「HARUMAKI GALAXY キミにきめた!」

最近、日本に“ある変化”が起こっていることにお気づきだろうか?

そう、春巻き専門店が全国各地に爆誕しているのだ。

南は福岡の天神エリア初の専門店「はるまき ぶる」から大阪の「サヨナラ天サン」「おにぎりとはるまき きよし」、東京の「春巻き専門店 はるまきバトン」「東京はるまき」「麻布春巻」「春巻のニューヨーク」、金沢の「はるまき家」、北海道の「ハルマキギャラクシー」。ボクが知っているだけでもこれだけある。今後も各地で春巻き専門店は誕生していくだろう。

この状況は「鬼滅の刃」で痣を持つ者が現れその後、炭治郎に続き、続々と柱たちも痣持ちになっていく状況と酷似している。今、全国で誕生している春巻き専門店はまさに柱。継ぐ子を育て……という話はまた別の機会にするとして、ハルマキストを名乗り、ニッポン全国の春巻きを常々、巡りたいと思っているのだ。現在ボクは東京の春巻き専門店は大体、行くことができた。でも、まだ県外に遠征したことはない。というわけで今回の取材、甲乙選び難い選択の中、どこに行くのか?


悩みに悩んだ挙げ句、名前が気になりすぎる&この時期、涼しそうという欲望まっしぐらな理由で北海道初の春巻き専門店「HARUMAKI GALAXY(ハルマキ ギャラクシー)」キミにきめた。ギャラクシーと言えば、長尾謙一郎先生の「ギャラクシー銀座」しか記憶にないボクとしては気になりすぎる。いや、気になると言えば、「ハルマキストって何?」と気になっている人の方が多いかもしれない。

ハルマキストはわらをもつかみたいツラい時期の黄金の一本

そう、あれは忘れもしない。たしか7年前くらいの春か夏くらい。

ボクの職業は構成作家なのだが、周りが自分の武器と進むべき道を見つけ、業界で活躍&邁進している中、何もなかった自分。「久松くんってさ、何が得意なの?」というい問にへらへらごまかし続けていた日々。

そんな時期、ある先輩が言ってくれた。「何もないなら、とにかくなんでもやってみた方がいいよ」確かに、そうだ。

それから、自分の武器を探し続けた、ある日の新橋。会議に行く途中に、町中華のショーウィンドウに「春巻き定食」を発見した。ラーメン、餃子、唐揚げなどメインどころの日陰でそっと中華料理界を支えてくれている春巻きだと思っていたが、こんな所で主役をはっている。そんな春巻き(自分)が定食としてがんばっている。強烈なシンパシーを感じるとともに、刺激をもらった。そこから春巻きを人生の相棒にすることに。

今ではインスタに春巻きの店を270軒以上アップしていて、日陰の存在である春巻きとボク自身を盛り上げるべく、日々春巻きを食べ続け、いずれ「全国春巻きMAP」を作りたいと思っている。ハルマキストはそんな活動と応援してくれる人たちを指す愛称のようなものだ。

「梅しそのオクラささみ」「いちごブラウニー」など10種類の春巻きをコンプリート!

今回は、その道の途中であり大きな第一歩。北海道に初進出!

店までの距離感がわからず、札幌駅に到着してタクシーに乗り込んだ。(今となっては地下鉄南北線 北24条駅から徒歩1分。札幌駅から3駅なので電車で行って良かったのだが)

試すようなことをする自分の性格のいやらしさが恥ずかしいが、運転手さんに「HARUMAKI GALAXY(ハルマキ ギャラクシー)までお願いします」みたいな「とりあえず、生ビール」みたいな自然なテンションで言ってみた。しかし運転手「住所お願いできますか?」とまったく通じず。北海道初の春巻き専門店と言えど、まだまだ認知されていないのが日陰の春巻きの現状。さらに、住所を言っても「それって、何の店ですかね?」と春巻きという単語にまったくピンと来ていないよう。まだまだハルマキストとしてがんばらねばと気合いを入れなおす。そうして、乗車すること7分で到着。遠目からでもわかる個性的なビルが現れた。

これには期待感が高まる。さらに中には「ハルマキの掟」なるものが。

1、具がパンパンであること。
2、素材はゴロゴロであること。
3、皮はパリパリであること。

まさに、ボクが思っている春巻きで大事な3要素。波線がひかれている箇所を「パンパンゴロゴロパリパリ」と朝礼で3回はご唱和することを推奨したい。

ここで、気になっている方も気になっていない方もいるかもしれないが、よく聞かれるので言っておこう。「春巻き」「春巻」「ハルマキ」言い方はいろいろあるが、違いはない。どれも同じ。「カレー or カリー」「ピザ or ピッツァ」みたいなもの。でも、人によって言い方にこだわりがあって、ボクは「春巻き派」。理由は“き”がかわいいから。「五目春巻」より「五目春巻き」の方がなんかしっくりくる。もちろん「ハルマキ」「春巻」でもぜんぜん良い。その人なりの春巻き表記でいいと思う。

まあ、そんなことはどうでもいいので、さっそく実食。10種類を制覇させてもらった(取材時、豚角煮春巻は品切れ。次回また来たい)!

春巻きの相棒となるドリンクはおすすめしてもらったコロナビールにした。「孤独のグルメ」に出てくる「ふらっとQUSUMI」に憧れているボクとしては仕事で飲めるこのシチュエーションに食べる前から心躍っていたことは言うまでもない。「ふらっとHARUMAKI」

左から春雨GALAXY/海鮮中華/蓮根✕枝豆✕ツナマヨ/梅しそinオクラササミ

まずは、看板商品①「春雨GALAXY」(260円)具材はにんじん、ニラ、しいたけ、たけのこ、豚肉。一口食べた瞬間に旨味が溶け込んだ醤油のしっかり味。味の染み込んだ春雨と具材の一体感に満足する一本。

続いて、えび、いか、キャベツ、長ネギ、春雨代わりの焼きそばが入った②「海鮮中華」(290円)、ちょっとサラダ感覚、れんこんしゃきしゃき③「蓮根✕枝豆✕ツナマヨ」(260円)、どこ食べてもオクラがいる!一本まるごとオクラの④「梅しそinオクラササミ」(280円)。

左からベーコンポテトチーズ/キーマカレー(パンの耳入り)/ながーいエビマヨ

“THE 北海道”塩っけと優しい甘みのじゃがいもがたまらない⑤「ベーコンポテトチーズ」(260円)、⑥「キーマカレー(パンの耳入り)」(300円)、期間限定!二本のエビが一本に詰まったプリプリの⑦「ながーいエビマヨ」(330円)惣菜にもごはんにもおつまみにもなる春巻きを食べまくり。これだけ食べてもしつこくなく、ポンポン食べ進められる。なぜなら、油きれの良い“こめ油100%”で揚げられているから。高温に強く、揚げムラも少ない優れものの油。しかも、豚肉や野菜なども極力、国産の食材にこだわった餡でゴロッとした具材の旨味がほおばった瞬間に溢れ出す。

でも、キーマカレーは大人にはちょっと物足りないような気もした。ぶっちゃけて聞いてみると「やっぱりお子さんにも食べて頂けるように甘みを意識して作っています。パンの耳もカレーパンみたいな食感を楽しんでもらえたらと」子どもの頃、辛いカレーを一口食べただけでぜんぶ残してしまった記憶を思い出した。気遣いのマイルド仕様。こちらのお店には老若男女すべての年齢層が来店するということで、誰でも食べられるような味付けなんだとか。

左からいちごカスタード/いちごブラウニー/ごま団子

スイーツ系のラインナップもそう。ちょっとホットスナック的なスイーツを敬遠される人もいるかもしれないが、洋風の⑧「いちごカスタード」(220円)⑨「いちごブラウニー」(220円)はいわばクレープの揚げ版。抵抗なく食べられる。お惣菜の春巻きより、揚げ時間をあえて2~3分短く、「パリっ」「カスタードとろっ」の絶妙なバランスで提供してくれているそう。和風の⑩「ごま団子」(250円)もずっしり餡で揚げまんじゅうっぽい。夏は洋風、冬はごま団子が多くでるのも納得できる味。

働く人たちの多様性をも象徴する春巻き

でも、やっぱり気になるのは定番の質問で恐縮だが、「なぜ、春巻き専門店にしたのか?」ボクもよく聞かれる。

代表の三浦さん曰く「春巻きは見た目は一緒でも味はすべて異なる。まあ、料理だったら何でも入れられるモノなんですよ。ウチは就労継続支援もやっていて、春巻きを作るスタッフも多様性だから」

 


実は「HARUMAKI GALAXY(ハルマキ ギャラクシー)」を経営しているのは「特定非営利活動法人はなうた」そこでは社会にうまく馴染めない方の働き先も斡旋している就労継続支援B型事業所「れのあGALAXY」も運営していて、飲食店を起業する話になったそう。そこで、職員の方に春巻き好きが多かったこと皮を巻く作業で雇用を生むこと(今まで接客業ではうまく馴染めなかった人たちも春巻きを巻く単純作業には驚くべき集中力と精度を発揮する人もいるそう)、どんなモノも巻いてくれる多様性を象徴する食べものとして春巻きが最適だったことから「春巻き専門店」を開くことになったという。働く人の多様性も考え、今後もスタッフの自立などを促していくそうだ。

そんな「HARUMAKI GALAXY(ハルマキ ギャラクシー)」はお客さんにも寄り添う。当初はイートインにも力を入れていたが、今の需要はテイクアウトが9割。そのため、今後はメニューも大幅リニューアル。春巻きだけではなく、ご飯系の惣菜もテイクアウトで販売したり、春巻きも人気のある角煮丼のようなそれ単体で食事になるようなガッツリメニューも増えていく予定だという。

さらに、「春雨ギャラクシー」は「五目ギャラクシー」に名前を変え、豚肉の量を大幅にアップ。「海鮮中華」も同様に「海鮮ギャラクシー」になり、えび・かに・ホタテを増量。この2種類を店の看板商品にしていくのだとか。

札幌をぶらりしながら、ハルマキストとして“生春巻き”の矛盾について考える

自分のスタイルは変えずに常に周りのニーズを考え、進化していく「HARUMAKI GALAXY(ハルマキ ギャラクシー)」春巻きが歴史も形も長いことは知っていたけど、ここまでの深さと多様性があったとは。実際、来てみて食べてわかることがある。

取材後、いろんなお話を整理するため、札幌の街をぶらぶらと歩いた。
 

 

「どんな食材や料理も巻くことができて、拒否しない春巻きはすごい」
「そのスタイルを働き方も含め、実現している「HARUMAKI GALAXY(ハルマキ ギャラクシー)さんもすごい」

 

ボクもハルマキストとして多様性を受け入れるべきか? よく聞かれる「生春巻きは食べないんですか?」という多様性。ハルマキストと言いつつ、揚げだけ食べているボクは凝り固まった固定概念の上で活動しているだけなのではないだろうか? あのしっとりむね肉のチキンやプリップリの海老をパクチーなどの香味野菜と一緒にライスペーパーでほおばる。間違いなく美味しい、罪悪感もない、なんか「ボク、生春巻き好きなんですよねー。最後の晩餐で食べるとしたら、断然あれです」センスありそう。でも……なんかちょっと友達にはなりたくないかも。いけすかないというか、おしゃれが鼻につく。

しかも、ボクが揚げ春巻きを好きな理由はやっぱり油なんだなと思う。あのテリとパリに魅せられているのだ。ハルマキストと名乗りつつ、揚げ春巻きだけ食べるのもよく考えたら一つの多様性だし。ということで、次はどんな揚げ春巻きを食べられるのか? 期待感で胸と腹をふくらませながら、カロリーに対するせめてもの抵抗として次の駅まで歩くことにした。

最後は代表の三浦さんと“巻き”ポーズでコラボ