もくじ

1.短歌とは?

2.短歌のルールとは?

3.短歌の作り方

4.短歌のテクニック

5.短歌とTwitter(X)の共通点とは?

6.有名な短歌を知りたい!

7.短歌に挑戦してみよう!

短歌とは?

万年筆とインク

短歌とは、簡単に言うと和歌の一種。あるいは、物事や出来事を五・七・五・七・七の31音(みそひともじ)で表現する古典詩を指します。最初の5文字を「初句」といい、次から順に「2句」「3句」「4句」「結句」です。

東洋大学の運営サイト「LINK@TOYO」によると、短歌の31文字の形式は、鎌倉時代や室町時代から現代まで変わらず受け継がれているのだそう。個性的で自由な表現が良しとされている「現代短歌」でも形式は変わらず、心に響く歌に多い「共感性の高さ」も同じなのだとか。

また、誰かを傷つけるような表現が少ないのも短歌の特徴です。過激な思想や表現もほとんど見られず、どんな人でも安心して楽しめる“エモさ”が、多様性や相互尊重を重んじる現代を生きる若者に刺さっている理由なのかもしれません。

日本の伝統芸能について詳しく知りたい方は、「日本の伝統芸能とは?伝統芸能の種類一覧も紹介!」の記事もご覧ください!

 

短歌の歴史

実は、短歌の起源についてはっきりと分かっていることはありません。しかし、日本最古の歌集「万葉集」を基にしてみると、奈良時代には既に短歌が詠まれていたということになります。

かつて和歌は短歌だけでなく、「長歌(ながうた)」や「旋頭歌(せどうか)」、「片歌(かたうた)」など、さまざまな種類があったのだそう。しかし、初代勅撰和歌集「古今和歌集」の頃には、和歌=短歌形式の認識が浸透していました。

また、明治時代には正岡子規らによって短歌の革新運動が起こります。これは今までの伝統に捉われず、新しい表現方法を取り入れようという取り組みによるもので、革新運動を行ったことにより短歌がより多くの人へと広がり、たくさんの人に愛されるものになりました。

 

短歌と俳句、和歌、川柳の違い

日本独自の詩には、短歌や俳句、和歌、川柳などがあります。どれも名前を聞いたことはあるかもしれませんが、それぞれの違いについて明確に答えられる人は少ないかもしれません。

以下は、俳句と和歌、川柳の特徴と短歌との違いをまとめたものです。

 特徴                      短歌との違い                      
俳句

●      一般的に17音からなり、五・七・五の三行で構成される

●      季語を含むことが基本的な条件

●      季語を含むことが条件の俳句に対し、短歌は季語の有無は問われない

●      俳句は作者の個性が控えめなのに対し、作者の個人的な感情が反映されやすいのが短歌

和歌

●      31音から成り立ち、五・七・五・七・七の五行で構成される

●      自然や季節感を表現することが一般的

●      和歌と短歌はほぼ同じもので、和歌の中の一つの形式が短歌といえる。

●      短歌と和歌は同様の形式を持つものの、基本的に和歌は季節感を表し、短歌は感情を表すことが多い

●      短歌に比べ、和歌は作者の個人的な経験はあまり強調されない

川柳

●      一般的に17音からなり、五・七・五の三行で構成される

●      一般的には、ユーモアのある風刺、日常の出来事などを軽やかに描くことが多い

●      短歌よりも表現が比較的自由であり、語呂やリズムを強調する

●      奈良時代には既に詠まれていたとされる短歌に対し、川柳は主に江戸時代に発展したといわれている

短歌のルールとは?

紙とペン

ここからは、実際の現代短歌の作り方や作るうえでのルールを解説します。

たった3つのルールを守れば誰でも簡単に短歌を作れるので、ぜひ参考にしてみてください。

 

ルール①基本の文字数は「五・七・五・七・七」

先述したように、短歌は「五・七・五・七・七」の31音で構成されています。日本では、昔から「五音」と「七音」を組み合わせて表現する手法が一般的で、多くの人が心地よく感じるスタイルになっています。

31音で表す基本の短歌の例は以下のとおりです。

【例】

「この味がいいね」と君が言ったから 七月六日はサラダ記念日(俵万智)                

 

実際に声に出して詠んでみると、リズム感の良さを感じられますよね。また、短歌では、文字数ではなく「音数」を数えます。ここでの「音数」とは、詠んだときの音の長さを指します。

例えば、「読んだ」は「よ/ん/だ」と1音ずつ数えられるため、3音の言葉です。また、「君への手紙」は「き/み/へ/の/て/が/み」で7音の言葉です。

では、「たっぷり」「グリーンのセーター」「マネージャー」など、小さい字や伸ばし棒、英単語、アルファベットはどのようにカウントするのでしょうか。次の項目で詳しく解説します。

 

こんなときどうする?短歌の文字カウント方法

短歌では言葉を文字数で数えないため、「ゃ」「ゅ」などの小さい字や伸ばし棒のある言葉はどのようにカウントすればいいの?と悩んでしまう人もいるでしょう。

短歌ではそういった場合でも悩むことがないよう、しっかりとルールが定められています。それぞれのルールは以下のとおりです。

文字カウント方法                               
拗音(ゃ・ゅ・ょ)一音としてカウントしない
促音(っ)一音としてカウントする
伸ばし棒(-)一音としてカウントする
記号(!・?など)一音としてカウントしない
句読点(、・。)一音としてカウントしない
英語・アルファベット一音としてカウントする

 

伸ばし棒のある言葉の場合、例えば「マネージャー」は「マ/ネ/エ/ジャ/ア」と発音するため、5音とカウントします。ちなみに「ジャ」を「ジ/ャ」とカウントしないのは、ジャを「ジヤ」とは発音しないからです(拗音)。

一方、英語の場合、例えば「apple」は「ア/ッ/プ/ル」と発音するため4音です。ちなみに表に示したとおり、「っ」は一音としてカウントします(促音)。

では、アルファベットの場合、例えば「BとC」と言いたいときはどうカウントするでしょう。実際に声に出してみると「ビ/イ/と/シ/イ」と発音するため、5音になります。

 

ルール②とはいえ、字足らず・字余りもOK

短歌は31音というルールがあるとはいえ、字足らずや字余りもOKとされています。例えば、以下の2つの例を見てみましょう。

【字足らずの例】

風立ちぬ いずれにせよ 青い空 きっとまた逢う あの日の約束                    

 

2句が6文字なので、読んでいて「あれ?」と肩透かしを食らったような感覚があったのではないでしょうか。実はこれが字足らずの魅力で、あえてスムーズに詠ませないことで短歌に注目してもらう効果があります。

【字余りの例】

夏の夜 蛍の光瞬く 涼やかに ふたり手をとり 夢に舞い上がる                       

 

この短歌は2句が11文字、5句は8文字ですが、字足らずの短歌と同じく「かえって印象付ける」効果があります。最近では、数えて31文字に収まっていればよいという考え方も出てきており、より短歌の自由度が高まっています。

 

ルール③季語は必要ない!

俳句とは違い、短歌に季語は必要ありません。そのため、「季節に関する内容を入れなきゃ!」「風情を感じる内容を……」と無理に季節のテーマを探す必要はありません。これが短歌が若い世代のなかで流行している理由の一つでもあります。

自分の思想や感情を歌に反映させるのが短歌なので、難しい言い回しをする必要もありません。例えば、以下の例を見てみましょう。

【例】

● 一年は短いけれど 一日は長いと思っている 誕生日(俵万智)                    

● とりもどすことのできない風船を ああ遠いねえと最後まで見た(東直子)

● 「まっすぐ」の文字のどれもが持っているカーブが 日々にあったっていい(木下龍也)

 

どうでしょう、どの短歌も季語はありません。しかし、だからこそ、情景が頭に浮かんで、“エモさ”を感じることができるのです。

もちろん短歌に季語を入れてもOKですが、季語はかぶらないようにすることがルールです。

短歌の作り方

日本家屋の障子が並ぶ廊下

ルールといっても厳密さはあまり感じられず、基本的に自由度の高い短歌。歌人が作った素敵な短歌を詠んでみるのもいいですが、せっかくなら自分でも短歌を作ってみましょう。

ここからは、短歌の具体的な作り方を解説していきます。手順に沿って組み立てていけば、自分らしい短歌がきっと完成しますよ。

 

まずは題材を選ぼう

まずは題材(テーマ)を選んでみましょう。題材といっても難しく考える必要はなく、なんでもOKです。

以下は、短歌に取り入れやすい題材の例です。

 ● 恋愛

 ● 日常生活で見つけたこと

 ● 些細な悩み

 ● 家族やペットのこと

 ● 自然や季節のこと(空、海、空気など)

家族は両親や兄弟のことでも、自分の子供やパートナーのことでもよいでしょう。ペットの面白い行動や可愛い仕草に関することでも素敵ですね。

 

題材に対する気持ちを確認する

題材が決まったら、その題材に対してどのような気持ちを詠みたいのか確認していきましょう。例えば、以下のような気持ちです。

 ● 嬉しかったこと

 ● 悲しかったこと

 ● 寂しかったこと

 ● 感動したこと

 ● ドキッとしたこと

 ● キュンとしたこと

必ずしもプラスの気持ち(感情)でなければいけないわけではなく、「恋人と別れて悲しかった」「一人暮らしを初めて寂しい」など、マイナスの気持ち(感情)を詠ってもかまいません。

 

気持ちを五・七・五・七・七にのせよう

題材に対する気持ちが確認できたら、実際に「五・七・五・七・七」にのせてみましょう。
ただしこのとき、題材(テーマ)となる言葉を使わないほうが読者の想像を搔き立てる短歌になります。例えば、恋愛の悩みを題材にしたときに「恋愛」「悩み」のワードは使わずに作るということです。

【例】

月明かり 揺れる窓辺と君の欠片 静かに舞い 想い寄せる                          

 

例として挙げた上の短歌は「恋愛で悩んでいる」ということをストレートに詠んではいないものの、「月明かり」「静かに舞い」「想い寄せる」などのワードから静かに思い悩んでいることが分かりますね。

このように、気持ちをストレートに表現せず、まずは情景をメインに言葉を並べてみるのがおすすめです。

短歌のテクニック

ペン先

自分の思想や気持ちを「五・七・五・七・七」で詠むことは、誰でも簡単にできることではないでしょう。作り方に沿っても、「なんか違う気がする……」と迷ってしまうこともあると思います。

ここからは、短歌のテクニックを3つご紹介します。コツを掴んで、オリジナルの短歌を素敵に作ってみましょう。

 

「区切れ」を意識しよう

「句切れ」とは、一つの短歌にある切れ目のこと。句切れを取り入れることでリズム感が整い、詠む側にとって理解しやすくなります。

句切れには、「~かな」「~けり」「~かも」「を」「ぞ」「よ」「や」などの言葉が使われている場合もあれば、単語の場合もあります。単語を使用した句切れには、以下の短歌があります。

【単語での句切れの例】

観覧車 回れよ回れ想ひ出は 君には一日 我には一生(栗木京子)                     

 

この短歌は「観覧車」に句切れを入れています。どこに「。(句点)」を入れられるかで判断すると句切れが分かりやすくなります。

ちなみに、短歌のどこで句切れを入れるかによって、「初句切れ」「二句切れ」「三句切れ」「四句切れ」と呼び方が変わります。ちなみに、五句はどちらにせよ短歌の終わりなので「五句切れ」とは呼びません。

 

「句またがり」で変化球

上級者レベルの短歌を作るなら「句またがり」にも挑戦してみましょう。「句またがり」とは句切れがなく、「初句と二句」「二句と三句」など連続する句に一文がまたがっていることを指します。

例えば、以下の短歌があります。

【例】

思い出の一つのようでそのままにしておく麦わら帽子のへこみ(俵万智)                  

 

この短歌を五・七・五・七・七に分けると「思い出の/一つのようで/そのままに/しておく麦わら/帽子のへこみ」になりますが、これだと不自然ですよね。

自然に区切るのであれば「思い出の/一つのようで/そのままに/しておく麦わら帽子のへこみ」になるので、この場合は「しておく麦わら帽子のへこみ」が句またがりになります。

このように、句またがりは独特なリズムを作り出すテクニックで、詠み手に印象を与えることができるのです。

 

口語や文語・仮名づかい……すべて自由!

先述したとおり、短歌は季語を使う必要がなく、何をテーマにしたって構いません。それだけでなく、口語的な表現(話し言葉)や文語(書き言葉)、仮名づかいまでも、すべて自由なのです。

実際にこれらの表現を使っている3つの例を以下に挙げてみます。

【口語で詠む短歌】

鮭の死を 米で包んで またさらに 海苔で包んだ あれが食べたい(木下龍也)              

 

この短歌は「おにぎりが食べたい」ということを分解して伝えた口語的な短歌です。「あれ」などの口語で詠むとユニークさが出るので、若い世代に響くような短歌に仕上がります。

【文語で詠む短歌】

秋風に あふたのみこそ悲しけれ わが身むなしくなりぬと思へば(小野小町)               

 

これは、秋風に吹かれる田の実と、人に飽きられてしまったわが身を重ねて感じた悲しさを文語的に表現した短歌です。

【仮名づかい(旧仮名づかい)で詠む短歌】

小鳥きて 少女のやうに身を洗ふ 木かげの秋の水たまりかな(与謝野晶子)                

 

この短歌で使われている旧仮名づかいの「やう」「洗ふ」を使ったり、現代仮名づかい「よう」「洗う」に直して使ったりしてもよいのです。

短歌とTwitter(X)の共通点とは?

スマホのTwitterアイコン

短歌のルールや作り方を見て、「意外と自分にもできそう!」と感じた人は多いのではないでしょうか。それもそのはず、自分の思想や気持ちを短い文章のなかに自由に表現するという点はTwitter(X)と共通するものがあり、実は今Z世代にも短歌ブームが起こっているのです。

ここからは、短歌とTwitter(X)との3つの共通点について解説していきます。

最近SNSで流行っている短歌と百人一首の共通点について熱く語っている、Z世代の短歌ブームと百人一首から見る「平安時代と令和の共通点」も是非ご覧ください!

 

気軽に詠める

短歌とTwitter(X)の最大の共通点は「気軽に詠める」ということ。どちらも文字情報だけで自分を表現することができ、いつでもどこでも気軽に詠める(つぶやける)のです。

Twitter(X)は画像や動画も掲載できますが、文字情報だけならInstagramやTikTokのように写真映りを気にしたり、動画の構成を考えたりしなくてよいので、感じたことをその瞬間につぶやけます。短歌も同様に、その瞬間の心情を言葉にしたためることができるので、気軽に詠めるほか、リアルな人間の心情を映し出しやすい手段だといえます。

 

独創性より共感性が重要

短歌は、文字数に制限があるなかで多くの人が共通認識を持っている事柄を表現するもの。Twitter(X)も同じく、独創性というよりも“いかに多くの人が共感できるか”を重要視する傾向にあるため、そういった点においても2つは大きく共通しているのです。

例えば以下の短歌はどうでしょう。

カードキー 忘れて水を 買いに出て 僕は世界に 閉じ込められる(木下龍也)              

 

ほら、なんだかTwitter(X)でつぶやかれていそうな内容でしょう?思わず「あるある~!」と口に出してしまいそうなことこそ、短歌にぴったりな題材なのです。

なお、「カップヌードルの海老」や「菓子パンの袋」をテーマにした短歌もこのあと紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。

 

読者の想像の余地を残している

個人的に、最近のZ世代を中心とする若者の文章は「短いな」と感じています。SNSは「mixi」や「Facebook」からどんどん文字情報が減り、InstagramやTikTokのように文字情報ではなく、画像や動画をメインとする表現方法が今や主流になっています。

そのなかでTwitter(X)は、「最後にして最も手軽な文字情報型SNS」。文字数制限があることから、すべてを書くのではなく、読者(ユーザー)の想像の余地を残すような書き方をする傾向にあるのも特徴です。

この点は短歌も同じです。作り方でもご紹介したように、伝えたいことをストレートには書かないことで、読者の想像の余地を自由に残しているのです。

有名な短歌を知りたい!

和室から庭を見る人

今までいくつか短歌の例を挙げてきましたが、もっと知りたい人のために歌人別に有名な短歌を紹介します。

学校で習うような歌人も登場するので、懐かしく感じる人もいるでしょう。ぜひ、さまざまな想像を広げて楽しんでください。

 

与謝野晶子

与謝野 晶子(よさの あきこ)は、大阪府出身の文学者。1899年「関西青年文学会」に参加し、「明星」誌上に短歌を掲載していました。

彼女は「源氏物語」を現代の言葉で訳しただけでなく、1921年に文化学院の創立にも参加し、短歌以外にも婦人問題や教育問題に積極的に発言し、幅広い分野で活動しました。

そんな与謝野 晶子が詠った有名な短歌がこちら。

やわ肌の あつき血汐に ふれも見で さびしからずや 道を説く君                    

 

これは、熱く人の道を語っている目の前の男性(お勉強のできる秀才くんでしょうか)に対し、「女性(私の)肌に触れもしないで寂しくはないのですか」「私のうちに秘められている想いがどんなものか、あなたは知らないのですね」と訴えている短歌です。

時代背景を考えると、何とも挑発的な短歌と言えるでしょう。与謝野 晶子自身の胸にたぎる想いを表現した歌として、今でも語り継がれています。

 

石川啄木

石川 啄木(いしかわ たくぼく)は、岩手県出身の文学者。1902年に与謝野鉄幹と知り合い、その後は『明星』誌で精力的に活動するようになりました。

1908年に上京し、創作に没頭して小説を執筆しましたが、なかなか評価されず、経済的に苦しい状況に立たされました。その後、翌年に東京朝日新聞に就職し、1910年には『一握の砂』を刊行。また、歌人としての地位を確立しました。

石川 啄木の有名な短歌は以下です。

たはむれに 母を背負いて そのあまり 軽きに泣きて 三歩進まず                    

 

この歌を現代語に訳すと、「ふざけて母を背負ってみたが、あまりの軽さに涙がこぼれて、3歩も歩くことができない」。母が年を取ったことを実感し、今まで自分がかけた苦労を思い出して情けなく感じている様子を表しています。

 

正岡子規

正岡 子規(まさおか しき)は、愛媛県出身の文学者。1892年に日本新聞社に入社し、主に『日本』紙上で文学活動を展開しました。彼は、俳句や短歌の革新運動を進め、また写生論を提唱した人物です。

日清戦争に従軍した後、彼は喀血し、その後は病床で過ごすことになりました。この時期に彼は『俳諧大要』を執筆し、俳誌『ホトトギス』を指導しました。

そんな正岡 子規の有名な短歌がこちら。

足たたば 北インヂヤの ヒマラヤの エヴェレストなる 雪くはまし                   

 

この短歌の意味は、「足が元気になったら、北インドのヒマラヤ山脈のエヴェレストにある雪を食べてみたいな」というもの。

実は、晩年の正岡 子規はカリエスという病気で歩けなくなったのです。彼にはまだ行きたい場所ややりたいことがたくさんあったのだなと感じる一方で、「雪を食べてみたい」という部分からユーモアな性格も感じますよね。

 

俵万智

俵 万智(たわら まち)は、福井県出身の歌人です。中学・高校時代を武生(現越前市)・福井で過ごし、早稲田大学を卒業。卒業後の1986年には「八月の朝」で角川短歌賞を受賞し、翌年の1987年には『サラダ記念日』で現代歌人協会賞(第32回)も獲得しました。

そんな俵 万智の有名な短歌がこちら。

気づくのは 何故か女の役目にて  愛だけで人(ひと) 生きてゆけない                   

 

この短歌の意味は「いつも現実的なことに気づくのは女ばかり。愛だけでは人間生きていくことはできない」というもの。

一見、「女」「人間」という言葉から自分に対して言っているように思えますが、いつまで経っても気づかない「男性」へ投げかけられる冷たい視線も感じる一句です。

それにしても、「愛だけで人は生きてゆけない」だなんて、女性なら一度は感じたことがあるはず。私個人としても心からうなずいてしまいます。

 

穂村 弘

穂村 弘(ほむら ひろし)は、北海道・札幌市生まれの歌人。加藤治郎と荻原裕幸と共に1990年代における「ニューウェーブ短歌」運動を牽引し、その中で現代短歌の代表的な歌人となりました。批評家、エッセイスト、絵本の翻訳家としても活動しています。

そんな穂村 弘の有名な短歌がこちら。

ハロー夜。 ハロー静かな霜柱。 ハロー カップヌードルの海老たち                     

 

なんともユニークな一句ですが、「夜」「霜柱」「カップヌードルの海老たち」に注目すると情景が浮かび上がってきます。また、人ではないものに対して「ハロー」と呼びかけている様も、この作者の陽気な人物像を象徴していますね。

私個人としては、冬の寒い時期に、カップヌードルを食べながら徹夜でもするのかなぁ、と解釈しましたが、みなさんはいかがですか?

 

木下龍也

木下 龍也(きのした たつや)は、山口県出身の歌人。最初はコピーライターを目指していましたが、2011年に穂村弘の歌集に触れたことがきっかけで、本格的に短歌の制作を始めることとなりました。

2012年には、現代歌人協会が主催する「第41回全国短歌大会」で大会賞を受賞。その後、2013年には東直子と加藤治郎が監修する書肆侃侃房の「新鋭短歌シリーズ」から、初めての歌集となる「つむじ風、ここにあります」を発表しました。

そんな木下 龍也の有名な短歌がこちら。

つむじ風、ここにあります 菓子パンの袋が そっと教えてくれる                    

 

朗らかな気持ちになる一句ですね。「つむじ風」と「菓子パンの袋」の相関関係が示されていないことで、想像を読者に委ねているのだと解釈できます。

家の中に置いておいた菓子パンの袋がひらひら揺れているのを見て、今日は風が強いのだなと感じている状況でしょうか。これも日常の中でよくある光景だといえます。

短歌に挑戦してみよう!

ペンとメモ帳

この記事では、短歌についてさまざまな角度から紹介しました。たった31文字の中にいろいろな要素が詰まった短歌は、詠むだけで頭の中が想像でいっぱいになります。

もし今悩んでいることがあれば、その悩みを一句にしたためた短歌が見つかるかもしれません。昔の歌人も自分と同じようなことで悩んでいたのだと思えば、少しは気持ちが楽になるでしょう。短歌のもつ共感性は、人間だれしもが感じる苦悩や悲しみを半分にしてくれるパワーもあるのです。また、日常の中の小さな感動を、実際に31文字にのせて詠んでもよいでしょう。Twitter(X)に投稿して「いいね!」が得られたら、毎日がよりキラキラしたものになるかもしれません。

5PM Journal」では、本記事のようにさまざまな角度から物事を深堀りし、あなたに気づきを与える記事を幅広くご用意しています。いつもの日常がガラッと変わるような視点を、自分の中に取り入れてみませんか?

参考

・与謝野晶子|近代日本人の肖像 | 国立国会図書館

・石川啄木|近代日本人の肖像 | 国立国会図書館

・正岡律 子規の介護という偉業

・俵 万智 | デジタルアーカイブ福井

・木下龍也 - Wikipedia

・穂村 弘 - Webcat Plus

・正岡子規|近代日本人の肖像 | 国立国会図書館

・【俳句の季重なりとは】季語は何個まで?季語の重複(かぶり)のルールや例を紹介!

・【短歌の「ゃ•ゅ•ょ•っ•-」の使い方&ルール】簡単にわかりやすく解説‼︎小さい文字や伸ばし棒など

・川柳の歴史 川柳豆知識|オリックスマネー川柳

・なぜ、現代短歌がZ世代の心をつかむのか?ブームの鍵は「いいね」にあった

・和歌とは? 「美を志向する、大和の音楽(みんなで仲むつまじく)」である

・Z世代の心つかむ短歌ブームとは?31音の不安や焦りSNSで共感

・空前の“短歌ブーム”は何映す 令和の歌に託した思い