1,000年以上前から、武器として、美術品として、ときには信仰の対象として、全国津々浦々で作られてきた日本刀。変化に富む刃のきらめき、個性豊かな装飾、緻密で多彩なデザイン。今回はそんな日本刀の世界に魅せられた梨の妖精・ふなっしーが、その魅力についてたっぷりと語ります。数年前から日本刀を集めはじめたふなっしーはいまや、ご当地キャラ界屈指の日本刀偏愛者として知られる存在に。一体なぜ、ここまで日本刀を愛するようになったのだろう? そのきっかけは? そのあふれんばかりの愛を、前後編にわたり“梨汁100%”で語ってもらった。

ヾ(。゜▽゜)ノみなさんこんなっしー! 今日は、いまふなっしーの好奇心が一点集中している日本刀についてお話するなっしよ! 日本刀を集めだしたのは、数年前。いまでは結構な数のコレクションが家にありますなっし(笑)。はじめての刀はヤフオク(Yahoo!オークション)で買ったんですけど、持った瞬間に、こだわり抜かれたしつらえを肌で感じたなっし。いたく感激して、ずっと見ていられたなっしよ。それからすっかり、刀に魅了されているなっし。

刀って、ただの刃物じゃないんです。寸法から形状、刀の元となる素材を打ったりすることで生まれる「地鉄(じがね)」、素材を焼く過程で生じる「刃文(はもん)」という模様だったり、刀匠たちによって細部にまでこだわって作られているなっし。それから本やYouTubeでより深く調べるようになって、気がついたらそれ以降は、刀屋さんで立て続けに購入してたなっし(笑)。60振りくらい集めてからは、もう何振り目か数えていません(笑)。

刀好きの人って、だいたい「一振り持っておこうかな」くらいの気持ちではじめの一振りを手にするんです。でもみんな、3振り4振り……と結局コレクションが増えて、10振り以上持っているなんてこともザラ。日本刀好きあるあるなその現象を“刀が刀を呼ぶ現象”っていうなっし。ふなっしーもなるべく増やさないように努力はしていますけど!! 気がついたら増えているなっしなー。集める満足感や触れることで得られる充足感もたまらないけれど、何よりも悠久(ゆうきゅう)の時を経てふなっしーのもとに来てくれた、という感動があるなっしな。

 

日本史好きが高じて、日本刀の偏愛家に

ふなっしーが日本刀にハマったきっかけは、梨学生時代のころから大好きだった日本史。戦国時代や中国の三国志だったりと、いろんな事象や人物を深掘りするのが好きで。歴史にはいろんな人の成功談や失敗談がひしめいているから、生きるうえでリアルに役立つ学びが多いなっしな。ふなっしーは、ふなっしーとしての生き方はもちろん、生きることすべてにおいて歴史から学びを得ていると言っても過言じゃないなっし。刀と出会わせてくれたのも歴史ですし。

で、あるとき国内外の歴史を熱―く解説している「非株式会社いつかやる」さんのYouTubeを見ていたら、村正っていう有名な刀匠が作った日本刀「妖刀村正(ようとうむらまさ)」を取り上げていたんですよ。その内容がすごくおもしろくて、引き込まれたなっし。

妖刀っていうのはその名の通り、どこか妖気のある不吉な刀のこと。「妖刀村正」については“代々徳川家を呪っている刀”ということくらいは知っていたけど、村正=刀匠の名前だってことはそのYouTubeではじめて知ったなっし。「刀匠ってなに?」という疑問から深堀りしていくうちに、どんどんどんどん刀に興味が湧いて。最終的に「日本刀って買えるのかな?」ってところに行きついて、ヤフオクで「村正」を検索したら……いっっっぱい出てきたなっしよ! おおおお村正っっ!! っていう勢いに任せて、気になった「村正(52万円)」をポチッッッと押しちゃった。えっっっ村正、52万で買えんだ!!? って(笑)。そんなわけで、本物の日本刀をはじめて手にすることになったなっし。

 

ふなっしー所有の「吉光」

いま考えると、ものすごくその村正が欲しかったわけではなかったなしよ。日本刀が購入できることを知って、純粋に好奇心が湧いただけで。そもそも刀は博物館で見るものっていう認識だったから、買おうという発想がなかったんです。


いざ届いて開封したときは、ドキドキしたなっしなー。なんていいましょうか、背筋がピンってするというか、これはすごいものが来た!! っていう興奮がハンパなかった。で、52万もしたんだからこの刀について徹底的に調べてやろうと思って(笑)。刀の歴史から作り方まで改めて深掘りしたなっし。刀って、職人さんがもととなる鉄の塊を何ヶ月もかけて製鉄して、それを刀匠さんが何ヶ月もかけて作刀して、研ぎ師さんが研いで。やっっっと完成するものなっしよ。その流れをYouTubeで見たりするうちに、少しずつだけど、日本人が長らく刀を大事にしてきた理由が心から理解できるようになったなっしな。
そして最初に購入した村正は鑑定の結果、別の刀匠の作でしたなっしー。

 

深く追うなかで知った、刀にまつわる切ない歴史

刀って数十年前までは敷居が高いイメージがありましたけど、いまは割と身近な存在なんです。毎年冬には全国の刀屋さんが集まる「大刀剣市」という日本最大級の展示会が開催されたり、YouTubeや日本のアニメの影響で外国人の日本刀ファンが年々増えていたり。ふなっしーも展示会なんかに出かけるたびに、刀自体が世界的にポピュラーになったのと同時に、幅広い年齢層の日本刀好きが増えていると実感しているなっし!!

そもそも戦前までは、だいたいどこの家庭にも一振りはあったくらい、刀は日本人にとって親しみ深いものだったんですよ。時代劇などの影響で武器のイメージも根付いているけど、もとは各家庭で代々受け継いできたお守りのような位置付けだったなっしな。だからおじいちゃんおばあちゃん世代に聞くと「あぁうちにもあったよ!」ってケースが多いんですけど、戦後になると刀が置いてある家庭がどっと減ったなしよ。

なぜかというと、第二次世界大戦後にGHQ(同大戦後に日本を占領した連合国軍の最高司令官総司令部)が「日本の家、どこに行っても刀があるぞ! これやべぇんじゃねぇか?」ってことで、非武装化のために刀を押収したんですよ。何百万本という刀が折られて海に投棄されたり、アメリカ兵がお土産変わりに国へ持って帰っちゃったり。国宝級の刀でも同じ扱いだったと知ったときは、びっくりしたなっしよ。そんな時代背景から、刀の存在自体が忘れられていた時代もあったんです。それから月日が経って、再び注目されるようになったのは嬉しいなっしな。

 

好きなものを入口に、好きが増えて、視野が広がる。刀を好きになってから、いつ死んでも悔いなく生きようと思う様になった

 

そんなこんなでいまに至るんですけど、偏愛するものができてから、他人の趣味にも敬意を払えるようになったし、何かを偏愛する人の気持ちが本当の意味で理解できようになりましたなっし。例えば、何かと話題になる撮り鉄。怒られるかもしれないけど、刀に出会うまでは「電車なんかどれも一緒じゃねぇか!!!」って思ってた。でも刀が好きになってからは「あぁ、そのときそのコンディションでその場所を走る電車は、撮り鉄にとって一度しか撮れない1枚なっしなー!」って、撮りたい気持ちの根底にある愛が分かるようになったなっし。

実はふなっしー、日本史好きが高じて、焼き物も好きになったなっしよ。きっかけは古田織部(ふるたおりべ)という武将。千利休の弟子でもあり、茶人としても知られている人なんですけど、古田が発案した織部焼を調べはじめたら楽しくなって。その魅力は、日本刀に通ずるものがあるなっしな。どちらも鉱物から作られるものだし、窯に入れたあとは焼き上がるまで出来が分からない、仕上がりは成り行きに任せる! ってところも似ているなっし。

いまでは刀と同じくらい焼き物も増えて、毎日好きな器でお抹茶を立てるのが日課になっているなっし。帰宅したらまず刀を愛でて、お抹茶をシャカシャカして……武士かお前は!! って話ですよ。梨じゃなくて武士なっしー!!! ちなみにふなっしー、花も生けるんです。ほんと、もはや武士なっしなー。

話を戻すなっし。刀を愛でる、お抹茶を立てる。2つの日課を繰り返すうちに、作り手がこの刀や焼き物で表したいものは宇宙のすべてなんじゃないか? と考えるようになったなっし。作品のなかに閉じ込められている花鳥風月を感じるようになったというか。ふなっしーの場合は刀や焼き物だけど、ほかの芸術を偏愛する人たちも、無意識に作品に閉じ込められた森羅万象の美しさに惹かれているのは同じなんじゃないかなって、はっっっっ!!! としたなっしよ。受け手である我々が感動するときって、その芸術作品にぎゅっと詰め込まれた森羅万象が心に伝わったときなんじゃないかなと。ふなっしーは勝手に、そう思っているなっし。

そしてきっと誰もが、好きなものを入口に世界がぐんぐん広がっていくような体験をしたことがあるんじゃないかなっし? 好きという入口からなかに入って、その先の景色を見に行くような感覚。ふなっしーの場合は、日本史から刀や焼き物の世界に出会って。それから不思議と、それまでまったく気に留めていなかったものの魅力に気がついたり、些細なことに感動するアンテナが養われたなっし。

不思議な話なんですけど、もういまは月が明るいだけで嬉しいし、ぜんぜん見向きもしなかった道端の花に目がいったりとか。刀に出会って「死生観」も変わったなっしな。それくらい視野が広がって、日常の些細なことに幸せや美しさを見出せるようになったんだと思うなっし。刀を好きになってからは、生きる意味も考えるようになったなしよ。ふなっしーにとって日本刀は、そんな豊かさを与えてくれた存在なっし。だからこそ、これからも日本刀の世界を探求していきたいなっし! 次なる後編ではいちコレクターとして、お気に入りの日本刀や日本刀の未来を見据えての考えをお話しますなっし! お楽しみになっしー♪

Text by 金城和子
Photo by 押尾健太郎