目次
1.日本の伝統芸能とは?
2.主な伝統芸能の種類一覧
3.伝統芸能の抱える継承者問題とは?
4.観てみたい!日本の芸能
日本の伝統芸能とは?
日本の伝統芸能とは、簡単に言うと日本で古くから現代にいたるまで伝えられてきた芸能のことです。文部科学省は、伝統芸能を「日本に古くから伝えられてきた能楽(のうがく)、文楽(ぶんらく)、歌舞伎(かぶき)などの演劇(えんげき)や音楽と定義しています。
そもそも、芸能とは舞台などで人が動くことによって表現されるものや、修行や稽古を積み重ねることで身についていく技能のことです。
伝統芸能とは、古い時代に誕生し、時を経る中で形を変えながら、それぞれの分野ごとにの しきたりなどが加えられ、洗練され、一定の型や様式として伝承され現代に伝わるもののことをいいます。
伝統芸能に当てはまるものは非常に幅広いため、どこまでの範囲を伝統芸能とするかという判断は個人によって大きく異なり、どこで線引きするかは曖昧であるのが実情です。
1-1 西洋文化が入ってからの芸能と区別する言葉
「日本の伝統芸能」という言葉は、しばしば明治時代以降日本に入ってきた西洋文化(現代芸術)と区別するために用いられることがあります。
明治時代以降に現代芸術として外国から日本に入ってきたものとしては、オペラやバレエ、舞踊、演劇などがあります。こうした現代芸術が日本に入ってきた後も、日本の伝統芸能はこれまで培われた伝統を維持し、現代芸術と交じり合うことが少ない状態で存続してきました。
日本には国立劇場と新国立劇場という2つの劇場があります。国立劇場が果たす役割は、日本の伝統芸能を次世代に継承するために公演をおこなったり後継者の育成、調査、資料集め等をおこなったりすることです。それに対して新国立劇場は、現代芸術を次世代に継承するために公演をおこなったり出演者の育成、調査、資料集め等をおこなったりします。
主な伝統芸能の種類一覧
伝統芸能は大きく分けると日本舞踊、演劇、音楽、演芸、その他の5種類に分類できます。ここからは主な伝統芸能を種類ごとに紹介していきましょう。
2-1 日本舞踊
日本舞踊に分類できるものには以下のようなものがあります。
・神楽
・田楽
・雅楽
・舞楽
・猿楽
・白拍子
・延年
・曲舞
・上方舞
・大黒舞
・恵比寿舞
・纏舞
・念仏踊り
・盆踊り
日本舞踊は日本の伝統的な踊りを総称したものです。能の動きである「舞(まい)」と歌舞伎の動きである「踊(おどり)」が組み合わさっています。舞はすり足でゆったりとおこなう動き、踊はリズミカルに単純な動きを繰り返すものです。
日本舞踊はさまざまなシーンや目的でおこなわれます。たとえば、神様に奉納するため(神楽)、田植えを始める前の儀式として(田楽)、漁師が大漁祈願と航海の安全を願うため(恵比寿舞)、お盆に死者を供養するため(盆踊り)などです。
念仏を唱えながら踊る念仏踊りは国の無形重要無形民俗文化財に指定されています。上方舞は大阪・京都で発展し、大黒舞は山形と鳥取で伝わるなど、地域ごとに発展し、継承されてきていることも特徴です。
2-2 演劇
日本の伝統的な演劇は主に「能楽」・「歌舞伎」・「人形浄瑠璃」の3つに大別できます。また能楽は「能」と「狂言」の2つの総称です。
・能楽
室町時代に観阿弥と息子の世阿弥によってそれまで流行していた田楽・猿楽の芸術性が高められ、能楽として発展しました。役者は役柄や情景によって異なる能面・装束と呼ばれる豪華な衣裳を身に着けます。笛・小鼓・大鼓・太鼓などの伴奏による囃子・地謡と呼ばれるコーラスにより、能舞台の上で演じられることが特徴です。能楽の中に能と狂言が含まれます。能は歴史上の出来事や物語などの文学作品を題材とし、狂言は中世の日常的な出来事が題材にされることが多い傾向です。
・歌舞伎
歌舞伎は歌と踊り、芝居が組み合わさったものです。江戸時代には庶民の間で娯楽としてもてはやされました。その時代の世相やニュースを反映した演目が上演されたことも特徴です。歌舞伎役者が着ているものが巷でも流行するなど、ファッションを牽引する役割も果たしました。
・人形浄瑠璃
人形浄瑠璃は物語を語る太夫、伴奏をおこなう三味線、人形を操る人形遣いが一体となった芸術で、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。文楽人形は3人の人形遣いによって操られ、微妙な動きや心情までもを表すことができ、人間らしい動きを見ることが可能です。
2-3 音楽
日本の伝統音楽には実にさまざまな種類があります。独特の発声による歌のほか、三味線を使ったものも多く見受けられます。以下で主なものをまとめました。
・雅楽
中国や朝鮮から伝来し日本で根付きました。明治時代に創設された宮内庁式部職楽部が雅楽を伝承しています。
・邦楽
日本の伝統的なスタイルによる音楽を総称して邦楽といい、狭義では江戸時代の音楽を意味します。琴による箏曲(筝曲)のほか、琵琶曲、胡弓楽、尺八楽、三味線楽など日本伝統の楽器を用いた音楽などが含まれます。
・浄瑠璃節
浄瑠璃節は浄瑠璃とも呼ばれ、日本の声楽の一分野で詞章に物語的な性格がある楽曲です。室町時代に成立し、江戸時代に最盛期を迎えました。主な流派に、義太夫節、河東節、一中節、常磐津節、富本節、清元節、新内節、宮薗節(薗八節)があります。
・唄
独特のリズムや旋律、節に合わせて声を出し、音を作り出すものです。歌詞の意味やストーリーを楽しむ語り物と、旋律やリズムを楽しむ歌い物の2種類に分けられます。この中には奄美地方で独特に発展した奄美民謡や、現在でも漫才でおなじみの都都逸も含まれます。
2-4 演芸
演芸は寄席などで行われる芸能で、現在でも落語や奇術、紙切りなどはおなじみですね。演芸の主な種類を紹介します。
・講談(講釈)
講談は張り扇を使って釈台(机)をたたき、パパンと音を響かせながら独特の語り口で話を語る芸です。ルーツは古く、奈良・平安の頃といわれています。一般的によく知られている講談は、食に困った浪人が老若男女を集めて太平記を読んで聞かせたといわれる「太平記読み」です。
・落語
落語は座布団に座った演者の身振り手振りのみによって噺(はなし)が進んでいきます。演者一人で何役も演じ分け、噺の最後にオチが付くことが特徴です。小道具は扇子と手ぬぐいくらいしか使われません。演者は噺をしながらさまざまな仕草をおこなったり、小道具を別のものに見立てて演じたりします。聴き手は演者によって語られる情景をあたかも目にしているかのように頭の中で想像力を膨らませ、笑いの世界に引き込まれていきます。
・浪花節(浪曲)
三味線を伴奏として独特の節と語りによって物語を進める話芸です。落語、講談と並んで日本三大話芸の1つとされています。
・奇術
種や仕掛けを用いて観客をあざむく芸(マジック)のことです。使う道具はコインやトランプなどの小さいものから大がかりな舞台装置までさまざまなものがあります。
・梯子乗り
江戸の街で火消しが梯子をかけて屋根から屋根に飛び回り、てきぱき消火活動をおこななった技が昇華されたものです。お正月には消防の出初式として技が披露されます。
・紙切り
紙切りは、観客の目の前で観客の注文に応じてさまざまなものを1枚の紙をはさみで切り出すことによって表現する芸です。
2-5 その他
他にも
・和歌や俳諧などの歌
・彫金、漆器、陶芸、織物などの工芸
・茶道、香道、書道、華道、武道などの芸道
・囲碁、将棋などの盤上遊戯
も伝統芸能に分類されます。
歌は言葉によって感情を表現するものです。昔から言葉には魂が宿っている(言霊)ことを信じてきた日本人ならではの感情表現の手法ともいえます。
伝統工芸は日常生活で使われるものを制作している、工程の多くが手作業である、高度な技術を必要とする、長きにわたって受け継がれてきた歴史があることが条件です。2023年10月26日現在、国が指定した伝統工芸品は241品目あります。
日本の伝統的な芸能や技の中で、精神性を重要視しているものが芸道です。芸道は楽しむことや作品を作ることだけが目的ではなく、鍛錬を重ねていくことで精神を整えて自分自身を成長させることを目的としています。
※出典 経済産業省 伝統的工芸品 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/nichiyo-densan/index.html(2023年12月30日)
伝統芸能の抱える継承者問題とは?
日本では古くからさまざまな技や芸を親から子、師匠から弟子など、先代から次世代へと直接的に受け継ぐ直伝が当然とされてきました。先代から受け継いだものを次代が大切に守り、また次の世代に受け継ぐという流れがあったからこそ、現代にも伝統芸能が生き続けています。
しかし、時代の変遷とともに直伝制度に頼っているだけでは後継者不足につながるという問題を抱えるようになりました。このような問題に対応するために、独立行政法人日本芸術文化振興会では、伝統芸能の後継者を広く一般から募集する取り組みとして、伝統芸能伝承者養成研修を1970年からおこなっています。
研修分野は歌舞伎俳優、歌舞伎音楽(竹本・鳴物・長唄)、寄席囃子、太神楽、能楽(三役)、文楽、組踊です。2~6年の研修期間に、実技だけでなく伝承者となるために必要な常識や礼儀作法を学びます。
※参考:政府広報オンライン.あなたも伝統芸能の道を目指してみませんか?国立劇場伝統芸能伝承者養成事業.https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202112/4.html#c1,(2024年1月9日)
観てみたい!日本の芸能
日本にはさまざまな伝統芸能が息づいています。何百年にもわたって親から子へ、師匠から弟子へと大切に受け継がれてきた伝統芸能は、洗練された美しさに満ちあふれており、技や形式だけでなくそこに流れる精神性に崇高さを感じずにはいられません。
これまで多くの人を魅了してきた数々の伝統芸能の中には、きっと自分の琴線に触れる、もっと見てみたい、感じてみたいと思えるものがあるはずです。自分の感性にマッチし、その世界観にどっぷり浸りたくなる伝統芸能を探してみてはいかがでしょうか。
5pmjournalでは、「新たな気づき」のヒントを多く紹介します。何かにどっぷり沼ってみたい人は是非チェックしてみてください。
参考
文部科学省 伝統芸能(げんとうげいのう)・舞台芸術(ぶたいげいじゅつ)ってどんなもの?