街を歩いていると、ふと店先で出会うぬいぐるみ。
彼らはお店のディスプレイではなく、“店番”として働いているのだという。
街中で出会った「店番をするぬいぐるみ」の観察と記録を続けるごめが語る、『店ぬい』の世界のお話。
誰もが見かけたことがある『店ぬい』
あなたは、お店の前に座るぬいぐるみを見た事がありますか?
この質問に「あ~!いるよね!」となった方は多いはず。
お店の前や入口、レジの横、特設コーナーでディスプレイされたぬいぐるみたち。
私は店番をするぬいぐるみたちを『店ぬい』と呼び、観察や写真に収める活動をしています。
看板を持って開店時間を教えてくれたり、おすすめメニューを紹介してくれたり…かと思えば何もせずのんびり座っていたり。よく見ると彼らのスタイルもさまざまです。
活動を続けていくうちにジャンルや会える場所も少しずつ分かってきました。
今回はそんな私の心を掴んで離さない『店ぬい』の魅力と種類をご紹介できればと思います。
「ぬいぐるみ」らしからぬ衝撃の姿
初めて撮った店ぬい
散歩中に見つけたハンバーガー屋さんの店先。ぬいぐるみのくまさんがうたた寝しながら座っていました。
首に下げたメニューもすごい角度で傾いており、今にも落ちてしまいそう。
今まで“ぬいぐるみ=キラキラした可愛さ”というイメージで生きてきた私は衝撃を受けました。
「なんて自由なんだ…!」
このマイペースでゆるい姿に一瞬で心を奪われ…その日から店ぬいたちを追うようになったのです。
愛が溢れて制作した本とグッズ
店ぬいを夢中で探し続け、気付けば7年目。
最初は1人で楽しんでいたけれど大好きな気持ちが溢れてしまい、2018年からtwitter(現・X)を開設。写真集やグッズを作ってイベント参加を始めました。
今も私にとって生活の一部であり、大好きな物のひとつ。それが『店ぬい』です。
ただそこにいるだけではない『店ぬい』の存在理由
『店ぬい』の魅力とは、ふと考えてみました。
まず、とにかく可愛い。ぬいぐるみというだけで最高なのにお仕事もしているなんて…健気な姿にときめきが止まりません。
大きいぬいぐるみも小さいぬいぐるみも種類も関係無し。のんびり働く姿は見ているだけで笑顔になれる存在です。
健気すぎる
次に、店員さんとの関係も好きなポイントです。
ぬいぐるみがそこにいるということは、お店の方が飾ったということ。そして服を着ている子は店員さんが着替えを手伝ったという事で…。背景を想像すると暖かい気持ちになれます。
おそらくほとんどのお店は営業する上で店ぬいがいなくても成り立つはず。
けれど〝いる〟と嬉しいし癒される。その遊び心も惹かれる理由のひとつです。
そして、最後にもうひとつ。
店ぬいは景色に溶け込むのがとっても上手です。のんびり歩いていると見落としてしまうことも。
それなのに「探そう!」と目を凝らすと見つからないのもあるあるです。
かくれんぼ名人
なので予想外の場所で偶然出会えると、さながらリアル「ミッケ!」「ウォーリーをさがせ」を遊んでいる気分。
私は店ぬいに出会ってから散歩が100倍楽しくなりました。
街中で頑張る『店ぬい』を分類してみた
いろいろな店ぬい
店ぬいはたくさんの種類がありますが、今回は特によく見かける6タイプをご紹介します。
こちらはほんの一部であり、店ぬいの種類は無限大。複数タイプを兼ねている子もいます。
見かけた際はぜひ「どのタイプかな?」とチェックしてみてください。
●オーソドックス系
おそらくみなさんがパッと思いつく店ぬいといえばこのタイプではないでしょうか?
「OPEN」「Welcome」「SALE」など、看板やパネルでお店の事を教えてくれます。
真面目に働く店員さんタイプです。
●お店とリンク系
店名やお店の種類に関連するタイプです。(例:くまの○○、うさぎ歯科 etc.)
また、スポーツショップや保険の相談窓口で公式キャラクターのぬいぐるみを置いているのもこのパターン。
お店以外では駅の窓口で鉄道会社のぬいぐるみたちに出会えることもあります。
●オシャレ系
お洋服を着せてもらっているタイプがこちら。
帽子やマフラーをつけていたり制服やエプロンを着ていることも多く、上の「お店とリンク系」と共通部分も多いです。
そして季節やイベントにも敏感。クリスマスやハロウィンはぬいぐるみたちもコスプレをしています。
●ファミリー系
同じ種類、もしくは色々な種類のぬいぐるみが複数並べられているタイプ。
色違いで双子みたいになっていたり、窓際にたくさん並べられていたりします。
ブライダル関係のお店だとカップル店ぬいがいることもあるので要チェックです。
●おつかれ系
ぐだ~っとした姿、少し哀愁を感じるタイプです。
うたた寝しているのかな?という子から爆睡している子までいるのですが、実は店番と休憩を同時に取っている器用さを持ち合わせています。
私はこのタイプの店ぬいに惹かれて観察を始めました。
●マイペース系
とにかく自由なのがこちらのタイプになります。
ちゃんと座っていなかったり、乗り物に乗っていたり、お店には特に関係のない有名キャラクターだったりすることも。
あまりのマイペースぶりに思わずクスッとしてしまうのが彼らの魅力。一見やる気がないように見えるけれど、のんびりお仕事をしています。
癒しをくれる、街の働きものたち
私は店ぬいたちを通して「ぬいぐるみたちにも個性や自由な一面があるんだ!」という親近感が生まれ、お店によってぬいぐるみの個性が変化する点にも魅力を感じています。
バタバタした日や落ち込んだとき、お店の前でのんびりしているぬいぐるみを見ると「ほっ」とする瞬間があります。
もし元気を出したい時はいつもより少しだけ周りを見てみてください。みなさんの身近でもぬいぐるみたちが働いているかもしれません。
そして店ぬいに出会えたら、お店のご迷惑にならないようにこっそりチェックしてみてはいかがでしょうか。
可愛くて日常が楽しくなる。私はそんな『店ぬい』をこれからも観察していきます。