もくじ

ファンダムとは

肩を組む人

ファンダムとは、アイドルやアーティスト、スポーツ選手を応援する熱狂的なファン集団を指しています。広義では、ファン集団が生み出す新しい文化を「ファンダム」と呼ぶこともあります。

ファンダム(fandom)は、愛好者を意味する「fan」と、管轄区域を意味する接尾辞「dom」を組み合わせた造語です。domを使った単語には、自由と訳される「freedom」や、王国と訳される「kingdom」などがあり、それぞれ範囲や領域といった意味を含んでいます。

KPOP界では、ファン同士の結びつきが強く、情報発信も積極的です。ファンダムから新しいカルチャーが生み出されることもあり、アーティストの活動を大きく後押ししています。それぞれのファン集団ごとにファンダム名も付けられており、独自のコミュニティを形成しています。

アーティスト名ファンダム名
BTSARMY(アーミー)
BLACKPINKBLINK(ブリンク)
TWICEONCE(ワンス)
SEVENTEENCARAT(カラット)

ファンダムとファンの違い

ファンダムとファンは、規模感が異なります。前述したとおり、ファンダムは熱狂的なファン集団を意味する言葉です。一方、ファンは個人の愛好家を表します。ファンダムは集団、ファンは個人を指している点が、もっとも大きな違いです。

では、ファンを複数形にした「fans」は、ファンダムと同じ意味になるのでしょうか。まずは、下記の例文を見てみましょう。

I’m a big fan of yours.(わたしはあなたの大ファンです) 
We’re big fans of yours.(わたしたちはあなたの大ファンです)

ファンを複数形にすることで、ファンダムと規模感は近付きますが、まったく同じ意味とはなりません。ファンダムは、単にファンが集まっているのではなく、一体感を重視する傾向にあります。ファンダムとして共通の目標を設定し、ファン同士が協力することで、その実現を目指します。

 

ファンダムが与える影響とは

KPOP界におけるファンダムの影響力は絶大です。公式からの供給を待ち、それを消費するだけでなく、主体性を持って行動にうつします。KPOPでは、MV以外にもさまざまな動画や情報が発信されるため、それをすべて把握するのは困難です。そこで、活躍するのがファンダムという集団です。

たとえば、非英語圏のアーティストが世界進出を目指すとき、言語の壁が立ちはだかります。公式側も英語で楽曲をリリースしたり、メンバーがその国の言語を学んだりしていますが、ファンダムは無償で翻訳を手掛けることでアーティストをサポートします。ファンダムの規模が大きくなるほど、翻訳を含む二次創作活動が活発化し、新しいファンが獲得しやすくなります。

 

ファンダムが持つ役割

ファンダムは、アーティストを応援するだけでなく、成長をサポートする役割を果たします。コミュニティとして団結することで、ファン個人では達成できないような夢や目標を叶えるのもファンダムの特徴です。

一例として、KPOPでは新グループをつくる際に、オーディションによってデビューするメンバーが選抜されることが多々あります。選抜の方法はさまざまですが、視聴者による投票によってメンバーが決まるケースも少なくありません。

多くの投票が必要なとき、ファンダムの拡散力が結果を左右することがあります。ファン個人がアーティストの魅力を発信しても、膨大な情報量のなかに埋もれてしまいがちですが、ファンダムがあれば効果的な広報活動が行えます。ファンダムは競争の激しいKPOP界で、推しを支え、成功へ導く存在といえます。
 

ファンダムがおこなう取り組み

宣伝バス

ファンダムがおこなう取り組みに明確な決まりはありません。インパクトのある活動を好み、トレンドの移り変わりも早いため、次々と新しい企画が立案・実行されています。

ここでは、ファンダムが主催する企画のなかでも、とくに注目度の高いものをピックアップして紹介します。

 

カムバック時のスミン

KPOP界では、新曲を発表してから約3週間ほど、音楽番組への出演をはじめとするプロモーション活動を行います。この新曲発表後の活動期間のことを「カムバック」もしくは「カムバ」といいます。スミンとは、音楽のストリーミング再生を意味する言葉です。

カムバック時のスミンとは、応援するアーティストの新曲を音楽チャートで1位にするための取り組みを表します。基本的には、Youtubeや音楽アプリで新曲を繰り返し再生することで1位の獲得を目指します。ただし、視聴時間が短かったり、同じアカウントから何度も繰り返し視聴したりすると、再生回数としてカウントされません。ファンダムは、「どうすれば効率よく再生回数を増やせるか」といった情報を共有し、組織的に1位を狙いにいきます。

 

広告の出稿

ファンダムは、ファン同士でお金を出し合って広告を出稿し、アーティストの活動をサポートしています。基本的に、アーティストの宣伝や楽曲のプロモーションは、所属する事務所が行うものですが、KPOPファンダムはこの常識を大きく覆しました。

事務所は所属するアーティストの人気が高まることで直接的な利益が得られますが、ファンは広告を出したところで金銭的なメリットは享受できません。ファンダムは、「推しに喜んでほしい」「推しの夢を叶えたい」という一心で、手間と労力、お金を惜しまず、アーティストを応援しているのです。

 

一部のファンがデモトラックを出すことも

KPOPに限らず、熱狂的なファンはときに思いがけない行動に出ることがあります。ファンダムは結束力のある集団ですが、すべての取り組みを管理できているわけではありません。事務所の対応に納得できなかったり、アーティストにスキャンダルが発覚したりすると、一部のファンがデモトラックを出して抗議するケースも見られます。

これらのデモトラックには、「ファンダム一同」と書かれていることもありますが、安易にファンの総意だと判断するのは危険です。デモトラックに対しては否定的な意見も多く、今後の在り方についての議論も進んでいます。

 

センイル企画

センイルとは、韓国語で「誕生日」を意味する言葉です。センイル企画では、地下鉄やバス停、街頭ビジョンなどに広告を出して、アーティストをお祝いします。もともとは韓国内で実施されていましたが、KPOP人気の高まりと共に世界的なイベントとして広がっています。

センイル企画では、華やかさや派手さが求められる傾向です。年に1度のイベントということでファンダム側も力を入れており、ニューヨークのタイムズスクエアなどで盛大にお祝いするケースもあります。また、コーヒーのカップホルダーに推しの写真を印刷してお祝いする「カプホイベント」もセンイル企画として人気です。

 

寄付活動

ファンダムは、アーティストの社会的立場を高める活動にも取り組んでいます。そのもっとも顕著な例が、寄付活動です。たとえば、BTSがBLM運動に100万ドルの寄付をしたことに呼応するように、彼らのファンダムであるARMYも「100万ドルを募るキャンペーン」 を実施し、瞬く間に目標金額を達成しました。

アーティストが社会貢献活動に意欲的なのは韓国だけではありません。しかし、ファンダムが主体となって積極的に寄付活動を行うのは、KPOPならでは特徴といえます。ファンダムは寄付する際に、応援しているアーティストの名前で寄付を行うため、イメージアップにもつながります。
 

ファンダムが集まるコミュニティを紹介

スマートフォンを触る人

KPOPファンは、「ペンカフェ」「コンカ」と呼ばれるコミュニティに集まり、情報を収集します。また、これらとは別にアーティストの所属事務所が管理している公式ファンクラブも存在します。ここでは、ペンカフェ、コンカ、ファンクラブの仕組みや特徴、注意点を解説します。

 

ペンカフェ

ペンカフェとは、韓国語でファンを意味する「ペン」と、喫茶店を意味する「カフェ」を組み合わせた言葉です。直訳すると「ファンの喫茶店」となりますが、ファンとアーティスト、ファン同士が交流するコミュニティとして利用されています。韓国語でカフェは「カペ」というため、「ペンカペ」「ペンカ」と表現されることもあります。

ペンカフェは韓国の大手ポータルサイトDaum(ダウム)によって運営されており、基本的に無料で利用が可能です。ペンカフェに会員登録すると、自動的に準会員のランクが割り当てられます。その後、一定の条件をクリアすると正会員にランクアップし、参加・閲覧できるコンテンツが広がります。さらに、公式ファンクラブに加入することで最高ランクの優秀会員となり、限定コンテンツなどにアクセスできるようになります。

 

コンカ

ペンカフェにはアーティストの事務所が管理する公式のコミュニティ、ファンが自主的に運営している非公式のコミュニティがあります。コンカとは、「コンシクペンカフェ」を略した言葉で、公式のペンカフェを意味します。

ただし、すべてのKPOPアーティストがDaumのコンカで情報を発信しているわけではありません。最近は、新しいコミュニティとしてWeverse(ウィバース)を利用するアーティストも増えているため、まず「自分の推しがどのプラットフォームやアプリを使用しているか」をチェックするところからはじめましょう。

 

日韓の公式ファンクラブの違い

KPOP界にも公式ファンクラブは存在しますが、日本とは仕組みが異なります。たとえば、韓国の公式ファンクラブは入会時期が限定されているケースが多く、募集のアナウンスも不定期です。最近は、日本のように自由なタイミングで入会できるファンクラブも増えてきましたが、まだまだ主流とはいえません。

アーティストによっては、日韓それぞれで公式ファンクラブを運営しているケースもあります。日本でファンクラブに入った場合、韓国で開催されるライブの先行予約などは対象外となるため、用途に合わせてどちらに入るべきかを判断しましょう。もちろん、両方のファンクラブに入会し、応援することも可能です。
 

知っておくと役立つKPOP用語

K-POP

さいごに、初心者の方に役立つKPOP用語を紹介します。KPOP界では、これらの用語がごく自然に使われています。ぜひ新しい言葉を覚えて、SNSや実際の会話の場で取り入れてみてくださいね。

 

ペン

韓国語で「ファン」を意味する言葉です。アーティスト名と組み合わせて、「○○ペン」のように使います。日本語でグループのメンバー全員を応援することを「箱推し」といいますが、韓国語では「オルペン(ALL+ペン)」と表現します。

 

サノク

事前収録を意味する「サジョンノックァ」を略した言葉です。KPOPアーティストは、カムバック時に音楽番組に出演しますが、その際にファンクラブ会員などからサノクの参加者が選ばれます。サノクの参加権を勝ち取れれば、推しのパフォーマンスを身近で楽しめたり、アーティストからのプレゼントをもらえたりします。

 

マスター

ペンカフェのコミュニティを設立する、コンサート中の写真を撮影するなど、非公式の活動に注力している人を「マスター」と呼びます。定義は曖昧なところがありますが、日本のトップオタのような存在です。

 

ヨジャ・ナムジャ

ヨジャは「女性」、ナムジャは「男性」を意味します。KPOPのガールズグループは、「ヨジャ」と「グループ」を組み合わせて「ヨジャグル」と呼ばれています。同様に、ボーイズグループは、「ナムジャグル」といいます。

 

オッパ・オンニ

韓国語では呼び手の性別によって、言葉を使い分けるシーンがあります。たとえば、オッパは女性が年上の男性を「お兄さん」と呼ぶとき、オンニは女性が年上の女性を「お姉さん」と呼ぶときに使われます。

 

ヒョン・ヌナ

ヒョンは、男性が年上の男性を「お兄さん」と呼ぶときに使われます。男性が年上の女性を「お姉さん」と呼ぶときは、ヌナとなります。

 

マンネ

韓国語で「末っ子」を意味する言葉です。KPOPのグループでは、一番年下のメンバーのことを「マンネ」と呼びます。マンネが複数人いるときは、「マンネライン」と表現することがあります。

 

ファンダムを知ってKPOPを楽しもう!

手を挙げる人

ファンダムは単なるファンの集まりではなく、アーティストの夢や目標を叶えるために主体的に行動します。ファン同士のつながりに興味がある方は、まず自分の好きなアーティストがどのようなファンダムを抱えているのか調べてみましょう。気になるコミュニティを見つけたら、ぜひ参加して、KPOPならではの文化を体験してみてくださいね。

 私たち5PM Journalは、熱量を帯びている偏愛に解釈を添えて、「新たな気づき」を生み出すことを掲げて運営しているWebメディアです。役立つ情報からちょっと変わったコラムまで、幅広い読み物をご用意しておりますので、ぜひそのほかの記事もご覧になってみてください。

https://5pmjournal.0101.co.jp/

 

参考

【Oggi】K-POPの常識ワード「ファンダム」とは? 意味や話題のK-POPワードを紹介!

https://oggi.jp/7001595

 

【@DIME】K-POPでよく聞く「ファンダム」ってどういう意味?

https://dime.jp/genre/1341610/#point_list__0_618

 

【TRUCK TV】ファンダムとは?K-POP界でよく使われる意味や特徴を解説

https://www.west-point.co.jp/blog/blog-1473/