もくじ
1. キュートアグレッションとはどういう心理現象?
2. キュートアグレッションが発見された心理実験を紹介
3. キュートアグレッションになりやすい人の特徴
4. 不憫?可哀想でかわいい?キャラクター3選
5. キュートアグレッションに関するよくある質問
6. キュートアグレッションは誰にでもある心理
キュートアグレッションとはどういう心理現象?
キュートアグレッションとは、可愛いものを目にしたときに引き起こされる衝動のことです。基本的に、人間の脳は小さくて可愛いものに対して「守りたい」「優しくしたい」という気持ちを抱きます。しかし、制御できないほど感情が高ぶると正反対の「壊したい」「傷つけたい」といった強い感情が芽生えることがあります。
可愛いものを見たときに噛みつきたくなったり、つねったりしたくなるのもキュートアグレッションによって引き起こされる感情です。ただし、あくまで衝動の範囲内に留まり、実際に害を及ぼす行動をとることはありません。
犬や猫などの動物、赤ちゃんなどがキュートアグレッションの対象になりやすいといわれています。また、人によっては2次元のキャラクターに対してキュートアグレッションを感じることもあるようです。
キュートアグレッションの例
キュートアグレッションの具体例としては、次のような感情や行動が挙げられます。
● 赤ちゃんの手や足をつねりたくなる
● 飼い猫の耳や皮膚を甘噛みしたくなる
● 子犬を見ると無意識に歯ぎしりしてしまう
● 可愛い動物が近くにいると拳に力が入る
● お気に入りのぬいぐるみを強い力で抱きしめるのが好き
攻撃的で衝動的な感情が芽生えるキュートアグレッションですが、対象を傷つけることがないよう、行動はコントロールされます。
コントロールが難しいときも、歯ぎしりしたり、拳に力を入れたりするなど、他者に影響が及ばないように発散します。
キュートアグレッションの根底にあるのは、可愛らしいものへの愛情です。一時的に「壊したい」という感情が生まれても、それが長続きすることはありません。
キュートアグレッションが発見された心理実験を紹介
わたしたちは、人間や動物の赤ちゃんを目にすると、本能的に「可愛い」と感じます。ノーベル生理学・医学賞を受賞したオーストリアのコンラート・ローレンツ博士 は、可愛いという感情の背景には、「ベビースキーマ」と呼ばれる身体的な特徴があると述べています。
具体的なベビースキーマとしては、赤ちゃんのふっくらとしたほっぺ、つぶらな瞳、短い手足などが挙げられます。ベビースキーマにより、「可愛い」という気持ちが刺激され、庇護欲が掻き立てられるのです。
キュートアグレッションは、相手を守ろうとする温かな感情とは相反する反応です。しかし、うれしいときに涙が出たり、深刻な場面で笑ってしまったりと、わたしたちの感情は思いがけない動きをすることがあります。
イェール大学出身の心理学者により行われた実験
2015年、学術誌「Psychological Science」 にて、キュートアグレッションに関する実験結果が発表されました。実験を行ったのはイェール大学出身のオリアナ・アラゴン博士 のチームです。アラゴン博士は、実験心理学と神経科学の観点から感情の表現や動機の研究を行っている心理学者です。
アラゴン博士の実験によると、赤ちゃんの画像を見て「可愛らしい」とポジティブな反応を示した人たちは、同時に「頬をつねりたい」などの衝動を口にする傾向にあったといいます。
また、その後の実験で感情に合わせて気泡緩衝材を潰すよう指示を出したところ、可愛い画像を見せられたときに、もっとも行動が顕著になったそうです。
可愛らしいものに対する攻撃性を示すキュートアグレッションは、比較的新しい概念となっており、まだまだ解明されていないところも多くあります。今後、さらに研究が進むことで「可愛いからこそいじめたくなる」という正反対の心の動きの持つ意味や役立て方が少しずつ明らかになっていくのかもしれませんね。
キュートアグレッションになりやすい人の特徴
キュートアグレッションは、決して特異な心理現象ではなく、誰もが少なからず持っている心の動きです。しかし、キュートアグレッションの反応の強さには個人差があります。ここでは、キュートアグレッションになりやすい人の特徴を解説します。
日常的にストレスを感じていている人
日常的にストレスを感じている人は、衝動的な反応を示しやすくなるため、キュートアグレッションになりやすいと考えられます。
人間のからだは、ストレスを感じるとアドレナリンなどが放出されて、交感神経が活発となります。交感神経が優位となることで心拍数や血圧が上昇し、活動しやすい状態がつくられますが、過剰な分泌が続くとさまざまな不調があらわれます。
強いストレス環境下では、自律神経が乱れて感情のコントロールも難しくなるため、可愛いものに対して過度に反応してしまうことがあるかもしれません。
感受性や共感性が高い人
美しい音楽を聞いて思わず涙がこぼれたり、芸術作品に深く感動したりする人は、キュートアグレッションの反応が強く出る可能性があります。
感受性や共感性が高い人は、可愛いものを目にしたときに、感情が大きく動きます。可愛いものに対して、はじめに芽生えるのは強い愛情や庇護欲です。その感情が一定の量を超えると、バランスをとるように正反対である攻撃的な気持ちが呼び起されます。
感情の波が大きいほど、相反する気持ちも強くなるため、キュートアグレッションを経験しやすくなります。
情熱的な想いを持っている人
仕事や趣味に情熱を持って取り組める人は、強いキュートアグレッションの反応を示すことがあります。愛情深く赤ちゃんやペットのお世話をしているとき、ふと衝動的な気持ちが湧いてきたというケースも少なくありません。
これは、対象に対しての過保護・過干渉を抑制する作用の一種だと捉えられます。過度な情熱や愛情は、ときに悪い影響を与えかねないため、相反する感情が生まれやすいのかもしれません。
不憫?可哀想でかわいい?キャラクター3選
作品内で泣かされる、さまざまな困難に直面するなど、不憫なキャラクターがここ数年じわじわと人気を集めています。
不憫なキャラクターを可愛いと感じるのも、キュートアグレッションの心理と近いのかもしれません。ここからは、不思議な魅力を持つ愛らしいキャラクターたちを紹介します。
ちゃちゃ まる
ちゃちゃまるは、人気ゲーム『あつまれどうぶつの森』に登場するキャラクターです。潤んだ大きな瞳と垂れ下がった眉が特徴で、豊かな表情に夢中になる人が続出しています。
公式では、ハキハキとしたオスのヒツジとして描かれていますが、一部のファンからは「ついついいじめたくなるキャラクター」と捉えられることもあるようです。実際に、「ちゃ虐」 というタグで可哀想なイメージを膨らませたイラストも創作されています。
ちいかわ
ちいかわは、X(旧Twitter)で爆発的な人気となり、アニメ化もされた漫画作品です。主人公のちいかわをはじめ、ハチワレ、うさぎ、モモンガといった、小さくて可愛いキャラクターがたくさん登場します。
「楽しくて、ちょっと切ない物語」がテーマになっているように、漫画のなかでは理不尽にいじめられるちいかわがしばしば描かれています。小刻みに震えたり、ぽろぽろと涙を流すちいかわは、可哀想なだけでなく、なぜか目が離せないキャラクターとして人々を惹きつけています。
おぱんちゅうさぎ
真っ白なパンツにブルーのリボン、穏やかで達観した表情がインパクト抜群なおぱんちゅうさぎ。がんばっているのに報われない「不憫可愛い」キャラクターが、Z世代の心を掴み、ぬいぐるみやヘアクリップなど、さまざまなグッズも販売されています。
X(旧Twitter)で公開されているおぱんちゅうさぎのストーリーは、とてもシンプルです。飛行機の座席でからだの大きな人たちに挟まれる、写真撮影に応じたところ危険な目に遭うなど、イラストだけで描かれるおぱんちゅうさぎの不遇さが哀愁を誘います。
キュートアグレッションに関するよくある質問
「可愛いものをいじめたくなる」「優しくしたいのに攻撃的な衝動が湧いてくる」といった心理状態に不安を感じることがあるかもしれません。
最後に、キュートアグレッションに関する質問として、感じやすいタイミングや病気、DVとの関連性についてまとめてみました。
キュートアグレッションはなぜなる?
キュートアグレッションは、誰もが持っている心理です。攻撃や侵略を意味する「アグレッション(aggression)」という言葉が使われていますが、感情の根底にあるのは可愛いものに対する愛情や思いやりです。
突発的な感情の波をコントロールするために、正反対の攻撃的な気持ちが生まれることは、ごく自然な心の動きといえます。破壊的な衝動が一時的であり、相手に害を及ぼさないのであれば、過度に心配する必要はありません。
キュートアグレッションは病気?サイコパス?
キュートアグレッションは病気でも、サイコパスでもありません。前述したような可哀想なキャラクターが好きであっても、心理状態に大きな問題はないはずです。
今回はキュートアグレッションに関連付けてキャラクターを紹介しましたが、「不遇な状況でも前向きなところが好き」「泣きながらも努力を続けるところに共感できる」など、好きになる理由はさまざまです。また、単にキャラクターのデザインが好み!という人もいるでしょう。
キュートアグレッションという言葉にとらわれすぎず、ぜひ自分の内側に芽生えた感情を大切にしてくださいね。
DVや加害につながることはある?
一般的に、キュートアグレッションでは対象を傷つけることがないよう行動をコントロールできます。しかし、DVや加害につながらないとは言い切れません。
「飼い猫が嫌がるほど甘噛みしてしまう」「ぬいぐるみを強く抱きしめすぎて壊してしまう」など、加害衝動を抑えきれない場合は、専門家に相談してみるのもひとつの方法です。
キュートアグレッション自体は、ごく自然な現象ですが、もともとの性格や心理状態によって感じ方に大きな差が生じることがあります。実際に手を出してしまうと、状態が一気に悪化する恐れがあるため、早めの対策が必要です。
キュートアグレッションは誰にでもある心理
キュートアグレッションとは、可愛いものをいじめたくなる衝動的な感情です。誰にでも芽生える感情なので、過度に心配する必要はありませんが、感じ方には個人差があります。「可愛い」「守りたい」という気持ちの反動であることを理解して、自分の心の動きを冷静に受け止めてくださいね。
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参考
【しくみ.net】キュートアグレッションを感じやすい人・なりやすい人の特徴5つ
【しくみ.net】かわいいものを壊したくなる? キュートアグレッションの心理と原因