毎日毎日サラダを口に運び続ける、日本サラダ協会会長まなみ。彼女にとってサラダとは、「アート」でもあり「主食」でもあるとのこと。日々の食生活から導き出されるサラダへの彼女のユニークな眼差しは、私たちにどのような知らない世界を見せてくれるでしょうか?サラダの魅力に取り憑かれるあなたは、知らず知らずのうちに協会に入会しているかもしれません。

サラダは多種多様な体験型アート

サラダって、綺麗ですよね。手軽さやヘルシーなところは言うまでもなく魅力。

でもそれ以上に、色とりどりの野菜が一皿に丁寧に盛り付けられたその姿の美しさ。お皿に並ぶレタスの緑、トマトの赤、パプリカの黄色。締まりのあるオリーブの黒。

パレットの上の水彩絵の具のようにみずみずしく輝く野菜たちを、カトラリーで口に運ぶ。見た目の美しさ・香り・食感・味わいが目・鼻・口から流れ込んできて、私を彩っていく。

まるで五感で楽しめる体験型アートのような存在。それが私にとってのサラダです。

ふと考える。どれくらい「サラダ」食べているのだろうか私は、と。

もし365日毎日1回食べるとしたら、1年で食べるサラダは365食。それを考えると、年間500食くらいかな…と少し前まで思っていました。でも、それは私がサラダを「主食」にしている回数。3食×365日の食事における「副菜」も含めると1000回はくだらないんじゃないか、なんて思ってから、私は自信を持って「サラダ1000食」と豪語することになりました。

「毎日サラダばかりじゃ飽きちゃうでしょ」「実は無理してない?(笑)」と言ってくる知人もいますが、それは大きな誤解。多彩な野菜で彩るサラダには、無限の可能性があるんです。

例えば、旬のフルーツ・お肉・お魚を入れたサラダ、ヨーグルトを使ったスイーツのように甘いサラダ、パスタやマカロニを使ったサラダ。最近だとカレーサラダ・ビビンバサラダ・ガパオサラダなど、お米を野菜に変えたサラダも。パンがチョココロネやクロックムッシュなどにアレンジできるように、サラダの変幻自在さは米・パン・麺にも並んでいます。

もはや「主食」なんです、サラダは。

この世の食材は全てサラダに変換できる、と言ってもいいくらい、サラダボウルの守備範囲は広い。

だから、年間1000食のサラダ生活はその日の気分や体調に合わせて好きにカスタマイズできる、その度に新鮮な体験で私を楽しませてくれる、飽きようのない暮らしなんです。

サラダで身体+心=私を愛する

思い起こせば、私は生まれながらのサラダラバーだったわけではありません。

サラダに魅了されたのは、大学時代。生命工学を専攻していた私は、健康食品の研究を行ったり、ヘルスケア関連の事業を立ち上げたり、「健康に生きる」をモットーにするただのヘルスケアオタク。初めは、ただカロリーを抑えるために野菜たっぷりのサラダ中心の生活をしよう、と考えていました。

ちょうどこの頃、日本でサラダボウルが流行していました。テレビで紹介されていたのは、ボウルの中で色とりどりの具材が輝くサラダを提供する、原宿のサラダ専門店。ヘルスケアオタクであると同時にミーハーな大学生として、気づけば私はその店に足を運んでいました。ここがサラダ観におけるターニングポイント。

当時の私が知っていた「サラダ」は、千切りキャベツにトマトや細切りのきゅうりを乗せた「自宅のサラダ」。良くも悪くも地味で、普通の存在。

でも、お店で私の目の前にいたサラダは、綺麗で、美しくて、美味しかった。カスタマイズができると知ってすぐに通い始めたし、好奇心のままにいろんな組み合わせを試しました。カツオや焼き鮭、豚しゃぶと野菜を合わせる。ご飯に合わせるようなカレーを野菜にかけてしまう。お腹の空き具合や気分で組み合わせを変えたっていい…なんて自由な食べ物なんだ、とカルチャーショックを受けながら、サラダ生活にどっぷりでした。

そしていつしか、食物繊維がどうとか、ビタミンがどうといった栄養価よりも、サラダ生活を続ける「サラダを食べている自分」が好きになっていたんです。

サラダを見て目が喜んで、新鮮な野菜を頬張って「自然の恵みをそのまま体内に摂り入れている!」という実感が湧いて。食べ終わってから「あぁ、体に優しくできたな」なんて自分を愛でる気持ちが湧いて。こうして主体的な健康感で心も体も満足できるから、今や1年で1000食も食べてしまっているのかな。

健康は、単に身体の状態を示すものではなく、心と体が満たされた状態での生き方そのものを示すもの。自分の心が満たされていない時は、たとえ体調が万全でも健康ではありません。心の声に、常に素直に。

昔の私に言いたいのは、サラダを食べるきっかけは「カロリーを取りたくないから~」といった「仕方なさ」でもいいと思う。でも、ジャンキーな食事もたまには織り交ぜながらサラダを、そしてサラダを食べる自分を、愛してみてほしいな、と思います。

私もサラダ好き あなたもサラダ好き

…なんて語ってしまいましたが、私以外にもサラダ好きの人はたくさんいます。

「サラダが好きって言うと、どこか意識が高いように思われてしまう。だから好きって言えなくて…」という人たちが多いと感じて立ち上げたコミュニティ「サラダ協会」のメンバーは、気づけば5000人に。10回以上のイベントを開催してきましたが、いつも大盛況。

過去「サラダ検索アプリ」を開発していた時にボランティアスタッフを募集したのですが、大々的に宣伝していたわけでもなければ報酬をお支払いできるわけでもないのに、30名以上のサラダ好きが応募してくれました。

彼らの想いは、ひとえに「サラダを盛り上げたい」。心身への気遣いからサラダを好きになった方もいれば、農家さんを応援したくてサラダ生活を始めた方もいて、動機は様々。でも世の中で少しずつ、熱狂的なサラダ愛が見えるようになってきたなぁ、と思います。

ちなみに今日食べたのは、地中海メリメロサラダ。使いたかったドレッシングに一番合いそうだったんです。いろんな具材が入っていて、きらきらピカピカ、子どもの頃おもちゃ箱に感じたようなワクワク感。大きなフォークとスプーンでざっくりと混ぜて、気取らずに食べられました。
明日はどんなサラダを食べようか。考える時間、心がどんどん健康になっていくのを感じながら、今年何百食目かわからないサラダを、五感に刻んでいこうと思います。