目次

1.落語とは?

2.落語の歴史

3.落語の特徴とは?

4.落語家にも階級が?真打制度とは?

5.知りたい!落語の世界

落語とは?

寄席の会場

落語とは、簡単にいうとおかしな話や人情噺などを一人で座って演じる芸です。独立行政法人日本芸術文化振興会が運営する文化ライブラリーによると、落語は「おかしな話しで笑いを誘う、落とし噺(ばなし)」とされています。

落語では、主に登場人物の会話によってストーリーを進めます。落語家は一人で高座と呼ばれる舞台に座り、通常は扇子と手ぬぐいの他には何も持たずに、身振り手振り、話し方だけでさまざまな役を演じ分けるのが特徴です。

落語は気の利いた結末で終わらせる話が多く、これを「落ち」や「下げ(サゲ)」と呼びます。落とし噺とも呼ばれており、これが由来となって落語と呼ばれるようになりました。また、古くからの演目を落語家それぞれが工夫して演じるだけでなく、新しい演目も生まれています。

落語以外にも日本の伝統芸能に興味がある方は、日本の伝統芸能とは?伝統芸能の種類一覧も紹介!も参考にしてください。

 

古典落語と新作落語(創作落語)

落語は主に古典落語と新作落語(創作落語)に分けられます。両者の違いは、作られた時代です。

まず、古典落語とは江戸時代から明治時代にかけて生まれたものです。そのため、古典落語では江戸時代の暮らしや文化、風俗などをメインとして扱った噺が主流です。時代の流れに左右されない滑稽話や誰もが感動できるような人情噺も多くあります。それぞれの時代の落語家が作った噺を語り継いできたという歴史があり、そのほとんどが作者不明となっています。

一方、新作落語(創作落語)とは、大正時代以降に新しく作られたものです。新作落語は、落語家自身がその時代の流行や旬のワードなどを取り入れることができるため、わかりやすい面白さが魅力です。古典落語とは異なり現代を舞台にするケースも多いですが、未来や架空の世界を舞台にするなど設定は落語家が自由に決められます。落語初心者にも親しみやすいでしょう。

 

マクラ→本題→サゲで構成

落語は、マクラ→本題→サゲで構成されています。落語では通常、すぐに本題に入ることはありません。まずは世間話や本題に関係するような小咄(こばなし)から入るのが基本です。この世間話や小咄を「マクラ」と呼んでいます。なぜマクラと呼ぶかというと、和歌の頭につく枕詞が由来だとされています。

マクラから入ることで観客が自然と落語の世界に入りやすくなるという効果があるようです。また、観客の反応も見られるためその日の客層に合わせて演目を決めるという役割もあります。

本題の後には、気の利いた言葉や洒落の利いた言葉、語呂合わせなどで話を締めくくるのが基本です。これを「サゲ」または「落ち(オチ)」と呼び、先述したように落ちがある噺という意味合いで「落語」と呼ばれています。

 

落語と寄席ってどう違うの?

よく、「寄席に行こう!」という言い方をされますが、落語と寄席の区別がつかない人もいるかもしれません。

まず、落語とは落語家が演じる芸のことを指します。つまり、「マクラ→本題→サゲ」で構成されたストーリーのことを落語と呼びます。

一方、寄席とは「寄せ場」や「寄せ席」を略した言葉です。簡単にいうと大衆的な演芸場のことで、落語だけでなく漫才や講談といった古典芸能を演じるための場所です。人を寄せるという意味から、寄席と呼ばれています。

寄席は多くの落語家や芸人などが入れ替わり立ち代わり出演するため、さまざまな芸を楽しむことができます。

落語の歴史

落語はもともと「落とし噺」などと呼ばれていました。現在のように「落語」と呼ばれるようになったのは、1887年ごろからといわれています。

落語家の始まりは元禄期(1688~1704年)頃だとされており、京都の四条河原などで活躍した露の五郎兵衛(つゆの ごろべえ)、大阪で活躍した米沢彦八(よねざわひこはち)、江戸で評判を得た鹿野武左衛門(しかのぶざえもん)が有名です。3人とも不特定多数を観衆として料金を取って話を聞かせていたことから、落語家の祖と呼ばれています。

時代が進み寛政期(1781年~1801年)に入ると、落語の人気が高まり「寄席」が生まれました。寄席は庶民の娯楽場として急速に広がり、落語ブームが訪れます。

江戸時代は大衆の娯楽として親しまれていた落語ですが、明治に入ると「三遊亭圓朝」によって落語は芸能や芸術へと導かれます。三遊亭圓朝は、扇子一本だけを使い話術を極めていき、現在でも続く落語人気の礎となりました。

 

江戸落語と上方落語の違い

落語は、東京の江戸落語と大阪や京都の上方落語の2種類に大別されます。

江戸落語と上方落語にはさまざまな違いがあります。まずは、言葉です。江戸落語は江戸言葉が使われています。江戸言葉とは江戸っ子が使うようなもので、いわゆる「べらんめぇ口調」も江戸言葉に当たります。一方、上方落語では関西弁が使われます。

また、落語のスタイルも異なります。江戸落語はお座敷などで語られていたという成り立ちがあるため、じっくりと話を聞かせるスタイルです。人情噺などで笑いを誘うのが基本で、小道具として使うのは扇子と手ぬぐいのみです。上方落語は大道芸をルーツとしており、野外で人を集めるために出囃子があるのが特徴となっています。また、小道具として扇子と手ぬぐいだけでなく、見台と張扇、小拍子が使われます。

江戸落語と上方落語にはこのように多くの違いがあるため、聞き比べてみても面白いでしょう。

落語の特徴とは?

扇子

落語にはどのような特徴があるのでしょうか。落語の特徴としては、以下の4つが挙げられます。

 ・落語家は座ったまま芸で笑わせる

 ・小道具は扇子と手ぬぐいだけ

 ・落語家は一人で何人もを演じ分ける

 ・いろいろな人が同じ演目をする

ここでは、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

 

特徴①落語家は座ったまま芸で笑わせる!

落語の大きな特徴は、落語家が座ったままで芸を披露するという点です。落語家は高座に置かれた座布団に座ったままで、さまざまな登場人物を演じ分けます。その際、立って体を大きく動かすようなことはありません。落語家は登場と退場以外立ち上がることは基本的にありません。座ったまま、話だけで人を沸かせたり笑わせたりするのが特徴です。

また、高座に登壇するのも原則的に一人のみです。一人だけで複数の登場人物と演じることになるため、話し方や演じ方はもちろんのこと仕草や目線などが重要になります。落語家の洗練された芸と観客の想像力が加わることで、落語の世界が作り上げられるのです。

 

特徴②小道具は扇子と手ぬぐいだけ!

落語家の小道具は基本的に扇子と手ぬぐいのみです。落語家の間では、扇子を「カゼ」、手ぬぐいを「マンダラ」と呼ぶこともあるようです。

落語家の使う扇子は一般的には「高座扇(こうざせん)」と呼ばれており、通常の扇子よりも大きく頑丈な作りになっています。高座にあがってお辞儀をする際に扇子を前に置くことで、高座と客席の境界を示すとされています。また、噺の中で箸や筆、刀、キセルなどに見立てて使われることも多いようです。新作落語の場合、携帯電話やスマートフォンに見立てて使われるケースもあります。

手ぬぐいは、落語家の汗を拭いたり口元を拭ったりと実用的に使われることもありますが、何かに見立てて使われることも多いようです。たとえば、財布や手紙などとして使われる場合もあります。

 

特徴③落語家は一人で何人もを演じ分ける

これまでにも説明してきた通り、落語家は一人で高座に上がります。そのため、落語に登場する複数の人物を一人で演じ分けるのが大きな特徴です。

落語は基本的に会話によって物語を描写します。同じく伝統芸能である講談は説明をメインにしますが、落語の場合は落語家が登場人物を演じながら会話をメインに噺を進めていきます。

たとえば、遠くに黒い動物が動いているという場面を演じるとしましょう。講談の場合には、「遠くで黒い物体が動いているのが見えた。与太郎は「おい、あそこで何か動いているぞ」と指を指した。」というように説明をメインにします。

一方落語では、「おい、あそこに(指を指す仕草をしながら)何か黒いものがうごいてねえか」「おう、何だろうな?」というように会話を主軸にして演じるのが特徴です。

落語家がいつも着物を着ているのも、老若男女問わず演じ分けがしやすいという理由があるからともいわれています。

 

特徴④いろいろな人が同じ演目をする?

古典落語は、古くから語り継がれてきたという歴史があります。つまり、古典落語はさまざまな落語家が同じ話をするということです。落語ファンや落語をよく聞きに行く人なら、同じ話を聞いたことがあり筋書きを知っているというケースも珍しくありません。

同じ話を何度も聞いて飽きてしまわないのか、面白いのかと疑問に思う人もいるでしょう。しかし、話の筋書き自体は同じでも落語家によって、演じ方やアレンジは異なります。同じ人が同じ話をしても、その日によってアレンジが異なるため違った感じ方ができるでしょう。その違いを聞き比べるのも落語の楽しみ方です。

ただし、同じ公演の中で同じ話をするのはNGです。その日の公演に出演する他の落語家がどのようなネタをするのかは、楽屋のネタ帳に記載されています。必ずそのネタ帳を確認して、同じ話や似たような話は避けるようにするのが落語家のルールです。

落語家にも階級が?真打制度とは?

寄席の提灯

落語家にも階級があります。落語家の階級制度は真打制度と呼ばれており、以下の階級に分けられています。

 ・前座見習い

 ・前座

 ・二ツ目

 ・真打

ここでは、それぞれの階級の詳細を解説します。落語家の世界についての理解を深めるための参考にしてください。

 

前座見習い・前座

前座見習いとは、師匠から入門を許可された段階のことです。落語家になる際には所属する協会に登録されますが、前座見習いはまだ登録されていないため楽屋に入ることはできません。前座見習いは、師匠や兄弟子について鞄持ちをしたり、師匠の家の雑用をしたりします。また、前座になるために落語の稽古や着物の着方、鳴り物の稽古といった修行を行う時期でもあります。

前座見習いの期間が終わると、師匠から前座名をもらい協会に登録されて前座となります。前座見習いの仕事だけでなく楽屋での仕事が追加されることも特徴です。楽屋でのお茶出しや着付けの手伝い、その日の演目をネタ帳に書き記す、太鼓を叩くなど、寄席をスムーズに進行させるために必要な仕事を行います。また、師匠に認められれば、寄席の一番初めに高座に上がり落語を披露します。

 

二ツ目

二ツ目とは、前座修業が終わり落語家としての活動が許可される段階です。一般的には入門から3~5年程度で二ツ名に昇進します。二ツ目になると、前座で行っていた雑用から解放されるだけでなく、着物の種類も変わります。前座の際は着流しだったものが、紋付や羽織が着られるようになるため、落語家らしい恰好ができるようになるでしょう。

二ツ目は、寄席で2番目に出番が来ます。ただし、前座の頃のように毎日楽屋へ来なくてもよくなるため、自分で落語を披露するための高座を探さなければいけません。また、雑用仕事をすることで得られていた給料がなくなる、師匠からの小遣いがなくなるなど、経済的には厳しい時期だといわれています。

 

真打

真打とは、寄席で一番最後に出る資格を持つ落語家です。昔は、夜の寄席での明かりはすべてロウソクで、最後の演者が落語を終える際にロウソクの芯を切り落として明かりを消していたことから「芯打ち」と呼ばれ、そこから転じて真打と呼ばれるようになったといわれています。

真打になることで「師匠」と呼ばれる立場になり、弟子を取ることができるようになります。落語を演じるだけではなく、弟子を取り教える立場になるため周囲からも一人前として認められるでしょう。しかし、真打はゴールではありません。落語の世界では最高位の身分ではありますが、落語家にとってはここからがスタートだともいわれています。

知りたい!落語の世界

噺家の名札

落語は日本の伝統芸能の一つです。落語家は一人で複数の登場人物を演じ分け、話だけで観客を沸かせます。古典落語も新作落語もそれぞれの面白さがあるので、ぜひ寄席に足を運んでみましょう。

5PM Journalは、熱量を帯びている偏愛に解釈を添えて、「あらたな気づき」を生み出すWebメディアです。ぜひそのほかの記事もご覧になってみてください。

 

※参考

落語:早わかり|大衆芸能編・寄席|文化デジタルライブラリー

主な演目と種類:古典と新作|大衆芸能編・寄席|文化デジタルライブラリー

古典落語と新作落語の違いについての簡単まとめ - 出張落語サービス【かし亭】

落語って何?いつから始まったの?世界に誇る伝統芸能を3分で解説 | 和樂web 美の国ニッポンをもっと知る!

落語の歴史:落語家のはじまり|大衆芸能編・寄席|文化デジタルライブラリー

落語の歴史:興行としての成立|大衆芸能編・寄席|文化デジタルライブラリー

落語の「江戸」「上方」 似て非なる? 笑いの違い反映 - 日本経済新聞

はじめての落語 - ようこそ劇場へ - 文化庁広報誌 ぶんかる

芸の特徴:会話構成による描写と展開|大衆芸能編・寄席|文化デジタルライブラリー

【落語の魅力】古典落語はなぜ同じネタを何度も聴いても面白い?

はじめての落語 - ようこそ劇場へ - 文化庁広報誌 ぶんかる

落語家の階級 - 落語ってなに? - 落語はじめの一歩|落語芸術協会

落語の真打とは?真打の意味と真打制度について [落語] All About