実は大の金魚好き、照英! 前編では幼少期の魚との出会い~金魚を好きになるまでについてお聞きしました。さらに後編では金魚にフォーカスして、照英ならではの金魚愛をお届けします。金魚に対する愛情が溢れまくりです。

 

照英のギョッとするような、金魚愛(前編)」はこちら

 

金魚は人間が作出してきた芸術品

飼育していた、東海錦。遺伝では白い部分は出ない

 

これまでいろんな金魚を飼ってきましたけど、僕が一番美しいと思っているのが東海錦という品種。胸ビレを器用に使ってシーラカンスみたいな泳ぎ方をするんですけど、天女の羽衣のような尾ビレと体型のバランスがずばり自分好み! 実は東海錦は、調色された品種なんです。つまり人間がデザインをしている。本来は全身オレンジや黒なんですけど、赤い顔とヒレだけを残して身体の鱗はすべて剥ぐ。そうするときれいな白色が出るんです。じゃあ、人間が手を加えなければどうなるかというとオレンジ色のしっぽが長い和金になる。この模様は遺伝では生まれないんです。金魚って「人間が作出してきた芸術品」と言われていて、最高傑作の作出が令和の時代にも続いているんですよね。東海錦のような品種が生まれた背景にある、そういう芸術性も金魚に惚れ込む理由のひとつです。海や川には人間が作り出した魚なんてほぼいませんから。

熱帯魚とか海水魚と違って、真っ青の金魚っていうのもいないんですよ。もう何十年何百年と追い求められている金魚界永遠のテーマと言われているんですけど、海洋大学の教授に聞いても遺伝子的に青い金魚はできないそうです。自分も最初は「白と黒を掛け合わせたら青白くなるんじゃないか」と思ったんですけど、出ないんですよ。で、緑っぽいのを掛け合わせてみるけど黒になっちゃう。みんなそこを模索し続けているのが現状。でも今、少しずつ緑っぽいやつとか光に当たると反射して青く見える品種は出てきていて。自分も1匹でいいから出してみたいですよねえ。

東海錦の次に好きなのが、金魚掬いでお馴染みの和金。いろんな品種を飼って、一周まわって原点に戻ってきたような感じです。和金は平均13cmと言われているんですけど、数年前の世界記録では60cm! ペットボトルよりも大きいなんて、すごいですよね。単独飼育をすると大きく育つんですけど、金魚の元祖と呼ばれる和金がどこまでデッカくなるのか、今すごく興味があります。

 

照英が抱く金魚ドリーム

頭が発達が著しい丹頂

 

金魚の品評会では「農林水産大臣賞」が最上位なんですけど、その賞をとったら一匹300万円くらいの価値がつくこともあるんです。ちなみに錦鯉の場合だと2億3億の世界。錦鯉は海外のオーナーがたくさん持っていて、要は投資になっているんです。金魚はそこまでにはなっていないけど、一等をとったらやっぱりそれなりのランクがつくし、馬と同じように「種子をください、卵を分けてください」っていう人もいます。それに販売免許がいらないから、流通させればお金儲けもできる。もちろんそれがすべてではないですけどね。で、僕はというと金魚でお金を発生させる勇気がない。というか、愛情を込めて育てた金魚をバラまく勇気がないんですよね。

でも、いつか「照英養魚場」をやれたら楽しいだろうなあ。ネット販売とか道の駅で即売会をやったりとかね。ほら、江戸時代には金魚売りがいたっていうじゃないですか。「きんぎょ~え、きんぎょ」って天秤棒を担いで金魚を売り歩いていたっていう。いつか自分もケータリングカーみたいなやつで金魚売りをやってみたいですね。健康な金魚を水槽ごと売るので、そのまま育ててもらいたい。移動水族園みたいな車だったら楽しいだろうなあ。たまにうちの子の友だちにバケツに入れて金魚を配ったりすることもあります。みんな喜んで自宅で飼ってくれているみたいです。新品種作出よりもっと現実的な夢として、そういうふうに金魚の良さをもっと広く知ってもらえたらいいなっていう気持ちがあります。

願わくば、いつか30数種類を全部飼いたいですね。できればペアで二匹ずつ、叶うことなら全品種をひとつの水槽で飼ってみたい。高知の土佐金とか愛知の地金とか、あとは宮城の鉄魚っていう池で突然変異した変わった金魚がいて。そういう天然記念物に指定されている金魚も全部飼いたい。敷地と経済的に余裕がすんごいあるんだったら、水族館みたいな施設をつくりたいですもん。巨大水槽を壁に埋め込んで家一軒を全部水槽にしたい。で、金魚の水槽をバーって並べて一匹だけピラルクを泳がせたい。やりたいことが尽きないですね。

もし金魚と喋ることができたら? いろんなことを聞きたいけど、一番は俺に飼われて幸せか?ってことかな。これで幸せなのかなというのは、ずっと思い続けるかもしれないですね。それを知りたくなるのが、偏愛なんじゃないかな。テレビ出演にしたって俺が楽しければ観てくれている人も笑ってくれるだろうって感覚なんですよ。金魚もそう。俺が幸せなら金魚も幸せだろう!って。だって答えてくれないんだもん。不安なんだよ、正解かわからないし誰も合格だって言ってくれない。でもそういう偏愛者がいるからまわっている部分があると思うんですよね。

 

なんでもいいから楽しめるものを見つける


埼玉県の志村養魚場にて

 

「一度しかない人生を楽しもうぜ」ってよく言うじゃないですか。それならまず楽しめるものを見つけないと。なんでもいいんですよ。電化製品でも自転車でも恋愛でも。「彼女を笑顔にする方法をどんだけ見つけられるかな」とかね。その恋愛本がまだ2ページだとしたら残りの98ページをつくっていく過程が僕はもう楽しくてしょうがない。スポーツも芸能の仕事も金魚を飼うことも同じ感覚で「もっと楽しむ方法があるんじゃないか」って探り続けていたら、こうなっちゃったんです。害獣に食べられちゃってもまた卵から増やして時間と労力をかけて続ける努力と勇気。諦めずにコツコツ続けることの大切さも金魚の飼育から学んでいることなんですよね。そして、人生で大事なのは「やりたい!」って思うものを自分で見つける力。興味があることは絶対にすぐやったほうがいいですよね。悩む理由がない。だってやりたいんだもん。それを止められる人はいないんです。たとえ最初は誰かが笑っていたとしてもだんだん笑えなくなるから。突き抜けたもん勝ちですよ。

お祭りで掬った一匹を何十年も飼い続けることも愛情だし、交配させて繁殖させていくことも愛情。品評会に出すために一匹二匹を選び抜いて育てていくことも愛情のかたちだと思います。「ここまでなにかを愛する勇気があなたにありますか?」っていう話ですよ。歳をとるといつかできなくなることもあるなかで、永遠に愛すべきものを見つけられたと僕は思っています。