もくじ

1.獅子舞とは

2.獅子舞の歴史を知ろう!

3.獅子舞には2つの系統がある

4.全国各地で見られる特徴的な獅子舞をご紹介!

まとめ.全国で見られる個性的な獅子舞に注目してみよう!

獅子舞とは

獅子舞がこともの頭を噛みつく様子

獅子舞とは、「悪魔祓い」や「厄払い」の意味がある伝統芸能で、縁起物として全国で親しまれています。獅子舞の意味や由来、獅子舞が頭を噛む理由は下記のとおりです。

 

獅子舞の意味・由来
 

獅子舞とは、獅子(獣)の頭に唐獅子文様の胴幕をつけて舞い踊る、日本各地で見られる伝統芸能です。

胴幕の部分に数人が入り、獅子の頭を動かしながら舞い踊ります。お正月やお祭りなどで演じられることが多いので、見たことのある方もいるでしょう。獅子舞には「悪魔祓い」や「厄払い」の意味があり、現在でも縁起物として親しまれています。

獅子舞の起源はインドと言われており、「獅子」とはライオンのことです。インドの遊牧民の間ではライオンには神秘的な力が宿っているとされ、宗教行事としてライオンを模した舞を踊っていたのだとか。これが獅子舞の起源とされています。

獅子舞が日本に伝来した時期は、飛鳥時代だと言われています。獅子舞が全国に広まったのは、室町時代から江戸時代の初期です。伊勢太神楽という芸能集団が、全国で獅子舞の公演を行ったことがきっかけで、獅子舞が普及しました。全国各地に特徴的な獅子舞が存在するのは、その地域の風習や風土に合わせて獅子舞が独自に発展したからだと言われています。


獅子舞が頭を噛む理由


獅子とはライオンのことを意味しており、獅子舞の発祥の地と言われているインドでは、霊獣として崇められていました。そのため、獅子舞は飢餓や疫病などの厄を払うために行われるようになり、人の頭を噛むことで邪気を食べるという意味があります。

また、「噛みつく」と「神が付く」を語呂合わせにすることができるため、縁起が良いとも考えられています。子どもが獅子舞に噛まれると、無病息災で成長できる・学力向上が期待できるといった意味があるそうです。初詣で獅子舞に頭をかまれると、その年は幸せで平穏に過ごせるとも言われています。

獅子舞は舞い踊りながら人の頭を噛んでいくので、怖いと感じる方もいるかもしれません。実際、筆者も子どもの頃に獅子舞を見て、大泣きしました。大きな口がガバっと開く様子が、何とも言えず恐ろしかったことを覚えています。しかし、獅子舞に噛まれることは、実はとても縁起の良いことなのです。

獅子舞の歴史を知ろう!

大きい獅子舞

獅子舞のルーツはインドにあると言われています。日本へはいつどのように伝来したのでしょうか。詳しく解説します。

 

獅子舞のルーツはインド
 

獅子舞のルーツは古代インドと言われており、インドから中国や朝鮮半島を経て、飛鳥時代に日本に伝わったとされています。獅子とはライオンを意味しており、古代インドではライオンが霊獣として崇められていました。そのため、ライオンの頭を模した衣装を身に着けて、舞い踊るようになったと言われています。

日本に伝来した獅子舞は、当初は伎楽(ぎがく:音楽と舞の無言仮面劇)の演目の最初に、邪気払いを目的として用いられていました。その後、全国に普及していきます。


日本への伝来


獅子舞が日本に伝来したのは、1400年以上前の飛鳥時代です。仏教とともに、今の奈良県に伝えられたとされています。東大寺の大仏開眼供養で獅子が登場する劇が上演され、それを見た人々によって獅子舞が少しずつ広まっていったようです。

平安時代に入ると、歩きながらお経を読む行道が流行しますが、その際獅子の頭部に似せて作られた獅子頭が使われていました。鎌倉時代には、伎楽に使う獅子頭が神社に保管されたとの記録も多数あり、獅子が芸能文化に浸透していたことがわかります。しかし、伎楽における獅子は鎌倉時代以降衰退し、現在の獅子舞の原型ができたのは室町時代に入ってからです。
 

伝統芸能として確立


室町時代には獅子舞の芸能集団「伊勢大神楽」が登場し、お伊勢参りを広めるために、各地で伊勢大神楽による厄払いをするようになります。江戸時代の初期になると、伊勢大神楽師や江戸大神楽師などの芸能集団が全国を回って公演し、獅子舞が伝統芸能として全国に広まったとされています。

現在では獅子舞は全国で数千以上の種類があると言われており、その地域特有の獅子舞を見ることが可能です。例えば、千葉県君津市では「鹿野山のはしご獅子舞」と呼ばれる獅子舞が行われています。高さ約10mの大きなはしごの上で獅子が舞う姿に、見ている方もつい手に力が入ってしまいます。

日本の伝統芸能に興味がある方は、日本の伝統芸能とは?伝統芸能の種類一覧も紹介!も参考にしてみてください。 

獅子舞には2つの系統がある

道路を歩く獅子舞

実は、獅子舞には2つの系統があることをご存じですか。西日本を中心として演じられているのが「舞楽・伎楽系統」の獅子舞で、東日本を中心に行われているのが「風流系統」の獅子舞です。それぞれ解説します。

 

舞楽・伎楽系統


舞楽・伎楽系統の獅子舞は、2人以上の複数人で1匹の獅子舞を演じるのが特徴です。前足と後足にそれぞれ1人ずつ人が入り、2人で演じることが多いため「二人立ち獅子舞」と呼ばれています。その他にも、胴幕の中に大人数が入る「百足獅子」や、祭事行列で先導役を務める「行道獅子」などがあります。

お正月に見られる獅子舞は、一般的に舞楽・伎楽系統の獅子舞を指しているため、見たことのある方も多いでしょう。

また、舞楽・伎楽系統の獅子舞は西日本を中心に演じられており、大陸から伝わった伎楽・舞楽の獅子舞を模倣していると言われています。


風流系統
 

風流系統の獅子舞は、1人で1匹の獅子を演じる「一人立ち獅子舞」が中心です。風流系統は各地の芸能をもとに発展してきたため、獅子ではなく各地で信仰されている鹿や猪など他の獣の頭をかぶることもあります。また、お腹に括りつけた太鼓を叩きながら舞うこともあり、獅子舞のイメージとは少し違うと感じる方もいるかもしれません。

風流系統の獅子舞は東日本、特に関東を中心に演じられています。関東では3頭が1組となって演じる三頭獅子、東北では8~12頭を1組として演じる鹿踊が有名です。

全国各地で見られる特徴的な獅子舞をご紹介!

のれんから顔を出す獅子舞

獅子舞は全国にたくさんの種類があり、その地域特有の獅子舞を楽しめます。好きな獅子舞を見つけたり、違いを比較したりしながら見たりするのも楽しいですね。

 

氷見獅子(富山県)


獅子舞が盛んな地域である富山県の中でも、特に有名なのが「氷見獅子」です。氷見獅子は春と秋に行われています。春はその年の豊作を祈念して、秋は五穀豊穣に感謝をして、神様に獅子舞を奉納するのだそうです。

氷見獅子は、獅子舞の胴幕に5~6人入る百足獅子で行われます。笛や太鼓を用いたスピード感のある早いテンポのお囃子と、大きくて立派な太鼓台が特徴です。天狗が獅子を退治するというストーリーで獅子舞が演じられます。初めて氷見獅子を見た方は、天狗が飛び回る姿と百足獅子の躍動感あふれる動きに、目が釘付けになること間違いなしです。

なお、天狗の衣装や採り物(武器)、獅子頭は地区によってそれぞれ特徴があります。市内の100を超える地域で継承されている伝統芸能「氷見獅子」を、一度見物してみてはいかがでしょうか。


篠籠田の獅子舞(千葉県)
 

元禄時代頃に始まったと言われている篠籠田の獅子舞は、県の無形民俗文化財に指定されています。毎年8月16日に、柏市にある西光院で祖先の供養と五穀豊穣、家内安全を祈念して境内で演じられます。竜神をかたどった竜頭の獅子が、3匹登場するのが特徴です。獅子舞の顔は1匹ずつ異なるので、ぜひチェックしてみてください。

篠籠田の獅子舞は、雄獅子・雌獅子・中獅子・もどき(ひょっとこ2、狐1、猿3)・花笠4人・金棒つき2・笛7~15人から構成されます。獅子が塩まきをしたり、3匹が一緒に舞ったり、場面が変わる様子にも注目です。

篠籠田の獅子舞は雨乞いの舞とも言われており、もともと雨乞いを目的としていたものがお盆と結びついて、現在の形になったのではないかとも言われています。

 


漆川獅子舞(青森県)

津軽地方の獅子舞は獅子踊りとも呼ばれており、津軽四代藩主が弘前市松森町で舞を演じさせたことで藩内に広まったと言われています。漆川獅子舞はこの流れをくんでおり、150年以上の伝統があります。

漆川獅子舞は雄獅子、中獅子、雌獅子の3匹の獅子と、案内役のオカシコという猿が3本の木で表現された山を中心に踊るのが特徴です。これは獅子が山を征服することを表し、そこに浄化の理想を託していると言われています。笛や太鼓、鉦が使われ、経文が読み上げられます。伝統的に伝わる経文には、村や橋をほめる歌、御庭をほめる歌など縁起のよいものが織り込まれているそうです。

漆川獅子舞は豊作祈願や五穀豊穣を目的に春や秋に演じられるほか、式典や落成式などの祝事でも行われています。
 

天下一関白流御神獅子舞(栃木県)
 

天下一関白流御神獅子舞(てんかいちかんぱくりゅうおんかみししまい)は、栃木県宇都宮市の北部にある逆面町に伝わる獅子舞です。中里西組(なかざとにしぐみ)の獅子舞とも呼ばれ、毎年8月15日に白山神社と西組公民館で奉納されています。関東地方特有の一人立ち3匹獅子舞で、室町時代初期にこの獅子舞を踊って悪霊退散を願ったところ、流行り病がおさまったのだとか。

獅子舞が行われる日は、日の出とともに山へ登り、獅子を奉納したのちに獅子舞が始まります。五穀豊穣・子孫繁栄・家内安全を願って行われる獅子舞は正午前から夕方まで続き、地域に住む人々や帰省した方、見物客が一緒に楽しめるお祭りとなっています。
 

初山の獅子舞(神奈川県)
 

初山の獅子舞は、10月の最初の日曜日に菅生神社で行われる獅子舞です。神奈川県の無形民俗文化財に指定されています。いつから始まったのかは不明ですが、江戸時代初期に作られたとされる獅子頭が残っており、伝統ある獅子舞です。獅子舞を舞うのは初台地区の子どもたちで、4~5年ほどで交代します。

初山の獅子舞は、天狗面の者に先導されて町内を練り歩いてから祭場へ移動し、境内に設置された円形土俵で舞が始まります。まず、天狗面をつけた幣負いが土俵を清めてから獅子が入場。後半部分の雌獅子隠しが、最大の見せ場です。

また、初山の獅子舞は地を這うようにして踊るのが特徴です。地を這うようにして踊るのは、地の悪霊を鎮めるためだと言われています。


因幡・但馬の麒麟獅子舞(鳥取県)


因幡・但馬の麒麟獅子舞は、中国の想像上の霊獣である麒麟に似た獅子頭を持つ二人立ちの獅子舞です。頭は前後に細長く、1本の角があります。鳥取県東部から兵庫県北西部にかけて行われ、獅子舞としては全国で初めて国の指定文化財となりました。

また、因幡・但馬の麒麟獅子舞は、棒を持った猩々(しょうじょう)と呼ばれる役が付き、獅子は地を這うように頭を動かしたり、伸びあがるように頭を上げたりしながら踊るのも特徴です。もともとは現在の鳥取東照宮の祭礼行列で舞い始められたと言われています。

因幡・但馬の麒麟獅子舞は各地域の春夏秋の神社祭礼で行われるほか、初午(はつうま)や正月に行うところもあります。角のある獅子が躍動する姿に、圧倒される方もいるかもしれません。


曽根崎の獅子舞(佐賀県)
 

曽根崎の獅子舞は土地の悪霊を鎮めて人々を浄め、豊作を祈願するためとして曽根崎老松神社の神幸祭の際に行われます。毎年3月29日直前の日曜日に行われ、鳥栖市の重要無形民俗文化財に指定されています。曽根崎の獅子舞は1696年から曽根崎老松神社の再建を記念して行われるようになったと言われていますが、現在の形になったのは1986年に復興されてからです。

曽根崎の獅子舞は、雄獅子・雌獅子とも前獅子役と後獅子役がおり、二人立ち一匹獅子で演じられます。また、雄獅子・雌獅子・つり合い獅子には子どもが演じる獅子つりが付き、獅子つりにつられるようにして演舞するのが特徴です。迫力のある獅子舞だけでなく、かわいらしい獅子つりにも注目が集まります。


勢理客の獅子舞(沖縄県)
 

勢理客の獅子舞(じっちゃくのししまい)は沖縄県浦添市勢理客に伝承される獅子舞で、旧暦の8月15日に行われます。400年以上の歴史があり、獅子舞は勢理客の守り神として古くから祀られてきました。

特徴的なのが獅子の姿です。勢理客の獅子舞は胴部分がぬいぐるみで、初めて見た方は獅子舞だとは思わないかもしれません。筆者は初めて勢理客の獅子舞の画像を見た時、獅子舞のイメージとは少し違った様子に驚いたことを覚えています。日本の獅子舞と言うより、中国や東南アジアの妖怪に似ていると感じました。

獅子は前足役と後足役の2名で行われ、前足役は足を高く上げて豪快に歩きます。後足役は腰を折って足踏みを続けながら、獅子のしっぽを動かします。どちらの役も高度なテクニックと体力が必要とされるのだとか。少し変わった獅子舞を見たい方は、勢理客の獅子がおすすめです。

全国で見られる個性的な獅子舞に注目してみよう!

獅子舞

獅子舞は、全国各地で親しまれている日本の伝統芸能です。地域の風土や慣習と結びついて発展したため、全国各地で個性的な獅子舞が見られます。これまで獅子舞に興味のなかった方も、旅行先や地元で獅子舞を楽しんでみてはいかがでしょうか。

私たち5PM Journalは、熱量を帯びている偏愛に解釈を添えて、「あらたな気づき」を生み出すことを掲げて運営しているWebメディアです。ぜひそのほかの記事もご覧になってみてください。

5PM Journal

 

参考

とやまの文化遺産 とやまの獅子舞
https://toyama-bunkaisan.jp/features/2833/

千葉県 鹿野山のはしご獅子舞
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/p321-019.html

ニッポンのマナー 噛まれるとラッキー!?日本の伝統芸能・獅子舞とは
https://kankonsosai.jp/article/shishimai/

恵南文化遺産・観光情報 上矢作町 横道獅子舞 魅力あふれる伝統芸能・獅子舞の世界へようこそ 横道獅子舞を若い世代に引き継ぎ発展させていく
https://wa-gokoro.jp/traditional-performing/780/

ワゴコロ 獅子舞とは?意味や由来、歴史、楽しみ方
https://wa-gokoro.jp/traditional-performing/780/

和楽 獅子舞とは?起源は?ライオンが生息しない日本でなぜ広まったの?歴史を解説
https://intojapanwaraku.com/rock/culture-rock/108185/

きときとひみどっとこむ 獅子舞
https://www.kitokitohimi.com/site/taiken/shishimai-introduction.html

千葉県 篠籠田の獅子舞
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/p321-048.html

いこーよとりっぷ 江戸時代から柏市で受け継がれる 龍神の獅子舞が舞い踊る伝統行事 篠籠田の三匹獅子舞(2023)
https://trip.iko-yo.net/events/1397

五所川原市 漆川獅子舞
https://www.city.goshogawara.lg.jp/kyouiku/bunka/urushikawashishimai.html

宇都宮の歴史と文化財 宇都宮の民俗芸能 天下一関白流御神獅子舞
https://utsunomiya-8story.jp/archive/contents_05/co_5/

地域文化資産 天下一関白流御神獅子舞<市指定無形民俗文化財> 宋円獅子舞<市指定無形文化財> 飯山の獅子舞<市指定無形文化財>
https://bunkashisan.ne.jp/bunkashisan/09_tochigi/7050.html

川崎市教育委員会 獅子舞(初山の獅子舞)
https://www.city.kawasaki.jp/880/page/0000000990.html

タウンニュース宮前区版 初山の獅子舞 新舞子がお披露目 菅生神社例大祭で
https://www.townnews.co.jp/0201/2023/10/06/700484.html

文化遺産オンライン 因幡・但馬の麒麟獅子舞
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/441146

関西伝統文化フェア 因幡麒麟獅子舞の会
https://kansaidento.jp/player/inaba.html

鳥栖市指定無形民俗文化財 曽根崎の獅子舞
https://www.nponia.com/41-sonezaki.html

文化遺産オンライン 勢理客の獅子舞
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/208790