「3かいめー!」だけど、自然体で絶品春巻きをお届け

「3かいめ―!!」というアンガールズ・田中さんのフレーズが好きな僕にとっては、大事な回。

それに「仏の顔も三度まで」「三度目の正直」「二度あることは三度ある」など“3”にまつわることわざもなぜか多い。恋愛においても「3回目のデートは大事」と言われる。なぜ、大事なのか?と検索してみると、「相手とお付き合いしたいかどうか見極めるタイミングと考えている」からだそう。「1、2回目のデートも見極めるためじゃないの?」と思ったが、3回目のデートは緊張がとけ、素の自分が出やすいことから重要な判断材料になるのだとか。なるほど。

ずいぶん昔から言われていることなので、僕もそれにならって3回目は少し身の丈にあってないような高めの飲食店を予約したり、夜の公園をむやみやたらに散歩して告白のタイミングもつかめず相手から「私から言うのも違うと思うんだけど……」って言われた瞬間、「あっ、あっ、僕も言おうと思ってたけど……」と食い気味に言ったこともあった。他にも、そのへんの男性と僕は違うアピールがしたくて、巣鴨の“モンゴル料理専門店”を予約。すごい良いお店だったが、骨にしゃぶりつく系のラムがデートには不向きだったり、BUMP OF CHICKENのライブで前が見えないと言った相手に「肩車してあげようか?」と真剣に提案し、断られた過去もある。

「3回目のデートは大事」ということを意識しすぎて、いくつかの縁が切れてしまったのだ。本末転倒。これから、3回目のデートに臨むすべての人たちに言いたい。本当に3回目のデートを成功させたいと思うなら、変に気負わない、まだまだ素は見せず、ガッチリ自分を取り繕った方がいい。まずは、付き合うことをゴールにしよう。相手を見定めるなんて3回目のデートに緊張しているようなレベルでおこがましい。すみません、これは“若気のイタリスト”でした。というわけで、ハルマキスト3回目です。 

ぶらり春巻きフィールドワークで発見!「鱈とクリームチーズの春巻き」

北海道で僕が気になっていたお店は無事、2軒いけた。美味しかった。でも、北海道の裏テーマはコスパ。もう1軒を紹介するのが命題とされている。これが体力的にもお腹的にもキツイかと思いきや、2軒取材させてもらえたおかげで日本、いや、世界でも誰も体験したことない“ハルマキーズハイ”になっているのを感じる。今ならもう1軒いきたい気分だし、まだ見ぬ春巻きに会えることが楽しみになっている。

そんなとき、役立ってくれるのがグーグルマップ。検索ワードで「札幌 春巻き」と入力。すると、近くの春巻きを提供してくれる店がずらりと出てくる。この調べ方のメリットは和食、創作居酒屋、中華料理屋、地中海料理など、どんなジャンルでも春巻きさえメニューにあれば、情報が出てくるところだ。

いつも通り、検索すると気になる文字を発見。「鱈とクリームチーズの春巻き(600円)」お店は「中華バル SABUROKU360」さん。東京でも白身魚とチーズの春巻きはたまにみるが、「“鱈”って珍しくない?」「北海道っぽいし」「だって、ちょっと調べただけでも“北海道は真鱈の漁獲量日本一”って出てくるもん」。これは行くしかない!

外観がちょっとロック。「酒場のばなな」と「スナックのろちゃん」も少し気になるが階段が暗すぎるし、「お2階へどうぞ」っていう赤文字がちょっと怖いので、寄り道はせず、素直に入店。 

 

さっそくお目当ての「鱈とクリームチーズの春巻き」を注文。着本した春巻きは……

「鱈でかっ!」食べてみると、ぷりっとした鱈とクリームチーズのハーモニー!シソもアクセントになって美味!ソースも少し酸味があって美味しいのだが、やっぱり僕の舌ではその詳しいレシピにまでたどり着けず。店主の坂本さんに聞いてみた。

「ウチはマヨネーズ系のソースを巻くときに入れています」。マヨネーズ大好き!「他には……」と味を探ろうとすると、「それはちょっと……」秘伝のレシピらしい。こういう場合、「もしかして、ヨーグルトとナンプラーじゃないですか?」とどや顔でグルメライターさんっぽくかっこよく言い当てたいが、僕にはそんな鋭敏な味覚なんてないので、あっさり引き下がった。美味しいから問題ないし、秘密は秘密のままで良い場合もある!

メインの鱈は漁が不作の場合以外は北海道産。水分が多い魚なので、冷凍ではなく、あくまで生にこだわったことでプリプリの食感を実現させている。使われている春巻きの皮はこだわりの食材が揃っているスーパーなどでたまに見る「富強食品」。

「冷めてもパリッとするし、揚がったときの感じがつるつるして良い」とのこと。僕も自分で春巻きを作るときに使ったことがあるが、たしかに美味しかった。やっぱり春巻きは作る料理人ごとにそれぞれこだわりがあって本当に面白い。でもこの絶品春巻き、実はメニューからなくなりそうになったピンチもあったという。

「(作るのが)面倒くさいんですよ。美味しく作ろうと思うと材料の管理とかいろいろが。だから、やめようと思ったんですけど。お客さんがやめないでって言うから出しているんですよね」。正直者すぎる!でも、仕方なくだしているのも本当に仕方なくというより、なんか「そこまで美味しいって言ってくれるなら出してやってもいいけど」みたいな“照れ嬉しい感”もあって、良い感じです、坂本さん。

面倒くさいの中に愛が、僕は立ち止まって考える

面倒くさいけど、お客さんが喜んでくれるから提供し続ける絶品春巻き。人を感動させる春巻きの面倒くささには料理を作る人の愛が詰まっている。

僕も自分の仕事で誰かを感動させたいと生きてはいるが、人生を切り取った断面にそれほどの面倒くささがあっただろうか?中学3年のとき、商業高校の1次選抜の受験に合格して、周りの同級生より早く進路が決まった。高校受験が終わったその後の中学ライフに意味がないと残りの登校日ぜんぶ休もうとしたら、お母さんに「あんたふざけてんの?」とめっちゃ怒られた。

大学受験に失敗。一浪しようかなと思ったけど、やめて専門学校に切り替えた。構成作家になりたての頃、小説を書こうとして「オレに長いストーリーは書けないなー」と60Pで断念。今では同期が本を何冊も出している。先輩から「ドキュメンタリーのナレーションを書き起こすと勉強になるよ」と言われて、やろうと思ったけど、「これって意味あるのかな?」と思ってすぐやめた。

人生を思い返せば、ラクな方へ、ラクな方へ、面倒くさいことから逃げてきたことばかりが蘇ってくる。情けない。春巻きが美味しかっただけにこんな気分で終わりたくない。そんなときに、僕の気分を救ってくれたのもやっぱり春巻きだった。今回、北海道で3軒の春巻きの店を取材できた。普通に考えると、面倒くさいのに。それもすべては面倒くさいの前に“好き”があるからできること。これからも何百軒も春巻きを取材していきたいし国内だけではなく、海外にも足をのばしたい。“好き”だから、続ける。でも……

20代の頃、5つめの穴でベルトを締めれていたが、今はギリ2つめ。それでさえ、骨盤矯正くらいの感じで締め付けられている。せめてものプライドで1つめの穴には入れたくない。なんとなくよそゆきの服装にはベルトをしていたい。“好き”と“面倒くさい”は相関関係。ダイエットも頭の片隅におきつつ、ハルマキストは明日も春巻きを食べ続ける。