山梨県富士北麓エリアで星空案内人として活動し、星座の魅力を多くの人に届け続けている前田悟郎。星座に夢中になった少年時代のエピソードや、案内人としての星座解説を通して星座への偏愛っぷりをご紹介。この記事を読んだ後、星座の見え方がきっと変わるはず。さあ、満点の星空ツアーに行ってみよう。

カストルとポルポックス「双子座」。

星空案内人・前田悟郎と申します。よく星が見える、山梨県で生まれ育ちました。
私が星座や天体に興味を持ち始めたきっかけは子ども時代、父から望遠鏡をプレゼントされ天体観察を始めたこと。その前も星を眺めるのが大好きで、夜空を見上げて、星座早見盤で星座を探したり図書館で星座にまつわる本をたくさん読んでいました。中学時代の恩師である、理科の先生の影響もあり星空や星座に想いを馳せていたんですね。
ハレー彗星回帰が話題になっており、星座をモチーフにした漫画『聖闘士星矢』がブームだったことも、星座好きになったきっかけのひとつかもしれません。

誕生日星座って知ってる?

私は「双子座」です。カストルとポルックスという双子の兄弟の星座ですね。
星座は88種類あると言われているんです! 代表的な星座が「黄道十二星座」という誕生日星座ですね。
これらの星座は太陽の通り道、黄道を巡る星。なんと『聖闘士星矢』の世界では、星座は身を守る鎧に姿を変えてしまう! 夜空の星座が自分の身を守ってくれるなんて、想像するだけでもワクワクして面白すぎます。

誕生日星座といえば、テレビの占いなどで目にする機会も多いと思います。最近はそこに「蛇遣い座」も加わり、13星座占いも話題になっています。
13星座占いとは?と疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが天文学者のジャクリーン・ミットンの主張では「占星術での『星座』の概念は天文学的にはおかしい。占星術を正しく行おうとするのなら歳差によるズレを修正してさらに現在の天文学の星座区分で12星座以外に黄道上にある『蛇遣い座』も入れるべきだ」と指摘していたことが始まりだとされています。

13星座占いを調べてみると、12星座占いで慣れ親しんだ皆様のお生まれの星座はズレてしまうことに気づく事でしょう。私の場合ですと「双子座」ではなく「雄牛座」となります。12星座占いの結果と13星座占いの結果を見比べていただくのも面白いかもしれませんね。

13星座は漫画やアニメでも設定に取り入れられていたりします。
私の大好きな『聖闘士星矢』でも、13番目の黄金聖闘士の存在が語られたりしているんです。13番目の星座「蛇遣い座」は、ギリシャ神話の医療の神様「アスクレピオス」を星座にしたものだと言われており、実際の星空で星を結ぶと「大きな将棋の駒」のようにも見える星座です、ご興味ある方は探してみてくださいね。

さて、星座占いの起源について述べてまいりますと、古代バビロニアで行われていた、大規模な天体観測が元で、それが西洋で発展したのが「西洋占星術」。古代シュメール文明は高度な天文知識を持っていたと伝わっており、それは古代に地球を訪れた地球外生命体が宇宙の知識を授けていたのではないか? という俗説もあります。

東洋では、中国で盛んに占星術が行われていましたが、西洋とは異なり、日食、月食なども加えられる複雑なもので「東洋占星術」と呼ばれています。そこで思い出されるのが、「三国志」。諸葛亮孔明が五丈原で魏軍と戦った際に、自身の寿命を悟り、延命の儀式をしていたというのもとても興味深い! さらに部下に「…あれが…私の星だ…」と、弱々しく輝く星を指差して孔明が息を引き取るとその星は五丈原に落ちていった…この話には胸が熱くなるものが当然ありました。このエピソードは創作であるとも言われていますが、風習として天体の運行や明るさを見るような星占いの原型のようなことが東洋では盛んに行われていたということですね。

もうひとつ大好きなお話を紹介させてください。
星を見るのが好きだった易の占い師・管輅がとある若者を占ってみると、寿命が短いことがわかった。若者は管輅にどうすれば寿命が伸びるか聞いたところ「北斗星君、南斗星君という老人に願えば延命できる」と伝えたという逸話もあります。ロマンですよね。

星座を「日本神話」に見立ててみる

私は人間の宇宙に対する関心が、世の中の未来や自分の運命を見通すツールとして活用されていき、今の占星術ブームに繋がったのでは? と考えています。星座で自分の運命を見ることができるというのはとても面白い。
星と星を結ぶことで、かたちが見えてくるのが星座。「ん? そんなかたちには見えないけど?」と思う方も多いと思います。星座を見ること、探すことは「想像力」と「探究心」が大事になってくるのではないのかな?と。古代の人々にとって、神様や英雄は心の拠り所だったのかも? 夜の世界は神秘に溢れ星座は無限のキャンパスとなり、星をつなぎ想いを込めて永遠の物語として語り継ぎたかったのではないですかね?

星座にまつわる物語はギリシャ神話が一般的になっています。でも、でも、でも、私は日本神話を元にした独自の星座の見方があっても良いのでは? と考えていたりします。山梨県に伝わる富士山と八ヶ岳の高さ比べ。木花咲耶姫、磐長姫の二柱の神が高さ比べをしたところ八ヶ岳の方が標高が高かった。それに怒った、木花咲耶姫は磐長姫に乱暴をし、それが原因で八ヶ岳は崩落、峰が分かれて今の景観になったという伝説。そんな神話を初夏に南に見える乙女座、秋~冬に北で見えるカシオペヤ座になぞらえてみるんです! そんなことを考えてみながら、夜空を見上げるとまた違ったストーリーが見えてくるかもしれません。

日本神話には天体にまつわる神様も存在するんです。日本神話のプロローグをお話しますと、天地始まりのとき、高天原に天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)、高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)、神産巣日神(カムミムスヒノカミ)という三柱の神が生まれ「造化山神」と呼び、さらに男女の神が生まれました。そこからさらに神々が誕生し、「天照大御神(アマテラスオオミカミ)」が太陽となって大地を照らし、夜には「月読命(ツクヨミノミコト)」が月となって夜空を照らし出し、世界が生まれたとされています。

そんな遠い古代の人々は自然世界に神様の姿を見出していたということも、遠い祖先との繋がりも思い起こさせてくれるような気がしてくるんです。そういった逸話を知っておくことで、星座の楽しみ方にもさらに深みが出てくるのではないでしょうか。

「オリオン座」の右肩に輝く赤い天体ベテルギウス。

古代にはまだ人工的な明かりもなく、月明かりすらないときは現代よりもはるか多くの星々が見えていたのでしょうね。うらやましい限りです。山梨県はそんな古代の世界に近付くことができるかもしれない、宇宙を感じる魅力に溢れた地域でもあります。なぜなら山梨県には月にちなんだ地名がある、月見にまつわる風習があるなど星空や天体と大変に縁の深い地域でもあるんです!

山梨県で撮影した満天の星空。

上の写真を見てください!大きなやまがそびえる山梨県は、美しい星空が見える自然豊かな場所なのです。地域の特徴として盆地であり、都会に比べると街明かりも少なく天体観測に適していること、冬場には標高の高い場所で南天の星・カノープスを見つけることもできますし、天の川も観測しやすい環境です。

冬の夜空にぼんやりと輝く「カノープス」。

月見の風習十五夜、十三夜。地域によっては親しみを込めて「おさんやさん」とも呼ばれた。

星空案内人として、星座の魅力をつなぐ

星の光は何光年という遠い昔の輝きが見えているんです。

とても明るく、淡く、暖かで、そしてどこか懐かしい。私たちのご先祖様はどんなくらしをしていたのでしょうか? そして私たちが誕生する前の世界は? 悠久の時の彼方を想像してみてください。星を見上げるということは、私たちのルーツを知るきっかけでもあり、その輝きの美しさは永遠にも等しい、普遍の価値があるのではないかと感じています。宇宙を知ることにより俯瞰した世界が見えてくる。自分自身を見つめ直すことにも繋がるのではないでしょうか。

そして誰とでも共有できる話題であり、世界共通のコミュニケーションとしても面白いということを知っていただけたら嬉しいです。そんな星座や宇宙の美しさ、不思議な世界を気軽に楽しんでいただけるように、私もサポートさせていただきます。

夜空をぼーっと見上げるだけでもいいのです。さらに星座のつなぎ方、どこにどんな星座があるのか、天の川の場所は? 富士五湖方面でそのような解説をする「富士スターツアーズ」という活動をおこなっていますので、ご興味がありましたらそちらからお声がけいただけると幸いです。

星空の下で大切な方とあなただけの思い出を。
皆様、素敵な星空ライフをお楽しみくださいませ。