子供の頃の「魔女っ子おもちゃ」に対する想いは今も変わらず......いや、今の方がもっと! 特別な出会いではなく、子供の頃の好きが地続きで続いているという正真正銘の魔女っ子おもちゃ好き、ちずるさん。現在も時代とともにアップデートされ続けている玩具の“時代による変化考察”から、独自の“愛で方”まで。子供も、大人も虜にする魔女っ子おもちゃの魅力を前後編にわたり、たっぷりと語り尽くします。
子供の頃に魔法のステッキやコンパクト、光るドレッサーなどを買ってもらって、嬉しかった記憶のある方や買ってもらえず悲しい思いをした方。おもちゃに対しての思いは人それぞれで、中には思い出のおもちゃを“鮮烈に”覚えている人もいらっしゃると思います。
でも、おもちゃに興味や関心、執着が無くなったり、手放したり、卒業したりしたキッカケには“鮮烈さがあまり無い”ような気がします。
数年前に執筆した魔女っ子おもちゃのコラムの感想に「昔同じおもちゃを持ってた」「実家を探せばまだあるかも」「確か親戚にあげた」「フリマで売った」などの感想が寄せられ、普通はみんな魔女っ子おもちゃから卒業し、脳内からフェードアウトするものなんだ……と痛感した記憶があります。
しかし、私は魔女っ子おもちゃ好き卒業のタイミングが訪れず、社会人になってもその魔法は解けないまま、地続きで魔女っ子おもちゃを愛し、収集を続けています!!
魔女っ子おもちゃ好きを卒業しない! と決意した一品
中でも私にとって特に思い入れが強いおもちゃは「美少女戦士セーラームーン」の変身ブローチの玩具版「ピンクなネイルグロス」です。
祖母が買ってくれた特別なおもちゃで、付属のイヤリングなどは紛失してしまいましたがコンパクト本体は今でも大切に保管しています。
続いて、「おジャ魔女どれみ」の1期目の変身アイテム「どれみタップ」。
このおもちゃは、私はおもちゃが好きだからこのままでいようと決意を固めた頃に欲しくなった一品です。その時は既に1期目のアイテムがお店から姿を消していて、入手が非常に難しかったと記憶しています。両親が遠出した際にフラっと立ち寄った玩具店に残っていたようで、どうにか新品をゲットすることが叶いました。
もし自分が子供だったとしたら、途中で諦めたり、別のものに興味が移っていたことでしょう。粘り強く時間をかけてどれみタップを入手したことによって自分が「大人としておもちゃが好き」であることを自覚できました。
子供のようにいつかおもちゃを卒業してしまうことも無いのだから、おもちゃを好きでいる限りこのまま大人の玩具ファンでいようと思った思い出の一品です。
現に20年位前の魔女っ子おもちゃは非常に人気が高く、マニアの間で高値取引されており現存する数少ないコンディションの良い良品が、金に糸目をつけない頂点レベルのコレクターの間を流通するだけという状態が続いています。
そしてほとんどの場合、新規さんは自分が育ってきた思い入れの強い時代の玩具にのみ興味があり、現在放送している「プリキュア」や「プリティーシリーズ」の玩具にはあまり興味無いというケースが多いです。
先に述べた通り、当時の玩具は高値取引されているので購入できず、気軽に一歩目を踏み出せないので魔女っ子おもちゃコレクターへの道は間口が非常に狭いものになっています。これでは大人の魔女っ子おもちゃファンは増えにくい。ガンダムや仮面ライダーといった男性向けコンテンツと異なり、女児向作品のおもちゃは大人のファンが滅茶苦茶に少ないことはまんだらけのフロア面積の少なさからもよく分かりますね。
原作<おもちゃ
魔女っ子おもちゃとは女児向番組内で登場する重要な役割のあるアイテムの「なりきり玩具」です。簡単に説明すると魔法のステッキ、魔法のコンパクトといったおもちゃ製品。
現状では「わんだふるぷりきゅあ!」や「ひみつのアイプリ」から関連製品が発売されていて、これからどんなおもちゃが出るのかワクワクしながらこの2作品を視聴しています。
……そうです。私のような「玩具オタク」は“作品のファンだからおもちゃを買うのではなく、どんなおもちゃが展開するのか楽しみだから作品をチェックする”という通常とは逆の状態が起こっているのです。
魔女っ子おもちゃを輩出した主要な作品は「美少女戦士セーラームーン」「おジャ魔女どれみ」「東京ミュウミュウ」「ぴちぴちピッチ」「ガールズ×戦士シリーズ」「カードキャプターさくら」「ミュークルドリーミー」「プリパラ・キラッとプリチャン(プリティーシリーズ)」などなど。
この辺は平成末期~令和で動きがあった作品です。
プリパラやプリキュアなどの作品の玩具
他にも「シュガシュガルーン」「明日のナージャ」「夢のクレヨン王国」「怪盗セイント・テール」など、有名な作品は山ほどあり、挙げたらキリがないです。
鋭い方はお気づきかと思うのですが、ほとんどの作品は“魔女っ子もの”ではありません。では何故「魔女っ子おもちゃ」なのか、魔女っ子アニメの歴史と共に解説させて頂きます。
魔女っ子おもちゃの歴史と定義(解説・ちずる)
女児向けアニメ内で登場したアイテムの玩具化の「元祖」ともいえる魔女っ子おもちゃは、東映魔女っ子シリーズ2作品目「ひみつのアッコちゃん(1969年1月開始)」の中嶋製作所製「ひみつのかがみテクマクマヤコン」だと思います。ちなみに東映魔女っ子シリーズ1作品目の「魔法使いサリー(1966年12月開始)」は、日本初の少女向けアニメで、素手で魔法を使用しており、アイテムは使っていないようです。同時期の特撮作品「コメットさん(初代)」に関しては、魔法を使う際にバトンを使用しておりますが玩具製品は確認出来ず……。
このように初期はおもちゃが販売されるものもあれば、そもそも作中にアイテムが登場しないもの、作中でアイテムが登場しても正確におもちゃの販売情報をつかめないものなど、作品とおもちゃの販売はまだまだ結びついていません。
まんだらけ情報によると、正式にタイアップ形式になったのは1979年2月開始の「花の子ルンルン」のポピー製「魔法のかぎペンダント」から。現代まで続く作品と玩具の協力体制はここから始まったようです。同時期には特撮作品である「大場久美子版 コメットさん(1978年6月開始)」のバトン型アイテム「コメット棒」も発売していました。
1980年、東映魔女っ子シリーズ最終作「魔法少女ララベル」では「クルクルステッキー」を発売。82年「魔法のプリンセスミンキーモモ」の「ミンキーステッキ」、更に83年「クリィミーマミ」などの「ぴえろ魔女っ子シリーズ」へと受け継がれて行きます。
その後は東映のバトル系特撮「魔法少女ちゅうかなぱいぱい!」、そして「美少女戦士セーラームーン」「おジャ魔女どれみ」「プリキュアシリーズ」と続いて行きます。
歴史の解説を終えたところで……突然ですがクイズです!
この6本の可愛いステッキの中には「戦闘用アイテム」のステッキが1本あります。そのステッキはどれでしょうか?(ちなみにその1本は強いキメ技や合体技などが放てるという性能を持っています)
……恐らく、女児向アニメに詳しくない方はどれがバトルヒロインの戦闘用ステッキで、どれが魔女っ子のステッキなのかの区別がつかないと考えられます。
ここが“魔女っ子ではない作品のアイテムも「魔女っ子おもちゃ」であると呼べるポイント”なんです。
では何故、魔女っ子ではない作品のアイテムも「魔女っ子おもちゃ」と呼ぶのか、その理由を紐解くには、玩具主体で考えるとわかりやすいと思います。東映特撮シリーズやセーラームーン、プリキュアなどのバトルヒロイン作品は魔女っ子のステッキやペンダントを戦闘用アイテムとして使用し始めただけで、アイテム自体の“根幹は”魔女っ子作品が作り上げてきた「魔女っ子のおもちゃ」なのです。
ですので不思議な力の要素が一切無い「レディレディ!!」「ハロー!レディリン」「明日のナージャ」、そして仮想現実でのアイドル作品であるプリパラ(プリティーシリーズ)で登場するアイテムも女児向けアニメ内で登場したアイテムをタイアップで玩具化したもの、という点で「魔女っ子おもちゃ」と認識しています。
以上を踏まえ押さえて頂きたいポイントは、魔女っ子か、魔女っ子ではないかに関わらずステッキやコンパクトなどのなりきり玩具そのものはすべて、正真正銘「魔女っ子おもちゃ」であるという点です。
解説を終え、お待ちかねのクイズの正解をお伝えさせて頂くと……
右から2番目「Go!プリンセスプリキュア」の「クリスタルプリンセスロッド」でした。こちらは正真正銘の戦闘用アイテムで、最後の戦いでボッキリ折れてしまうというショッキングな展開になったステッキです。
長くなりましたが
以上、私が勝手に考えている「魔女っ子おもちゃ」の歴史と概要でした。
こうして、意外と長い歴史がある魔女っ子おもちゃには年代ごとにも特徴が見られます。次はその特徴を年代別で細かく解説していこうと思います。
歴代の魔女っ子おもちゃと追う「子供の憧れアイテム」の変貌
1980年代編 <キャラ顔主張ファンシー時代>
私が所持している最古の魔女っ子おもちゃ、83年放送の「クリィミーマミ」のステッキがこちら。
「魔法の天使クリィミーマミ」の「クリィミーステッキー」
キャラのシールがバーン! と貼られていることが特徴的。
作中のステッキにはマミのシールがステッキに貼ってある描写は無く、これだとなりきり度が少し落ちてしまうのですが、マミ大好きのお子さんはマミのイラストも好きだろうという親切心で貼ってある……ということでしょうか。
80年代の魔女っ子おもちゃは「シンプルなデザインにファンシーな色合い+キャラのシール」が貼ってあることが特徴的と言えます。
こちらが最近リメイク復刻された、より作中に近いデザイン版です。
この通り、キャラのシールはありません。
なりきりアイテムにキャラシールやレリーフ、作品のタイトルが貼られている玩具はタイアップ初作の「花の子ルンルン」から92年版「ミンキーモモ」まで続きました(初代69年版「ひみつのアッコちゃん」のコンパクトにもキャラのシールが貼ってありますが正式なタイアップ作品では無いので除外致します)。
大ヒットした89年版「ひみつのアッコちゃん」のコンパクトの場合、本体側には顔シールは無く、内部のミラーに変身後のイラストシートをはめ込むという仕様でした。90年「魔法のエンジェルスイートミント」、92年「花の妖精マリーベル」と徐々になりきりアイテムからキャラシールが消失し同年「美少女戦士セーラームーン」以降、ほぼ全ての作品からシールが消失しました。
左:キャラシール有り92年版「ミンキーモモ」のミンキーモモステッキ 右:シールの無い92年「花の妖精マリーベル」のマリーベルステッキ
1987年~2003年編 <キラキラ金メッキ時代>
景気が良かったバブル時代。
おもちゃにもキラキラ金メッキ時代が到来し、バブル崩壊後もこの流れは継続されました。
この時代を象徴する作品は「美少女戦士セーラームーン」の玩具だと思います。
「美少女戦士セーラームーン」の玩具
セーラームーンの大ブームによりバトルヒロイン作品が増え始め、どの作品の玩具もキラキラの「メッキ塗装」が施されます。
原作では変身しない「赤ずきんチャチャ」は、アニメ化するとキラキラの弓矢「ビューティーセレインアロー」で戦うマジカルプリンセスに変身。「怪盗セイント・テール」は原作には存在しないキラキラのコロンペンダントで変身、赤い宝石の付いた金メッキのステッキでショータイムして窃盗犯を懲らしめたりします。
「赤ずきんチャチャ」の玩具
この時期は魔女っ子おもちゃブームが過熱し、同時に何社からも魔女っ子おもちゃが発売されました。
例えば95年後期なんて「美少女戦士セーラームーンss」「ナースエンジェルりりかSOS」「愛天使ウェディングピーチ」「怪盗セイント・テール」が重なっています。
一般家庭のお子さんはどれも欲しいけど全部は買ってもらえない……どれを諦めるか選択する必要があったと思います。
セーラームーンが終了しバトルヒロインブームが落ち着いた頃、99年に「おジャ魔女どれみ」がスタート。魔女っ子作品が帰ってきました。
「おジャ魔女どれみ」の玩具
どれみは大人気作品となり4年間放送が続き、その後2003年には「明日のナージャ」がスタート。
「明日のナージャ」の玩具
細かい装飾が施されたアンティークなデザインは玩具製品においてロストテクノロジーの域に達しており、最近復刻されることになったナージャのハート型ブローチの開発秘話によると現代で同じものを再現するのが非常に難しかった、とありました。
2004年~2009年編 <デジタルデバイス時代>
2004年にスタートしたプリキュアシリーズ初代「ふたりはプリキュア」よりデジタルデバイス型の玩具が大人気となり、主流へと移り変わっていきます。
プリキュアシリーズは普通の女の子が変身し仲間と共に悪者をやっつけるという王道のバトルヒロイン作品です。
こちらが「ふたりはプリキュア」変身アイテムの「カードコミューン」(この写真のものはリメイクされたカードコミューン)。
当時品は白黒液晶が搭載されており、カードをスラッシュし変身遊びができるという玩具で発売後品切れてしまう程の大人気アイテムでした。玩具オタクとして青二才だった当時の私は金メッキへの執着を捨てきれず、デジタルデバイス型のアイテムに抵抗を感じ購入せず……。リメイク品との比較用に当時しっかり買っておけば良かったと今更後悔しています。
その後も2009年までデジタルデバイス型玩具が展開され、人気を博していきます。
2006年「ふたりはプリキュア Splash Star」の変身アイテムはカードをスラッシュ……ではなく、回転させて読み込ませるミックスコミューン。
「ふたりはプリキュア Splash Star」のミックスコミューン
2007年「Yes!プリキュア5」デジタルウォッチ型の変身アイテム「ピンキーキャッチュ」。2009年、5年目の「フレッシュプリキュア!」は携帯手帳型。
「Yes!プリキュア5」のピンキーキャッチュ
一応、プリキュアシリーズの裏でメッキ玩具も頑張っておりました……。
2005年「ふたご星のふたご姫」「シュガシュガルーン」。
「ふたご星のふたご姫」のロイヤルサニーロッド
「シュガシュガルーン」のルーンハートペンダント
いずれもプリキュア程の爆発的ブームは起こりませんでしたが、玩具は名品であり作品としてもとても面白いのでオススメです。
そして2010年より、今現在まで続く新たな時代が始まっていきます。後編では、記憶に新しい2010年以降の玩具の変貌から、復刻玩具まで。まだまだ移り変わる魔女っ子おもちゃの変貌に迫っていきたいと思います。