テレビをつければ、1日に1回はサウナがテーマの漫画やドラマのCMを見かけるほど、サウナは熱いブーム。「噂の”ととのう”を体感してみたい!」とは思うのですが、いざサウナを探してみると、サウナの本場である北欧フィンランド式のサウナから、昔からの日本式銭湯サウナ、さらにはジムやスーパー銭湯のサウナまで……種類が多すぎて、初心者の私にはどのサウナから行けばいいかわかりません。

そこで、「サウナ大好きな女優」として有名な筋金入りのサウナー、清水みさとさんにインタビュー。初心者におすすめのサウナスポットやグッズ、北欧のサウナと日本のサウナの違いなど、気になることを余すことなく聞いてきました。

「サウナ大好きな女優」 清水みさと

サウナ・スパプロフェッショナル、サウナ・スパ健康アドバイザーの資格を持つベテランのサウナー。ラジオ番組「清水みさとの、サウナいこ?」パーソナリティや「サウナイキタイ」のモデルなど、サウナの魅力を精力的に発信しており、フィンランドサウナアンバサダーも務める。

初心者でも、悩む必要なし。身体一つでサウナを楽しむのがおすすめ

―本日はよろしくお願いいたします!サウナをこよなく愛する清水みさとさんに本日は色々伺えたらと思っております。

清水:よろしくお願いします!サウナについて話す機会が最近増えてきて、とっても嬉しいです。

―やっぱりサウナに興味がある人が増えてきたということなのでしょうか。

清水:そうですね。特に「初心者でも楽しめる、おすすめのサウナを教えてください!」なんて質問はよくいただきます。

―私も気になっていました。どこのサウナに行けばいいのかな……と悩むうちに「また今度でいいや」となってしまうんですよね。こういった私のような初心者の方、多いと思います。

清水:それで言うと、サウナって実はどんなところにもあるんですよ。ジムのサウナ、スーパー銭湯のサウナ、地元の銭湯のサウナ……だからこそ悩んじゃうと思うんですけど、初めの一歩としてオススメするのはスーパー銭湯・リゾート施設みたいに、色んな設備が揃っているところに身を預けることですね。身体一つで行けるじゃないですか。

まずはそれをスタートに、そこから地元の人だけが知っているような銭湯サウナだったり、知る人ぞ知るマニアックなサウナだったりを自分で発見していくのが面白いと思います。

 

清水:お風呂もサウナも、行ってみなければわからないことだらけですし、オーナーの色によっても全然違いますから、「正解」はないと思っています。だからこそ「身体一つで楽しめる」は第一歩として大事かな、って。

―身体一つ……何も準備していかなくても楽しめたら最高ですね。

清水:「初心者が初めに行くべきおすすめのサウナを教えてください!」と同じくらいいただく質問として、「サウナっていつ行けばいいんですか?」というものがあります。

―タイミングも確かに気になっていました。勝手に夜なのかな、なんて思っていたのですが……一概にそうとは限らないのでしょうか?

清水:サウナって、時間帯で魅力が変わるんですよ。ジムに行って朝イチに入るサウナはシャキッとして気持ちいいですし、お昼出かけて1時間くらい空いたときにサクッと行くのもスイッチが切り替わるのが感覚的にわかってスッキリします。夜はもちろん、1日の疲れが取れる手軽なリラックスになりますし。時間帯の関係なさで言ったら、カフェ・喫茶店とかが実は近いのかもしれません。深く考えず、何時でもいいので行ってみるのがオススメです。

―ちなみに、清水さんがよくサウナに行くのはいつなのでしょうか。

清水:うーん……それで言うと、いつでも、です。それこそ、さっきの話は私の体験談ですし(笑) でも、逆に「いつでも入れるような工夫」はしていますね。

―いつでも入れるような工夫、ですか。常にサウナ道具一式を持ち歩くとか……ですか?

清水:いえ、実は「ジムの入会」なんです。私、全然運動しないんですけど、ジムに入っていて。ジムって、朝から開いている所が多いのはもちろん、月会費なので「多少”雑に”行っても罪悪感がない」ところが好きなんですよね。1回入ってぴゃっと出てもいいですし、1日に何回も行けますし。
 

―なるほど……たしかに「1回につき〇〇円」と聞くと、つい「元をとらなきゃ、ちゃんと入らなきゃ」みたいな発想になってしまう気がします。ジムのサウナの良さはわかったのですが、それでは他のサウナにはどういった良さがあるのでしょうか。
 

 

清水:ローカルな銭湯にあるサウナは、あらゆるところにあるからこそ「日常とつながっている感」が味わえます。例えるなら家みたいな……地元の方がたくさんいて、そういった方々のコミュニティがあって。旅行で知らない街に訪れるときも、その地に根付いて何十年、なんて銭湯に行けば街の雰囲気がわかると思っています。そういうサウナに行くと、その空間に満ちている情緒で心もあったまる感じがして幸せになりますよ。

何より、純粋に安いですよね。400円台で入浴出来て、そこにサウナ代が200~500円ですから、1000円あれば行けちゃいます。この手軽さも魅力ですね。

―地元の銭湯、行ってみますね!

清水:あと代表的なもので言ったら、最初の一歩としてもおすすめしたスーパー銭湯ですかね。スーパー銭湯って名物のごはん、いわゆる「サウナ飯」を楽しめるんですよ。家族とかで行っても楽しめて、サウナ以外も楽しめるのは最高ですね。

北欧フィンランドは、サウナの本場。自然と一体化して”ととのう”

―最近、北欧式のサウナが流行っている、なんて話も聞くのですが。

清水:あ、フィンランド式サウナのことですね。北欧のフィンランドは「サウナの本場」と言われていて、フィンランド式サウナは日本に昔からあるものとイメージが違うかもしれません。

―サウナにもいろんな形があるんですか。

清水:そうなんですよ。フィンランド式サウナって、熱い石にアロマの入った水をかけて水蒸気を発生させて、その蒸気と共に熱を楽しむんです。「ロウリュ」と呼ばれるものですね。

―あ、聞いたことあります!フィンランド式サウナと関係があったんですね。

清水:そうなんです。そして、タオルなどを振り回して蒸気をサウナ室内に攪拌するのが「アウフグース」です。テレビとかだと「熱波」と表されることも多くて、それを担当する「熱波師」がテレビで紹介されることもありますよね。

それに対して、昭和からあるような日本のサウナはカラッとしていて湿度があまりなく、純粋に熱を楽しむものが多いです。

―私、完全に「熱だけを楽しむ」ってイメージでした。

清水:「どちらがいい」と一概には言えませんが、蒸気を浴びるのも気持ちいいですよ。フィンランド式が増えて、サウナの楽しみ方が多様化してきた感じがして、すごく嬉しいです。

ちなみに、本場フィンランドではサウナを出てから水風呂、とは限らないんですよ。

―そうなんですね。サウナと言えば水風呂もセットだと思っていました。

 

清水:水風呂に入らずに、外気浴や湖に飛び込んだりしてクールダウンするんです。都会の真ん中にサウナが多い日本ではなかなか難しい、自然豊かなフィンランドだから出来ることですね。

でも、自然と一体化できるフィンランドのサウナに負けている、というわけではないと思っていて。日本のサウナでも外気浴が出来る場所があるというのももちろんですが、都会にいながら水風呂で休憩して”ととのう”ことができるって凄くないですか?

―それぞれに長所があるんですね。

清水:個人的には、外気浴も凄く好きなんですよね。季節を感じられるというか……基本的に、普段の生活では皆さん服を着て外に出ていると思うのですが、外気浴はそれから解放されるわけですよね。サウナで汗をかいた後クールダウンしたとき、不思議と五感って研ぎ澄まされるんですよ。

自然と一体化する感覚の中で「あ、いま春から夏に変わりかけだ、もうすぐ夏になるな」なんて気づけたりして。夜なら「星がきれいだな」とか、太陽・星などの当たり前すぎて気づけていなかったことに気づけるのが、外気浴の魅力です。”ととのう”にもそれぞれ違った魅力がありますね。

―清水さん、サウナの話題になったとき必ずと言っていいほど”ととのう”という言葉が登場しますよね。でも、あまりイメージが湧かなくて……どういう感じなのでしょうか。

清水:うーん……人によって違うかもしれませんが、私にとっての”ととのう”は「気持ちいい!」と思うだけでなく、それのおかげで心と身体が軽くなる感覚もセットになった状態です。サウナで身体が火照っていっぱい汗をかいたあと、外気浴をしたり水風呂に入ったりすると、身体が緊張状態になります。そこから少しずつ脱力していき、体全体がちょうどいい具合になるんです。

目を瞑るとふわふわするような、何も気にならないフラットな状態がなんとも心地よいんです。

グッズはいつかこだわりたくなるから、初めのうちは大丈夫

―サウナを楽しむグッズってたくさんありすぎて、何を買えばいいかわからないんですよね……清水さんの「これを持っておくのがオススメ!」というグッズはありますか?

清水:とっても言いづらいんですけど、私は普段特別なものを何も持って行きません!

―え、そうなんですか!こだわりグッズを数えきれないほど持ち歩いている、と勝手に思い込んでいました。

清水:いつも持ち歩いているのは、タオルや手ぬぐいを1枚だけです。あと、シャンプーやリンスがないところのために、それらがオールインワンになったものを小さなボトルに詰め替えています。

タオルを持ち歩くのも、こだわっているからというよりは、単にタオルを貸し出していない銭湯があるからです。サウナに入る時は身体に付いた水は拭いてから入りたいので、ミニマルで吸水性の高いリネン素材のタオルだけは欠かさずに持ち歩いています。
 

 

―サウナハットやサウナマットなどは特に持ち歩かないのでしょうか。

清水:「初めからサウナハットやサウナマットを買わなきゃ!」と肩に力を入れる必要はないと思います。例えばサウナハットって、熱が上に留まるサウナで頭を守るために使われるんですけど、なくてもサウナには入れます。

サウナフェスなどのイベントに参加するくらいサウナを好きになってくると、きっと「集めたい!」みたいなこだわりが自然と生まれてくると思います。その時に、サウナハット、サウナマット、テントサウナなどを気の赴くままに選べばいいんじゃないでしょうか。

特に車で持ち運べるテントサウナはキャンプブームとも密接に関わっていて、川沿いでキャンプをしながらテントサウナと自然を楽しむ方も多いです。

―初心者の段階で無理にグッズにこだわる必要がないというのが、よくわかりました。でも、私のような初心者が、テントサウナを買ってサウナフェスに参加するレベルとなるには、かなりの年月を要する気がします……

清水:サウナイベントといっても、たくさんの種類があります。例えば「アウトドア×サウナ」「音楽×サウナ」といったコラボもあって、「サウナは初心者だけどアウトドアイベント参加してみたい!」みたいな温度感で楽しめます。だから、サウナイベントに参加する人が必ずしもサウナマニア、というわけではないんですよ。
 

実はイベント向け?サウナは、無理して人と関わる必要のない空間

清水:それに、サウナって不思議な空間で、見ず知らずの人と入っても気まずくないからイベント向きなんですよ。

―サウナはイベント向き、ですか。初めて聞いたかもしれません。

清水:サウナって、ただ汗をかいたり、そこからクールダウンしたり、ととのいながら自分と向き合う空間です。周りにいる人とは、あくまでその場所を共有しているだけなんですよね。なので、「この空間にいる人と関わろう!」と頑張る必要がないんですよ。

だから、サウナイベントは一人で参加される方も多いですね。もちろん、結果的に他の参加者と仲良くなる、なんてケースはたくさんあると思うのですが。

―大丈夫と言われても、1人で参加する勇気はまだ湧きません……

清水:そういった方ですと、初めは知り合いのサウナーと一緒にサウナに行ってみるのがオススメです。なんて言えばいいでしょう、サウナって体験するとわかることがたくさんあるんです。例えば、私や周囲のサウナーがよく言うのですが、サウナって1回目のサウナ+水風呂よりも、その後に入る2回目の方が汗も出やすくてととのいやすいんですよ。

でも、それってサウナを体験していない人からすると、「1回入ってみたけど、全然汗も出ないし良さがわからなかったな、別に頑張る必要もないしもう行くのやめよう」で終わってしまい、心地よさを掴みきれないままサウナとの縁が切れてしまうんです。これってすごくもったいないじゃないですか。サウナーと行くと、「体験しないとわからない魅力」にたどり着きやすくなるのはメリットですよね。

清水みさとさんと文筆家の岩田リョウコさん、刺繍作家の小菅くみさん

―ちなみに、清水さんはどのようにしてサウナの魅力に気づかれたのでしょうか?

清水:大学1年の頃、今とは違って運動・ダイエットのためにジムに通っていました(笑)

ジムに行く時間が大学帰りの決まったタイミングだったこともあって、同じくその時間ジムによくいた人たちと仲良くなりました。その方々がルーティンとしてジムのサウナに入っていたので、お喋りしているうちに、流れでジムのサウナに入ってみたんです。そこで「サウナ入って水風呂入ったらきっと痩せるわよ!」なんて言われながら、その方々の真似をして入っていたら、凄く気持ちよくて。

―清水さん自身が、まさにサウナーのおかげでサウナの魅力に気づけた張本人なんですね。

清水:はい!そこからジム以外にも銭湯をはじめいたるところにサウナがあると知り、ふらっと立ち寄るようになりました。全員が裸でいるサウナは、皆同じ状態……ある意味平等なんですよね。

だから、普段無意識に取り繕っているような部分が剥がれるし、無理に喋る必要もないし、でも顔馴染みになったら「こんばんは」くらいは自然に口からこぼれて……自分らしく楽にいられる場所です。
 

―清水さんにとって、サウナはかけがえのないスポットなんですね。最後に、サウナに興味があるけれど一歩踏み出せない方々に、メッセージをいただけないでしょうか。

清水:はい。私は、サウナって数少ない「何も頑張らなくていい場所」だと思っています。私も、これを読んでいる皆さんも、きっと普段は何かしらで頑張っていると思います。そこから解放されて、「どうでもいいや~」なんて思える場所があるだけで、人生が楽しくなります。

食事・睡眠とは違って、サウナはなくても死にはしませんし、言ってしまえば「無駄なこと」です。でも、なくても生きていける余白の時間を1日の中に作ることって、常に何かすることを求められ続ける現代ではすごく大事だと思うんです。喫茶店やカフェでリラックスしようと思っても、つい手に持っているスマホやPCを触ってしまったり、本を読んだり……何かはしてしまうじゃないですか。

 

 

清水:でもサウナは自分と向き合うからこそ、本当に”何もしない”が許される特殊な空間なんですよ。目的地のない散歩、みたいな。

毎日頑張り続けている人ほど、人生に余白を作るには勇気が必要だと思います。でも、今までお話ししてきたように、足を運んでみるとサウナの魅力はすぐわかります。まずは「えいっ」と一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

―何もせずにいることって、やることが溢れている現代では難しいですよね……でもその手助けをサウナがしてくれるわけですね。改めてになりますが、本日はありがとうございました!

 

サウナとは、人生における余白で、何も頑張らなくていい場所。それはむしろ、今までのサウナのイメージを覆すものでした。清水みさとさんがせっかく背中を押してくれたわけですから、初心者の私も、まずは深く考えず、近くのスーパー銭湯のサウナに飛び込んでみようと思います。