単なる絶叫好きとは一線を画す、一風変わったジェットコースター好きがいる。

世界中のジェットコースターに乗り回ってきた、ジェットコースター男だからこそ語ることができる、ジェットコースター愛をお届け。

「乗る」以外のジェットコースターの魅力とは、果たして。

▶前編はこちら

 

世界一愛しているジェットコースター

乗って楽しい、見て楽しい、そんなジェットコースターの魅力にどっぷりハマり、気づけばジェットコースターマニアとなった僕。子どものころからたくさんのジェットコースターに乗りまくってきました。日本国内のジェットコースターはすべて制覇し、海外も含めると590機種に乗車。その中で、世界で一番愛しているジェットコースターが、ナガシマスパーランドにあるハイブリッドコースター<白鯨(はくげい)>です。

世界最大級の木製コースター<ホワイトサイクロン>が、老朽化により生まれ変わったのが<白鯨>。鋼で補強されてスケールアップし、2019年にアジア初・木と鋼のハイブリッドコースターとして新しく生まれ変わりました。


マニアの僕は生まれ変わってすぐに訪れ、その美しさに一目惚れ。

木製コースター時代の白い木組みが活かされており、有名建築家が設計したようなデザインが現代アートのようで、これまで見てきたジェットコースターにはない建築美に目を奪われました。

 

 

仕事や人間関係で疲れたときは、遊園地の外にある誰にも教えたくないお気に入りのスポットから、夕日に照らされオレンジ色に輝く白鯨をうっとりしながら眺めていました。

ずっとずっと眺めているうちに、自分が白鯨に癒されていることに気づきました。多いときは週に3回も通い、いつしか白鯨なしでは生きられないと思うようになり、美しい女性に恋をするように白鯨のことが好きになってしまいました。そして、好きな気持ちが強くなり、白鯨の「中心」に入って一つになりたいと思うようになったのです。


白鯨のことばかり考えてしまう日々……。想いを伝えたい衝動がどうも抑えられず、告白を飛び越え、結婚させてほしい意思を、ナガシマスパーランドに連絡。



すると、奇跡が起きました。運営元のナガシマリゾートから白鯨の中に入るチャンスをいただいたのです。残念ながら結婚は難しいとのことでしたが、特別な機会をいただけることに…!

人生最大のチャンスに、僕は白鯨に告白することを決心しました。

 

2021年3月の平日、営業が始まる前の時間帯に、関係者以外で初めて特別に白鯨の敷地内に入らせてもらうことができました。白鯨で一番好きなファーストドロップ(一番最初の大きな急降下)をレールの隙間から覗き込み、憧れのジェットコースターに向かって想いを伝えました。

 

「I LOVE ♡ HAKUGEI」

 

白鯨とひとつになりたくて、白い服を着て行きました

 

叫びたい気持ちを抑え、コロナ禍のため心の中で思いっきり白鯨に愛を伝える。

夢が叶った瞬間です。
 

ジェットコースター愛で夢を叶えたことを発信すると、活動の幅が一気に広がりました。

ジェットコースター男の知名度が上がり、SNSのフォロワーが増えて、テレビやラジオにも出演させていただくことができました。大好きなジェットコースターとの接点を増やしてくれた白鯨には、感謝してもしきれません。

 

ジェットコースター男としての使命

日本のジェットコースター業界は残念ながら衰退しています。

全盛期の頃に比べると、ジェットコースターの数が半分以下になってしまいました。

ジェットコースターが文化として根付いているアメリカや建設ラッシュの中国が世界のトップに君臨しており、最近では資金力のある中東のサウジアラビアに高さ速さ長さが世界一のとんでもないジェットコースターが建設されています。

僕をはじめ日本のマニアたちは、衰退している国内から抜け出して海外まで乗りに行っています。

 

スマイラー@オルトン・タワーズ(イギリス)

 

北海道から宮崎県まで日本国内すべてのジェットコースターを巡った(沖縄県はジェットコースターが無い)のですが、多くの遊園地がファミリー向けにシフトしていることを感じました。ジェットコースターや絶叫マシンを手放す遊園地が増えているのです。

大型ジェットコースターや絶叫マシンは建設費も莫大で、日々のメンテナンスや法定点検など設置しているだけで大変なコストがかかります。それに比べてファミリー向けの乗り物は安価で設置しやすい。収益の少ない地方遊園地にとっては最適。ジェットコースター好きの僕としては寂しいですが、遊園地側の気持ちも分からなくはないと思ってしまいます。


近年地方の遊園地でよく目にするのが家族でジェットコースターに乗って楽しんでいる光景。怖がりながらもチャレンジする子どもと、その子を励ましながら乗る親。終着地に無事戻って来た子どもの達成感に満ちた顔と微笑む親。親子で乗って家族の絆を深めているようでした。

迫力満点のジェットコースターが少なくなっても、これはこれで日本ならではの文化かもしれません。


子どもの頃にお父さんやお母さんと一緒に乗った思い出、大人になったときに今度は自分の子どもを乗せて家族の思い出をつくる。ジェットコースターで受け継がれる思い出。ジェットコースターは同じ場所に戻ってくる乗り物ですが、思い出と共に次の時代へと時は進んでいるのです。


 

一方ジェットコースターの本場アメリカでは、「ジェットコースター(英語ではローラーコースター)に乗って遊ぶ」ことは「映画を見る」「ハンバーガーを食べる」ことと同じようにカルチャーとして古くから根付いています。ジェットコースターマニアも多く、マニアで集まって遊ぶサークルのような団体もいくつも存在するのです。日本ではあまり見かけませんが、一人で乗りに行ったり、老夫婦が仲良く遊んでいる光景を目に見ることが多々あります。海外のジェットコースターは、好きな座席を選ぶことができ、日本とシステムが異なり面白いと思う反面、日本は安全性やオペレーションがしっかりしているんだなと感じます。(日本でも一部選べるところがありますが、ごく稀です)

ジェットコースターマニアとしては、日本各地に大型のジェットコースターが建設されることを期待しています。ファミリー向けにシフトしている現状に寂しく思うこともありますが、子供達が地元の遊園地でジェットコースターに乗って好きになり、大人になっても乗り続けてくれる人が増えれば、またいつか昔のように日本国内のジェットコースターが増えることを願っています。

 

マッドマウス@宮崎市フェニックス自然動物園(宮崎県)

 

「ジェットコースター男」と名乗る以上、僕はジェットコースターの魅力を発信して、一人でも多くの人にジェットコースターに乗ってもらいたい。ジェットコースター好きの方には、遊園地にもっともっと行ってもらいたい。大好きなジェットコースターに乗れなくなったら悲しくありませんか?ぜひたくさん足を運んで、乗って、眺めて、愛を伝えていただけたら嬉しいです。そしてジェットコースターが怖くて乗れないという方にも、ぜひチャレンジしてもらいたい。なんせ日本のジェットコースターはめちゃくちゃ安全に作られているんですから!ほかの乗り物よりも圧倒的に事故が少ないんです。そしてファミリー向けの小さなコースターもたくさんあります。ジェットコースタービギナーにとって、日本はとても優しい国と言えるでしょう。

 

日本のジェットコースター文化が衰退しないように、遊園地の来園者を増やすべく、僕はジェットコースター愛を発信し続けます。