街で見かける交通看板の中には、率先して危険な目にあう”ドジっ子”が生息している。あらゆるドジを通して、私たちに注意を促し事故から守ってくれる看板を「ドジッ子看板」と呼び、”ドジっコレクター” として収集する人・赤沼俊幸。気になるドジッ子の正体とは?前編では全国各地の看板から明らかになった、ドジっ子の属性について語ります。

イラストがある看板とない看板の違い

例えばあなたが車を運転している時、写真のような看板が目に入ったとします。

では、あなたに質問です。より注意深く運転するのはAとB、どちらの看板を見た時ですか?

車の運転は忙しいですよね。次の信号を遠目に見つつも、気になるのは前の車との車間。車内では好きな曲のサビを迎える直前かもしれないし、子供たちが暴れまくっているかもしれないし、ラジオからは続きが気になる人生相談が聴こえて「なんだか大変そうだな」と相談者に同情しつつも、自分の家族の顔を思い浮かべているかもしれません。赤の他人の人生相談は楽しいですよね。

話は脇道に逸れても、車の運転は脇道に逸れてはいけません。忙しい運転の最中、圧倒的にわかりやすいのはイラスト付きで飛び出し注意を伝えるBの看板でしょう。

文字だけで「飛び出し注意」と伝える看板よりも、訴求力があるのはビジュアル付きの実例で飛び出し注意を伝えるBの看板。これは交通安全看板に限った話ではないですよね。

このように飛び出し注意看板には、子供が飛び出す失敗をしてしまうイラスト看板が存在します。この失敗を私はドジと呼び、ドジをしてしまうイラストが入っている看板をドジっ子看板と呼んでいます。

ドジっ子看板自体を収集するのは難しいので、私はドジっ子看板を撮影した写真を集めています。

ドジっ子看板とは何か?

ドジっ子看板の話をすると「それって飛び出し坊や(または飛び出し注意看板)ですよね?」と言われます。この質問にはYesでもあり、Noでもあります。

以下の図をご覧ください。

飛び出しそうな子供が描かれている木の板をくり抜いた看板「飛び出し坊や」と言います。最も有名なキャラクターは「とび太くん」。最近はグッズ販売もあり、一部でかなりの人気があります。

「飛び出し坊や」も含む四角い飛び出し注意喚起看板を「飛び出し注意看板」といいます。この看板の材質は主に鉄やアルミなど。飛び出し坊やよりも耐久性に優れています。

ここまで「飛び出す」ドジの話だけをしました。しかし子供のドジは「飛び出す」だけではありません。川や池で溺れてしまったり、立入禁止の場所で遊んでケガをしたり、エレベーターの扉に指を挟めたり、走って滑ったり………子供は多種多様なドジをします。お子さんをお持ちの方ならわかっていただけるでしょう。

このような多種多様なドジの看板に対しての名前は存在していませんでした。そこで私は、様々なドジをする看板をドジっ子看板と名付け、ドジっ子看板の愛らしさを伝える普及活動をしています。 

ドジっ子を生物のように考えて分類する

ドジっ子看板収集を始めた初期段階は、街中でドジっ子看板を発見するだけで楽しい気持ちになります。しかし収集枚数が増えてくると、ある気持ちがフツフツと身体の中に湧いてくるのです。

「分類したい!!!」

コレクション癖のある方なら共感していただけると思います。たくさんのものを集めると、微妙な違いが目に付き、分類したくなります。例えばモノをコレクションしている方であれば、棚に置く位置や並べ方によって、意味を持たせるでしょう。

ドジっ子に過度な愛情を持ってしまった私は、ドジっ子を生物のように考えて、分類を始めました。そしてここまで読んだ方は「ドジっ子看板ってどんなものがあるの?」という気持ちにもなっていることでしょう。

ではどのようなドジっ子看板があるのか、私が分類したシチュエーション別に紹介していきましょう。

すべる科

冒頭で紹介したサッカーボールを追いかけて飛び出すドジっ子は「飛び出し科」と分類しました。このようにドジの行為によって、ドジっ子看板を分類することしました。

さて、最初に紹介するドジっ子は「すべる科」のドジっ子看板。ドジっ子は至る場所で滑ってしまいます。本看板が設置されている札幌市では冬、雪解け水で地下街の地面が大変滑りやすくなっているため、この子も滑ってしまいました。

本看板に登場する子は「さっぽろ地下街」公式のドジっ子。ドジっ子には所属があり、各団体公式ドジっ子キャラクターが皆さんに注意喚起する意味で、率先してドジを体現してくれています。「こういう子供がドジをしそう」というイメージの元、ドジっ子看板が制作されます。

ちなみにこの看板の見どころはカッコいい髪型と、クッキリしている手の生命線。危険な目には合いますが、きっと元気に長生きできるでしょう。安心してください。力強い生命線があるので!

あそぶ科

「あそぶ科」は遊んではいけない場所で遊んでしまうドジっ子。子供ってどんなところでも遊びたいですよね。実はこの看板、私がドジっ子看板が夢中になるきっかけになった看板です。

看板をよく見てください。このドジっ子は野球をしたいのか、サッカーボールをしたいのか、ラグビーをしたいのか、よくわかりませんよね。何で遊んでいいかわからないまま外国人が諦めた時にとるポーズを決める中、ボールが頭に直撃してしまう。

百歩譲って、公園で遊ぶとしても、種目を絞ってほしい。種目を絞れない中、ボールが当たってしまうなんて、究極のドジとも言えるわけです。彼は何をしたかったのでしょうか?何をしたいかわからないままボールが直撃。遊びすぎ注意の看板なのかもしれません。

見逃しがちな見どころはサッカーボールの模様。なんか変ですよね。最近は見なくなりましたが、昔は変な模様のサッカーボールってありましたよね。ノスタルジーに浸れるのもドジっ子看板の魅力です。

はさむ科

エレベーターの扉や、このウサギのように電車のドアに挟まれてしまうドジっ子は「はさむ科」と名付けています。

東京に住んでいる方は東京メトロに生息しているこのウサギを見たことがあるでしょう。近年はドジっ子看板に動物の起用も多くなっています。

さて、読者の方へのクイズです。挟まれている動物はなぜウサギなのでしょうか?

ヒントは下にいる鼻を怪我したトラです。

少しの間だけ、謎を楽しむドジっ子看板の魅力を味わいください。クイズの答えは記事の最後で発表しますね。

おぼれる科

川や池で溺れてしまうドジっ子を「おぼれる科」と名付けています。

女の子は柵から手を離してしまったためか、川に落ちてしまいました。

この看板の最大の謎は味のある顔をした男の手です。手をよく見てください。「4」の手をしていますよね。なぜ男の子は「4」の手をしているのでしょうか?

例えば直前まで女の子の手を握っていて離したとしても、手は「4」にならないですよね。本当に女の子を助けたいのなら手は「5」ほうがいいのではないのでしょうか。

「4」は何を示唆しているのでしょうか。ブロックサインでしょうか?この「4」の謎は未だに解けていません。謎が多い点もドジっ子看板の魅力です。

ちなみに女の子の口の中に「ひ」があることもこの看板の魅力的なポイントです。

はいる科

危ない場所に入ってしまうドジっ子を「はいる科」と名付けています。

働く車に憧れた少年が工事現場に入ってしまい、骨折の重症。ここで遊ぶことが危険であることがよく表現されている秀逸なドジっ子看板です。

この看板、右下にご注目。拡大したのが次の写真。

「TEZUKA PRODUCTION」と記載がありますね。そう、これはあの有名な手塚治虫先生が率いる手塚プロダクション制作のドジっ子看板なのです。もしかすると、手塚治虫先生が考えたドジっ子かもしれませんよね。そう考えると、この看板にありがたみが増しませんか?ドジっ子看板は実は著名なところが作っていることもあるのです。

ドジっ子看板の分類図を作成する

以上をまとめた分類図が以下のようになっています。

このような分類図を作成した結果、子供がどんな場所でどんなドジをするかの全体像が少しずつ明らかになっていきました。

すでに何かのコレクションを持ったあなたはこの内容を「うん、うん」と頷きながら読んでいると思います。

しかし、まだコレクションをしていないあなたはピンと来ていないかもしれません。何でもいいので、まずは何かコレクションをしてみましょう。少しずつ集め始めて、収集物が20を超えるぐらいなると、微妙な差に気づき始めるでしょう。そこであなたは思います。

「分類したい!!!」

ようこそ、こちら側の世界へ。自分流で分類してみましょう。とっても楽しいですよ。


(はさむ科のクイズ答え : 正解は2023年の干支がウサギだから。トラは2022年の干支のため、下に登場しています。このポスターは毎年変わります。来年の2024年は辰年。龍がどのようなドジをするのか今から楽しみですね!)

後編ではドジっ子看板の活動や、看板写真を2000枚集めてわかったことなどを紹介します!