子供の頃の「魔女っ子おもちゃ」に対する想いは今も変わらず......いや、今の方がもっと! 特別な出会いではなく、子供の頃の“好き”が地続きで続いているという正真正銘の魔女っ子おもちゃ好き、ちずるさん。後編では、前編で語り切れなかった“近年の魔女っ子おもちゃの変貌”から“韓国の玩具事情”まで。ちずるさんの留まることのない魔女っ子おもちゃへの愛を余すことなくお届けします。

前編はこちら

 

 

前編では、魔女っ子おもちゃへの想いや歴史の解説、そして魔女っ子おもちゃ誕生の1980年代から順を追って玩具の変貌をお届けしてきました。後編では、現代まで続く“魔女っ子おもちゃ新時代”の玩具をご紹介します。

 

2010年以降編 <懐かしさと新しさがミックスされた新時代>の到来
2010年「ハートキャッチプリキュア!」より変身アイテムがデジタルデバイス型ではなくなりました。これには衝撃を覚えたことをいまでも鮮明に覚えています。

 

「ハートキャッチプリキュア!」の「ココロパフューム」

コスメモチーフである香水型へと変わりました。

この辺りでスマートフォンが普及され始め、ガラケーがトレンドアイテムではなくなってきます。

しかしその後プリキュアシリーズは「変身スマホ」には転がらず、2011年「スウィートプリキュア♪」の変身アイテムではメッキ加工が部分的に施されたハート型アイテム、「変身ブローチ キュアモジューレ」、2012年「スマイルプリキュア!」の変身アイテムでは「カラフル変身! スマイルパクト」と展開。……そうです。懐かしの魔法のコンパクト型が帰ってきました!

 

「スマイルプリキュア!」の「カラフル変身! スマイルパクト」

個人的には「ハートキャッチプリキュア」の「ココロパフューム」と、「スマイルプリキュア」の「スマイルパクト」は魔女っ子おもちゃの中でも名作中の名作だと考えています。

 「ココロパフューム」は「こころの種」というパーツをセットすると、組合せにより光で表現された香水の色が変わるのです。

 

グリーンの種+レッドの種でイエローの香水が出来上がる!

これがお子さんの心にも響いたようで、「ハートキャッチプリキュア」は現在プリキュアシリーズの中でも1番の売上記録を誇っています。
意外なことに、当初プリキュアシリーズにおいて象徴的アイテムだったデバイス型のアイテムが展開されたシリーズが売上1位というわけでは無いんです。

スマイルパクトは何十種類も存在する「デコル」というパーツをセットするとそれぞれ音声が楽しめ、パフの光る色も変わるギミックが搭載されていました。

 

「スマイルプリキュア!」の変身アイテム「スマイルパクト」

このスマイルパクトは10万個売れたという逸話があります。
“子供の目”は確かであり、作り手の本気が垣間見えるアイテムはしっかりと記録を作れることを実感しました。

プリキュアシリーズ全盛期の裏では「プリティーリズム」「ジュエルペットシリーズ」「リルぷりっ」といった作品が展開されていました。

「リルぷりっ」のステッキ「デコッてセプター!」は筐体ゲーム機でタッチペンとして使用できます。この辺りから本格的に筐体ゲーム機と連動する玩具が増え始めます。

 

「リルぷりっ」の「デコッてセプター!」

スマイルプリキュア翌年(2013年)「ドキドキ!プリキュア」では変身玩具がデジタルデバイス型に回帰し、指で画面をなぞって変身する「ラブリーコミューン」が発売されました。

 

「ドキドキ!プリキュア」の「ラブリーコミューン」

液晶画面は搭載されていませんが、何となくスマホ気分を味わえる上に3,990円と低価格でお求めやすいのも魅力的。それぞれの妖精顔パーツを物理的にセットしてキャラクターを変更することが出来る点も楽しいです。

その裏で、2013年8月遂にカメラ付きスマホ型玩具がプリキュアシリーズではなく、プリティーシリーズの3作目「プリティーリズム レインボーライブ(2013年4月開始) 」より登場します。

 

「プリティーリズム レインボーライブ」の「スマートポッドショット」

7千円越えとちょっとお高いですが、スマホ感はこちらの方が断然高め!

液晶付スマホ型玩具はこのように少々高額になってしまう為、プリキュアシリーズではあえて変身アイテムには据えずミラー型、香水型、ぬいぐるみ、コンパクト型と続いていきます。

バトルヒロイン系作品のプリキュアとは異なり、アイドル系作品のプリティーシリーズはその後も高性能なスマホ玩具をメインで展開していきます。

 

「キラッとプリ☆チャン」2期目の「デザインパレット」

こちらは「キラッとプリ☆チャン」2期目で発売した「デザインパレット」という名の液晶玩具。このおもちゃで作ったコーディネートを筐体ゲーム機でスキャンして遊べるというすごい液晶玩具です。

バンダイのプリキュアシリーズがバトルヒロイン作品として強すぎて、似たような女児向番組が長らく作られてきませんでしたが2017年、突如としてタカラトミーの女児向け特撮「アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず♪」が放送開始しました。総監督はあの有名な三池崇史監督。

 

プリキュアでは避けられてきた液晶トイでの変身アイテム「ミラクルポッド」(しかもメッキ塗装)

最初は斜に構えてプリキュアの実写かな? とかそんな気持ちで視聴していましたが、キレッキレの歌とダンス、5種ものフォームチェンジ(戦闘衣装替え)など何もかもが本気で、真剣に子供達を喜ばせたいという熱い気持ちが伝わってくる作品でした。
 

おもちゃもすごい!! 触れると下から発光するメッキ塗装ステッキ

 

触れるとLEDが灯る「ミラクルタクト」

後期に登場するパワーアップしたステッキのグラデーション発光は美しく、全ステッキ玩具の中でトップでは? と個人的に思っています。

グラデ発光が美しい「ファイナルチューンタクト」

「ミラクルちゅーんず!」は特撮作品である強みを生かし、全国の商業施設でのライブは大盛況。以降「ガールズ×戦士シリーズ」として展開されることになりました。


次作の「魔法×戦士マジマジョピュアーズ」のおもちゃもすごい!

 

「魔法×戦士マジマジョピュアーズ」の玩具

90年代のキラキラメッキ玩具が再来!
しかも、ペンダントパーツを近づけると反応する電子タグが搭載されており、おもちゃ本体に近づけるだけで各キャラクターへの変身遊びが楽しめます。
これはとても革新的な試みで、従来の玩具にはこのように読み取り部の造形がありましたがマジョマジョ玩具には無いんです。

 

 

マジマジョピュアーズのおもちゃといえば、ステッキに液晶が仕込まれ、動画再生がされる超絶ハイテクステッキ「マジョカアイリス」も記憶に残りました。

液晶画面が2つも搭載されている「マジョカアイリス」

ステッキに液晶画面を搭載しているという前代未聞の超玩具。
魔法のエネルギーが液晶に映し出され、本当に魔法を使っているような感覚を得られる面白いおもちゃです。すごいシリーズが来た……! と思いましたが「ガールズ×戦士シリーズ」は5年で一旦の幕引きとなりました。

要因は色々考えられるのですが、私的にはコロナ禍様々な制限が掛かり商業施設でのライブが出来なくなった事などが要因に上げられるのでは……? と勝手に考察しています。

手が込んだ名作良品魔女っ子おもちゃが売れているとも限らない厳しい世界。

 

「ミュークルドリーミー(2020年開始)」のコンパクト&ステッキは5か所も、しかも色んなカラーで光るという豪華なおもちゃでした。

「ミュークルドリーミー(2020年開始)」のコンパクト&ステッキ

しかしこれらのおもちゃが番組終了後に割安で量販店にて販売されていたところを見ると、かなり苦戦していたようです。

玩具オタクとしては手の込んだおもちゃには沢山売れて欲しいし、作品共々応援したいという気持ちが強いのですが大人の感性と子供の感性は全く違うようで、結果が伴わないケースも多々見受けられます。
「子供を楽しませ、おもちゃも買ってもらえる作品」、結果を出すということはとても大変な偉業なんだと感じました。こんな難しい女児玩具市場で20年続いているプリキュアシリーズって化け物みたいなコンテンツだという事ですね。

2023年、プリティーシリーズやガールズ×戦士シリーズが終わってしまい、遂に魔女っ子おもちゃを輩出する番組はプリキュアシリーズのみになってしまいました。

プリキュアシリーズ20作目の「ひろがるスカイプリキュア」の変身アイテム「スカイミラージュ」は、「バーサライタ」というハイテクギミックを搭載していて、球体内部のパーツが高速回転し、光が模様に見えるすごいスティック型アイテムです。

 

左:「スカイミラージュ」 右:「ワンダフルパクト」

そして2024年現在放送中の「わんだふるぷりきゅあ!」では王道のピンク色のコンパクトに回帰。魔法のコンパクト玩具で育った世代が親になり、子供にも同じものを与えることが出来るようになりました。

魔女っ子おもちゃには、その時代の背景や子供たちの憧れのアイテムが反映されていることがよく分かります。

どの時代の魔女っ子おもちゃが一番素晴らしいのかと考えますが、“誰もが子供の頃の思い出のおもちゃが一番好き”という状態、そんな状況であり続けることが一番望ましいと思っています。ちなみに私は90年代メッキ玩具に一番思い入れがある世代なので、現代にメッキ仕様の玩具が出ると嬉しい気持ちになります!

 

大人向けの復刻玩具と、当時の玩具を再現した復刻玩具

2013年からセーラームーンの20周年を皮切りに女児向作品の復刻が開始されました。

 

 

当時のおもちゃが大人向けにコスメや文具、アクセサリーとして展開したり、本格的大人向け造形ブランド「PROPLICA」から大人のコレクター向け玩具が発売されたり。

大好きな作品のアイテムをリアタイで購入できることが嬉しくて嬉しくて。当時の玩具に近いものを厳選し購入していましたが、やはり大人の女性に向けたリメイク品は何だろう……当時の玩具が大好きだった玩具オタクの自分が求めている物とどこかが違うような……。いや、大半の女性はコスメなど実際に使える日用品の方が欲しいと分かっているつもりです。でもこれでは何かが足りない。こんな気持ちを抱くことは贅沢なんだろうか…嬉しさの反面、私が本当に求めていたときめきの種類ってコレだったのだろうか? と感じることもしばしばありました。

大人の女性に向けた復刻事業が始まって10年経った2023年、そのシリーズは彗星のごとくバンダイの通販サイト「プレミアムバンダイ」に出現しました。その名も「Special Memorize(スペシャルメモライズ)」。
当時の思い出の玩具を「玩具として」再現するというコンセプトでどれみ一期の変身アイテム「みならいタップ」をSpecial Memorizeシリーズから発売するという告知がありました。
商品紹介には当時の玩具「どれみタップ」ギミックへのリスペクト、そしてパワーアップした発光ギミックや演出、アニメOP曲も搭載されているということ。
私みたいな数少ない限界女児玩具オタクをピンポイントで狙ってきている商品。心が踊り、速攻予約したことを覚えています。そして驚くべきことに、この「Special Memorizeみならいタップ」は速攻で売り切れてしまいました。限界女児玩具オタクってこんなに居たのか? と不思議に思ったのですが、みんなコスメや雑貨よりも玩具の方が欲しかったって事なのではないでしょうか?

 

 

実際届いて遊んでみると、最高という感想以外出てこなかった。

その後もSpecial Memorizeシリーズより、復刻して欲しかった商品がバンバン予約開始されました。
特に嬉しかったのは「マーメードメロディーぴちぴちピッチ(2003年)」の変身コンパクト「アクアピッチ波音版・リナ版」です。
2003年当時、タカラより主人公・るちあのピンク色アクアピッチしか発売せず、水色の波音版・緑のリナ版は毎週画面に映っているけど玩具化されてない夢のアイテムだったのです。

リメイクだけではなく当時売ってなかったアイテムを20年越しに商品化してくれて感激しました。
Special Memorizシリーズは当時から玩具が好きだった根強いファンの需要にしっかりと応えてくれていると感じます。

 

 

当初の復刻に感じた違和感の正体は、おもちゃをコスメや小物入れにアレンジしたら大人でも使えるでしょ? とか、大人向けなら造形をもっと精工にして本格仕様に……などの大人がおもちゃを買うのに必要な大義名分を立てていた点なんですね。復刻の純度を落とす「大義名分」など玩具ガチ層にとっては不要なので、これらは別の層に向けた復刻であり、それ故に何か物足りなさを感じていたのです。

長々と何が言いたいかというと、純度の高い玩具復刻最高! ということです。大人魔女っ子おもちゃコレクション始めるならSpecial Memorizeシリーズが展開している今が一番恵まれていると思います。
Special Memorizeシリーズはプレミアムバンダイで展開されており受注販売方式なので気になったら早めに購入しましょう。

 

「魔女っ子おもちゃ」の愛で方

前編の私の思い出のおもちゃにもあげた「どれみタップ」は、非常に変色しやすい玩具でして、黄ばんでオレンジ色になってしまいます。そこで予備で購入していた中古のどれみタップを使い、黄ばみを戻す実験をしてみました。

 

 

漂白剤に漬けて日光に当てるというものでしたがメッキが溶けてしまい、その箇所をメッキテープ(当時100均で売ってたキラキラテープ)で切って貼って再現し、それがめちゃくちゃ大変だった記憶があり、この思い出も含めとても印象深いアイテムになりました。

しかし、紫外線で大切な玩具が変色してしまうのは避けたいので、普段は段ボールに入れて保管し、たまに取り出して癒されています。

 

そして私は玩具を組み合わせて撮影することが好きです。

例えば星モチーフのファンシーアイテムの集合だったり

 

涼し気でカッコいい感じの色合いのものを合わせてみたり

 

マジカルなおとぎの国の物語が始まりそうな雰囲気のアイテムを寄せ集めてみたり


作品の垣根を越えてアイテムがゴロゴロと集合していると、子供の頃のおもちゃ箱の中を思い出し、滅茶苦茶ときめきます

 

今後の「魔女っ子おもちゃ」

最近気になっているのは韓国の魔女っ子おもちゃ。

日本ではすっかり少なくなったキラキラメッキの魔女っ子おもちゃが海の向こうでは元気に展開されていました。衝撃です。しかも王道の可愛いデザインのものが多く、個人輸入してしまうほど魅力的です!

 

個人輸入した「キャッチ!ティニピン」4期のおもちゃ

 

特に大注目なのは「キャッチ!ティニピン」という作品のおもちゃです。
最近日本でもこの作品が放送され、おもちゃも発売されないかと期待していましたが、色々と障壁があるのか日本ではおもちゃの展開はされませんでした。
残念。いつか日本でも「キャッチ!ティニピン」のおもちゃが発売する日を信じて心待ちにしています。

もう一つは2022年にアニメが一旦終了し、今年4月より再始動したプリティーシリーズの最新作「ひみつのアイプリ」も気になります。今のところ電動ギミックが付いたおもちゃは発売されておらず、ゲーム機と連動するキッズコスメが展開されており、どれもメッキがキラキラ! 今後もコスメのみが出続けるのか……それともおもちゃが出てくれるのか……わくわくが止まりません!

魔女っ子おもちゃから自然に卒業した皆様のように、私も情熱が消えたらスッパリ魔女っ子おもちゃから卒業しよう、自然に生きるのが一番と考えています。しかし、こんなことを考え始めてから6年以上経っても卒業するどころかどんどん深みにハマってます。毎年新作が出るし、昨今のコストカットにより数年前のおもちゃがより良いものに見えたり、海外製品にまで視野が広がったりと、時と場所を超越し、ときめきを届けてくれる魔女っ子おもちゃが私を飽きさせてくれません!この沼最高~!