夏のアイス、ちょっと寒い日にこたつで食べるアイス…いつ食べても美味しいアイス。あなたの好きなアイスはどんなアイス? アイスを研究し続けるシズリーナ荒井氏は、アイスになりたいと思っている。なぜそんなにアイスに魅了されるのだろうか。この記事を読んだあとは、あなたはアイスを買いに出かけるだろう。

 

アイスクリームをそのまま食べてはいけない理由

私は、1歳1ヶ月から現在に至るまでずっとアイスを食べ続けている。

だからどうしたと思われるかもしれませんが、気づいたらおよそ6万個以上ものアイスを食していたということ。

アイスを好きなのは私だけではない。その証拠に、2023年度の日本におけるアイスクリームの市場規模は6082億円と1年前より、9.9%も成長しており、2017年に5000億円を突破してから、わずか6年で1000億円も増加している。

出典:日本アイスクリーム協会「アイスクリーム類および氷菓販売実績」

私の場合、普段の生活からアイスを食べたいと思って食べているのではなく、気がついたらアイスを目の前にし、笑顔になっている。アイスを食べ終えキッチンへ向かうとシンク内にはすでに食べ終えたアイスの棒やカップが投げ込まれているが、自分の生活の中でアイスを食べることが日常すぎて、1日にアイスをいくつ食べたのか食べ終えたアイスの抜け殻を数え驚きながらもアイスを食べた量を把握する。こんな姿を親に見られたらアイスは1日1個までと注意されるんだろうなと思う40歳。

そんなこともありつつ、高校時代を振り返る。冷凍庫を開けていつものようにアイスを取り出そうとすると冷凍庫内にはアイスと並んで冷凍餃子や冷凍ハンバーグなど数々の冷凍食品と共存していることに気づいてしまった。

そこで、私はある過ちに気づいてしまった。アイスはキンキンに冷えたデザートではなく冷凍食品だったのだと。アイスにも正しい調理方法があるのではないかと自分なりに仮説をたててアイスを研究することになった。

 

 

飽くなき探究心こそ、自身がアイスになるための近道

まず初めに研究テーマの題材として、アイスクリームとソフトクリームの違いについて調べてみると、面白いことがわかった。

アイスクリームとソフトクリームはほぼ原材料が同じであるのに味わいや食感が違うということだ。さらにアイスの研究を進めると製品温度が違うことに気づかされた。ソフトクリームの全国平均製品温度がマイナス7度に対して、アイスクリームはマイナス18度以下だ。ちなみに、イタリアンジェラートの場合は、マイナス13度前後である。製品温度によって味わいのインパクトや食感が異なり、製品温度が0度に近づけば近づくほど味が濃く感じられる。数々のサンプルから導き出した結論として、人間の味覚センサー(味蕾)と温度の関係性に結びつけることに成功した。

つまり、マイナス18度以下の市販アイスを効率よくソフトクリームと同じ温度に上昇させる食べ方をいまだに研究している。

最初は、電子レンジを使用しアイスを瞬間的に溶かす研究を始めたがここで新たな気づきが生まれた。一度、溶けすぎたアイスは冷凍庫へ入れても元の状態には戻らなかったのだ。これは、人間関係と同じで一度亀裂が入った人間関係を修復するのは不可能に近いのとニアリーイコールだ。

アイスとは液体と油分を乳化させ、空気を入れながら冷やし固めたものであることを知り、一度、溶けてしまうと空気が抜けてしまうため固くボソボソとした食感になってしまい物性が違うものになってしまうのだ。そこで、私が次に目をつけたのは冷蔵庫。冷蔵庫は比較的どの家庭でもキッチンの番人となっている。この環境を利用し、アイスの溶け方を調べつくした結果、アイスは中心から溶けて行くことを発見し「コレだ!」と思った。

全てのアイスを冷凍庫から冷蔵庫に環境を移し替え、何分後にソフトクリームと同じ温度帯になるのかを家族が寝静まった後、夜な夜な冷蔵庫の前で温度計片手に孤独と戦いながら研究している。

 

 

市販アイスを極上な食感と味わいにさせる究極の食べ方とは

各コンビニで、いかにも柔らかそうな形をしているのにカチカチのアイスが販売されている。あのソフトクリーム状のアイスをみなさんは許せますか?

「私は、許せません」

従って、真っ先にソフトクリームのような形をしたアイスを“唇が喜ぶような”まるで搾りたてのソフトクリームの食感にさせるための研究をし尽くした結果、冷凍庫から冷蔵庫に移して60分じっくり解凍させることで、ソフトクリームのような食感と味わいにさせることに成功した。ここでのポイントは、冷蔵庫内の環境温度はマイナス4度前後であること。それから、ソフトクリームの形をしたアイスをコップなどに入れ立たせながらじっくり解凍させることだ。

私は、ソフトクリームのような食感の市販アイスを食べた瞬間、口元が緩み“コレだ”と思った。

私は、学生時代に東京・中野にある「なかの芸能小劇場」で開催されているお笑いライブによく通い、 お笑い芸人さんのネタを見て生きる勇気や希望をもらっていた。 私も違ったカタチで多くの人を笑顔にさせたいと思い、ある時こう思った。

アイスは人を幸せにさせる食べ物だ。アイスを怒って食べる人をいまだに見たことがない。どんな人も笑顔にさせてしまう不思議な力を持つアイスは最高のエンターテナーだ。だから、私はアイスになりたい。