守ろう
目標14は、海の資源を大切に使うことです。
海洋汚染の問題が表面化して数十年たちますが、未だ解決されていません。今もペットボトルやビニール袋などのプラスチックごみが、海に流れ出ています。未処理の下水や農薬などが海に流れ出した結果、海洋生物が住めなくなる低酸素の海域も増えているのが現状です。
目標14の7つのターゲットでは、あらゆる海の汚染を防ぐことや、海と沿岸の生態系の維持が目標に掲げられています。魚介類などの水産資源の乱獲をなくすこと、法に反した漁業には補助金を出さないことが盛り込まれている点にも注目です。
海は世界とつながっています。ひとつの国だけでは、海の豊かさを守ることはできません。目標14を達成するには、国際社会の協力が不可欠です。
2-15 15.陸の豊かさも守ろう
目標15は砂漠化を防ぎ、多様な生物が生きられるように陸の資源を大切に使うことです。
人による環境破壊や気候変動により、多くの生物が絶滅の危機に瀕しています。砂漠化や土壌の劣化が進んでいることも問題です。
目標15の9つのターゲットでは、生物の多様性や生態系を守ること、持続可能な森林を管理することが目標に掲げられています。また、外来種の影響について言及されている点も見逃せません。外来種の侵入を防ぎ、対策の優先度が高い外来種は駆除を始めるとしています。
また、開発途上国においては密猟も大きな問題です。象牙やサイの角の取引は法律で禁止されていますが、実際は高値で取引されています。保護しなければならない動植物の密猟の取引をなくすため、国際的な支援を強化するとしています。
2-16 16.平和と公正をすべての人に
目標16は、平和ですべての人が法や制度で守られる社会を作ることです。
残念ながら、暴力や虐待、搾取や人身売買は地域によっては現在も続いています。あまり知られていませんが、家庭における暴力が禁止されている国は少なく、暴力から法で守られない子どもは多いのです。
目標16の10個のターゲットでは、あらゆる暴力と暴力による死を大きく減らすこと、人身売買や搾取をなくすこと、組織的な犯罪をなくすことなどを目標としています。
また、世界には出生届が出されていない子どもがたくさんいます。出生届がないと学校に入学できず、犯罪に巻き込まれても裁判ができません。こうした状況を改善すべく、すべての人が法的な身分証明書を持てるようにすることも、ターゲットに盛り込まれています。
2-17 17.パートナーシップで目標を達成しよう
目標17は、世界のすべての人が協力してSDGsの目標を達成することです。
先進国と開発途上国では、技術や人材、資金など、さまざまな面で差があります。自国だけでなく、サポートが必要な国には支援をする姿勢が大切です。しかし、2018年にODA(政府開発援助)に使われた金額は、前年よりも減ってしまいました。
目標17の19個のターゲットでは、先進国が開発途上国へどんな支援をするかが記されています。例えば、開発途上国への国内の資金調達を強化すること、対外債務の返済期間の延長や減額などが目標に掲げられています。
また、技術や知識の共有をして、開発途上国が自力で成長できるようにサポートするといった点にも注目です。