もくじ

1. 純喫茶とは

2. 純喫茶の魅力は?

3. 純喫茶がブームになった背景は

4. 純喫茶の有名店3選

5. 今度のお休みは純喫茶を楽しんでみて

純喫茶とは

カウンター上のコーヒーメーカー

純喫茶とは、アルコール類を提供していない「コーヒー専門店」のことです。純喫茶を理解するためには、日本における喫茶店の歴史や種類を知っておく必要があります。まずは、純喫茶の定義や一般的な喫茶店やカフェとの違いを見ていきましょう。

 

純喫茶の”純”の意味

純喫茶の「純」は、純粋にコーヒーを楽しむための喫茶店といった意味を持ちます。今でこそ喫茶店といえばコーヒーや紅茶が味わえる場所という認識が広がっていますが、カフェ黎明期の大正から昭和初期にかけては少し事情が異なっていました。

日本のカフェ文化は銀座で大きく発展し、カフェー・プランタンやカフェー・ライオンなどのお店が人気を集めました。当時のカフェは男性の社交場としての位置づけで、会員には森鷗外、北原白秋、谷崎潤一郎ら文化人や芸術家が名を連ねていました。

当時のカフェーでは、コーヒーも提供されていましたが、アルコール類や華やかに着飾った女給目当てで来店する人も少なくありませんでした。このような女性による接客があるカフェーとの差別化を図るために、コーヒーをメインで取り扱うお店を「純喫茶」と呼ぶようになったといわれています。

 

純喫茶と喫茶店の違い

現在は、純喫茶と喫茶店を同じ意味で用いることも多く、明確な違いはありません。ただし、次の特徴を持つお店は、純喫茶と呼ばれる傾向にあります。

 ● こだわりのコーヒーを提供している

 ● 落ち着いた雰囲気のカウンターがある

 ● 常連客の年齢層が高い

純喫茶は静かにコーヒーを味わいたい人が通うことが多いため、友人との会話を楽しみたい場合は一般的な喫茶店の方が過ごしやすいかもしれません。

お店によっても営業スタイルが異なるため、気になる純喫茶を見つけたら、実際に足を運んで雰囲気を掴んでみましょう。

 

純喫茶とカフェの違い

2021年5月以前は、純喫茶とカフェで必要となる営業許可が異なりました。しかし、食品衛生法の改正により、「喫茶店営業許可」が廃止され、カフェと同じ「飲食店営業許可」に統合されました。現在、純喫茶とカフェに法律上の違いはありません。

ただし、一般的には喫茶店は昭和レトロ、カフェは現代的でおしゃれといったイメージが定着しています。

また、昭和の時代においては、純喫茶とカフェーを別物として捉える必要があります。昭和初期に栄えたカフェー文化は、女性による接客に注力するお店が増えたことで、風紀の乱れが問題視されるようになりました。

女性が接客するカフェーは「特殊飲食店(特殊喫茶)」に分類されるようになり、キャバレーやクラブなど、コーヒーを提供する純喫茶とは別の道を歩んでいくことになります。

 

純喫茶とレトロカフェの違い

レトロカフェとは、昭和のテイストが楽しめる喫茶店のことで、レトロ喫茶とも呼ばれます。純喫茶とレトロカフェはお店の雰囲気も似ていますが、提供しているメニューや利用する年齢層が少々異なります。レトロカフェの特徴は、次のとおりです。

 ● 懐かしのメニューが楽しめる

 ● テーブル席が充実している

 ● 常連客の年齢層が幅広い

レトロカフェは、クリームソーダやナポリタンなど、懐かしのメニューが楽しめます。テーブル席も充実しているので、友人同士でも気軽に利用しやすく、小さな子どもが食べられるフードも豊富にあります。

ただし、純喫茶でもフードメニューに力を入れるお店が増えており、レトロブームにより利用者の年齢層も若返っています。最近では、明確に区別することが難しく、ほとんど同じ意味で用いられています。

純喫茶の魅力は?

シンプルなパンケーキ

街中には気軽に入ることができるおしゃれなカフェがたくさんあります。そのような環境にも関わらず、なぜ少しハードルが高い純喫茶を利用する若者が増えているのでしょうか。ここでは、純喫茶ならではの魅力を紐解いていきます。

 

こだわりのコーヒーが飲める

純喫茶では、お店のこだわりが詰まったコーヒーが楽しめます。希少性の高いスペシャルティコーヒーに出会えたり、独自の割合でブレンドされたそのお店ならではのコーヒーが味わえたりするのも、純喫茶の魅力です。

混雑することの多いカフェチェーンでは、コーヒーを作り置きすることもありますが、純喫茶では注文が入ってから丁寧に抽出されます。コーヒーの奥深さが知りたい方は、ぜひ一度純喫茶のコーヒーを飲んでみてください。

 

おいしい軽食も楽しめる

純喫茶では、ナポリタン、オムライス、ホットケーキなどの軽食が提供されています。生クリームたっぷりのプリンアラモードやパフェといった、昭和レトロなスイーツが楽しめるのも純喫茶ならではです。

ただし、お店によって軽食メニューへの力の入れ方は異なります。かつての喫茶店営業許可では、調理できる範囲が大きく制限されていたため、昔のなごりが残るお店ではケーキ、クッキー、トーストなどの調理を必要としないメニューのみが提供されていることも多いです。

 

独特な外観・内装

独特な外観や、オーナーの好みが色濃く反映された内装に惹かれて純喫茶を訪れる人は少なくありません。昭和の時代から熟成されたノスタルジックさは、純喫茶だからこそ醸し出せる雰囲気です。

歴史のある純喫茶は昭和をそのまま切り取った空間で、若い世代にとって新しい発見や驚きに満ちています。ゆっくりとコーヒーや軽食を味わうのはもちろん、純喫茶という空間自体もぜひ満喫してくださいね。

 

気分転換になる

気分転換したいときにも、純喫茶はおすすめです。静かな曲が流れる店内、鼻腔に広がるコーヒーの香り、ゆったりとしたソファなど、その場にいるだけで気持ちがリフレッシュできます。

また、淹れたてのコーヒーには、集中力を高める効果やリラックス効果があるといわれています。気分転換にはさまざまな方法がありますが、ちょっとした癒しを求めているときは、ぜひ純喫茶も選択肢に加えてみましょう。

純喫茶がブームになった背景は

テーブル席の一角

近年、Z世代を中心にレトロブームが勢いを増しています。そのきっかけのひとつが、純喫茶です。レトロな雰囲気がおしゃれで新しいものとしてSNSを中心に話題となり、その魅力に引き込まれる若者が続出しています。

 

純喫茶ブーム=レトロブーム

2020年ごろからZ世代の間で「昭和レトロ」がトレンドになっています。Z世代の特徴のひとつがSNSの活用です。デジタルネイティブ世代だからこそ、スマホで情報を集めるだけでなく、「自分が気に入ったもの」「人に見てほしいもの」を発信することを得意とします。

純喫茶で提供されるカラフルなクリームソーダや、ボリュームたっぷりのプリンアラモードは、写真でのインパクトも強く、レトロな内装とのコントラストも若者の目を惹きました。気軽に非日常が体験でき、SNSで魅力を発信しやすいところも、純喫茶がブームとなった理由のひとつです。

 

なぜ今”レトロ”がブームなのか

コスパやタイパを重視するZ世代において、アナログでちょっと不便なところもある「レトロ」がブームになっていることを不思議に思うかもしれません。

一杯のコーヒーにこだわる純喫茶も、「注文したらすぐに提供してほしい」という人には不向きです。しかし、何事もひとつの枠にはめ込むことが難しいように、昭和らしい大らかな雰囲気を好む人たちには、心地よい空間として親しまれています。

レトロブームは純喫茶だけに留まりません。ファッションにおいても1990~2000年代に流行したレトロなアイテムの人気が高まっています。Y2Kファッションについては、こちらの記事に特徴やポイントをまとめているので、あわせてご覧ください。

Y2Kファッションとは?ブームの理由や特徴的なアイテム、今までとの違いを解説

純喫茶の有名店3選

レトロなカップにコーヒー豆

最後に、メディアなどでも取り上げられる有名な純喫茶を3店舗紹介します。純喫茶の雰囲気や提供されるメニューは、地域によっても特徴が異なります。遠方に出かける機会があれば、ぜひその地域の純喫茶を訪れてみてくださいね。

 

東京都上野:コーヒーショップギャラン

コーヒーショップギャランは、ナポリタンやオムライス、カレーライスなどのフードメニューが充実しており、入り口横にある食品サンプルもレトロ感満載です。また、店舗のある東京・上野は、街全体がどこか懐かしい雰囲気に包まれています。

店内は広いですが、古くからの常連客や純喫茶にハマっている若者で混雑していることが多いため、時間に余裕を持って来店しましょう。全席喫煙可能なため、20歳未満の立ち入りが制限されている点にも注意が必要です。

 

北海道札幌:純喫茶オリンピア

札幌の中心地で、オープンから50年以上変わらぬ雰囲気を保ち続けている老舗の純喫茶オリンピア。こだわりのコーヒーはもちろん、自家製プリンやスイーツアラカルトも人気です。

SNSでも積極的に情報を発信しており、Instagramのフォロワーは5000人を超えています(2024年3月現在)。デザートとコーヒーのセットメニューやランチ限定メニューもあるので、ぜひチェックしてみてくださいね。営業時間は10:00~18:00で、月に一度の土曜営業日を除き、土日・祝日は定休日となっています。

 

大阪難波:純喫茶アメリカン

昭和21年に創業した大阪・難波の純喫茶アメリカンは、小さな子ども連れの家族や若者同士でも入りやすいお店です。店内には生花が飾られ、こだわりの調度品が陳列されており、特別感のある空間に仕上がっています。

観光やショッピングエリアからも近いので、ちょっとした休憩でも立ち寄りやすい立地です。大阪発祥といわれるミックスジュース、常連客に愛されてきたホットケーキやフルーツアラモードなどのスイーツをぜひ堪能してくださいね。

今度のお休みは純喫茶を楽しんでみて

プリンアラモードとメロンソーダ

純喫茶は「常連客が多くて入りづらそう」というイメージがあるかもしれませんが、昭和レトロの人気の高まりとともに、利用する客層が広がっています。

筆者はかつて東京・品川のオフィスで働いていたのですが、トレンドに敏感な後輩に誘われて駅近くの『喫茶ダリ』に足を踏み入れたところ、見事にその不思議な魅力の虜となり、その後は週一回のペースで通っていました。みなさんも、ぜひ自宅やオフィスの近くでお気に入りの純喫茶を見つけてみてくださいね。

5PMJournalでは、暮らしを豊かにする情報や日々の生活に役立つコラムを発信しています。厳選したセレクトアイテムもご紹介していますので、ぜひそのほかの記事もご覧になってみてください。

 

参考

【KEY COFFEE】喫茶店の魅力って?アンケートや口コミからわかるお気に入りの見つけ方

【kindai picks】純喫茶がエモい!昭和レトロだけでは語れない「生きた建築」の魅力を専門家と解き明かす

【株式会社 ジーエスフード】懐かしくてエモい!レトロ喫茶の温故知新

【東洋経済ONLINE】開店前に行列も「昭和の純喫茶」の知られざる魅力

【your SELECT.life】コーヒーを飲むだけじゃない 非日常へと旅する純喫茶入門

【ソフトバンクニュース】クリームソーダ、レコード、使い切りカメラ。Z世代の若者がレトロなアイテムに引かれている心理とは