もくじ

1. 偏愛とは

2. なぜ「偏愛」がトレンドに?

3. 偏愛を楽しもう!

偏愛とは

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辞書にも載っている偏愛という言葉ですが、「目にしたことはあっても実際に使ったことはない」という方は少なくありません。

まずは、偏愛の言葉の意味やどのようなものが対象になるのかを解説します。偏愛に似た言葉である、「推し」との違いやZ世代との関わり方も見ていきましょう。

 

偏愛の言葉の意味

偏愛は、辞書で次のように紹介されています。

 ● ある物や人だけをかたよって愛すること。また、その愛情。

これまでは「母は末っ子を偏愛していた」といった文脈で使われていましたが、近年「偏愛」の持つ意味が意味が変化しつつあります。

偏った愛をいびつでネガティブなものではなく、不思議な引力と魅力を持つものとして捉える場面が増えたことで、ポジティブなイメージが広がっています。

 

偏愛とは

偏愛とは、特定の事柄に対して深い愛情を持ち、多大な時間と労力を費やしていく姿勢を示しています。また、何らかのモノやジャンルに対して、異常ともいえる探求心を持っている人のことを「偏愛者」と呼びます。

偏愛や偏愛者がよくわかる例としては、次のメディアが挙げられます。

 ● マツコの知らない世界

 ● 沼にハマって聞いてみた

『マツコの知らない世界』は、10年以上続いているTBSの番組です。ニッチな世界に人生を捧げたスペシャリストが登場し、その魅力をマツコさんにプレゼンします。「こんな世界があったんだ」という驚きだけでなく、偏愛が感じられる熱いトークが番組の人気を支えています。

『沼にハマって聞いてみた』は、2018年にスタートしたNHK Eテレのバラエティ番組です。番組タイトルは、「沼にどっぷりハマったように、特定のモノやヒトに夢中になっている状態」を表しています。番組では、食べ物、おもちゃ、アイドルなど、幅広い「沼」が取り上げられています。

 

偏愛の対象になるもの

偏愛の対象には明確な決まりはありません。自分の愛情が重く偏っていると感じたならば、それを「偏愛」と捉えることができますが、ニッチでマニアックなものを対象とするほど偏愛者としての引力は強くなります。

偏愛の対象になるものは、次の特徴があります。

 ● ニッチでマニアックなもの

 ● 世間の関心が低いもの

 ● 不完全なもの

たとえば、小説好きで年間100冊以上読んでいても、「小説の偏愛者」とは認識されないはずです。多くの人に受け入れられやすいモノや、世間の関心が高い事柄は、単なる趣味として分類されてしまいます。

一方、小説のなかで特定のジャンルを好んで読んでいるのであれば、偏愛者となりえます。「歴史IF小説を1000冊以上集めており、知識には自信がある」という人は、立派な偏愛者です。偏愛者は、世間の流行とは一線を画した自分だけの世界を持ち、それをまっすぐ追い求めていきます。

 

偏愛と推しの違い

偏愛と推しの違いは、対象物の範囲にあります。推しとは、他者に勧めたいほど気に入っている人やキャラクターなどの存在のことです。「アイドルグループのAを推している」「アニメキャラクターのBがわたしの推し」といった使われ方をするように、主な対象物は実在する人物や動物、2次元のキャラクターとなります。

一方、偏愛は対象とする範囲が広がります。「年間500食以上カレーライスを食べている」「ご当地のマンホールが気になって仕方がない」など、偏愛の対象は人やキャラクターだけに留まりません。

また、偏愛と推しは、周囲との関わり方も異なります。推しはコミュニケーションのきっかけとして周囲に推薦しやすいですが、偏愛は自分の内側でじっくりと育てていくものであり、他者からの理解や共感にも重きを置きません。

 

Z世代と偏愛

さまざまなサブスクリプションサービスが普及した現代では、モノを所有するのではなく、必要なときにだけ利用するという価値観が定着しつつあります。

Z世代は消費活動においても、モノ消費ではなく体験を重視するコト消費へとシフトしています。そのひとつが、推し活です。Z世代は「推しがいることが当たり前」という考えが広がっており、推し活にかける費用も少なくありません。

令和の若者は、推し活を入口に、特定のジャンルに詳しくなったり、自分の趣味嗜好への理解を深めたりしていきます。デジタルネイティブ世代だからこそ、情報を収集するスキルも高く、偏愛を追求しやすい土台が整っているのです。

推し活について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

「推し活」とは何?オタ活との違い、推し活グッズも紹介

なぜ「偏愛」がトレンドに?

ハートの積み木

偏愛という言葉が使われはじめるにつれて、偏愛者の持つ熱量や経済効果にも注目が集まっています。ここでは、偏愛がトレンドになりつつある理由やコミュニティとの関係性を解説します。

 

「偏愛」がトレンドになりつつある

情報が過剰に溢れる令和の時代において、偏愛がトレンドになりつつあるのは、ごく自然な流れなのかもしれません。わたしたちは、スマートフォンを通して、どこからでも簡単に情報が得られる世界に生きています。

選択肢や自由度も大きく広がりましたが、一方で昼夜を問わず更新され続ける情報に辟易してしまうこともあるでしょう。

そんななかで、あえてひとつのジャンルに偏愛的にこだわる人たちは、魅力的にうつります。時代の流行や膨大な情報にのまれることなく、自分の好きをまっすぐ追求する姿は、Z世代の憧れの対象となっているのかもしれません。

 

世の中の口コミはすべて一人ひとりの偏愛から来ている?

ビジネスの場においても、偏愛への注目度は高まっています。たとえば、世の中の口コミはすべて一人ひとりの偏愛で成り立っており、その熱量に後押しされるかたちで商品の購入を決めるケースも見られます。

また、かつてはマニアックな男性のイメージが強かった「オタク」という存在も2000年代から少しずつ変化していき、いまでは性別や年齢に関わらず多くの人がオタ活(推し活)を楽しむようになっています。その経済効果は、2021年度で約6687億円とされており、市場規模は年々拡大傾向です。

アニメの「聖地巡礼」や「推し活」回復 「オタク」が動かす7000億円市場の魅力 - 産経ニュース

「食パン専門店」「からあげ専門店」など、ひとつのモノを偏愛するビジネスモデルも相次いで展開されており、特定のジャンルへのこだわりが新しい価値を生み出しています。

 

偏愛とコミュニティの関係

Z世代は無駄なものを避け、効率性を重視するといわれていますが、すべての行動に当てはまるわけではありません。偏愛者は、コスパやタイパなどに惑わされることなく自分の好きを追い求めます。

特定の対象物を軸にコミュニティを形成する場合は、一人ひとりの偏愛によって結びつきがより強く深いものになります。

たとえば、「お菓子の付録」を偏愛しているコミュニティに所属した場合、昭和時代の付録を収集している人、付録の製造年月日にこだわる人、世界の付録を比較する人など、興味の対象が少しずつ異なっている可能性があります。お互いの偏愛を尊重し、理解し合うことができれば、コミュニティから新たなカルチャーが創出できるかもしれません。

偏愛を楽しもう!

笑顔の女性

価値観が多様化した令和の時代、特定の対象物に偏った愛情を捧げる「偏愛」が次世代のトレンドワードとして注目されています。

流行になりつつある理由としては、なにかを偏愛している人の熱量に魅力があること、その魅力に惹かれたライト層によって消費が増えると考えた企業が積極的に偏愛というワードを使っていることなどが挙げられます。

私たち5PM Journalは、偏愛をテーマに掲げるメディアです。お笑い芸人や大学教授など、多彩な偏愛者によるコラムをご用意しておりますので、ぜひそのほかの記事もご覧になってみてくださいね。

参考

【goo辞書】「偏愛」の意味

【D4DR inc.】保存版・Z世代の10大特徴まとめと、インスタグラムで顕著にみられる消費行動事例・法則

【YOMIKO】偏愛マーケティング ― 偏愛型の消費で新しい売りをつくる

【HAKUHODO】~若者と探求する、新たな暮らし~ Vol.2 偏愛会議 若者たちの生活に“偏愛”が与えてくれるもの(前編)

【タキレポ】情報「過剰」社会の生き方 ~溢れる情報に踊らされず、自分の判断基準をもつ~

【COMEMO】コミュニティの熱量を上げ人を惹きつける「偏愛のシェア」の広がり