「大変だね、でも楽しそう」
そんなことを多く言われる一年間だった。
寒さがピークだった去年の二月。
家を手放し、スーツケース一つとリュック一つを相棒に、夫と世界一周の旅へでた。
コロナウイルスの影響で残念ながら世界一周は一カ国目でストップしてしまったけれど、ゆっくり過ごしたからこそ気づきが多い一年間だった。
一カ国目のタイにそのままいるか、日本に帰国するかの決断を迫られたときに選んだのはタイのサムイ島。
将来おばあちゃんになったら南国でゆっくり暮らしたいという願望が、思いがけず叶ってしまった。
サムイ島での暮らしは東京にいたころとは正反対。
朝は眩しい太陽の光で目が覚めるし、雨が降っても服はすぐ乾く。
傘は持ち歩かないし、天気予報も見ない。
近所の親子がやっている果物屋で新鮮なフルーツを買い、毎日スムージーを飲む。
バイクで道を走れば象や牛、鶏、豚、野良犬たちに会う。
暑いから体を冷やしたいと思えば、海へ行って自分の家のプールのようにくつろぐ。
観光客がいなくなってほぼ貸し切り状態の海は信じられないほど綺麗で、
今でも忘れられない。
「地球ってこんなに美しいんだ。」
思わず心から声が漏れる。
地球と一体化するように毎日を過ごし、この景色を守るために何ができるのか意識するようになるのに時間はかからなかった。
サランラップを買うのをやめてミツロウラップを繰り返し使う。
マイボトル、エコバッグ、ストローを持ち歩いてなるべくゴミを減らす。
畜産動物が環境破壊に大きく影響を与えていると知り、食事も菜食に切り替えた。
使い捨てのものが生活から少なくなるのが、こんなに快適だとは思わなかった。
今までは洋服が流行りから外れると新しく買い、またしばらくしたら飽きて新しく迎えを繰り返し、常に心が満足していない気がしていた。
少しでも便利そうな物があると手に入れてはすぐに使わなくなり、家には何がどこにあるのか分からなく散らかっていた。
思い入れのない消費を繰り返して、頑張って稼いだお金がいつのまにか減っているようにも感じていた。
今はこれからもずっと大切にしたいものだけしかないから、クローゼットの中身が全部愛おしい。
便利グッズは手に取らなくなり本当に必要なものしか持っていないから、探しものをしたり片付けをする時間も減って心も軽くなった。
家がないから物を増やすことができないのもある意味良かったのかもしれない。
「そんな少ない荷物で生活するなんて私には無理。大変そう。」
みんなにそう言われ、初めは私も正直不安だった。
けれど、ものを最大限まで減らし、不便を超えた先には快適な暮らしが待っている。
便利を追い求めて、なんでもパッケージ化されて、あまりにも早く役目を終えてしまうものが多いこの世の中で。
新しいものを買ったほうが楽で安いのに、着古した洋服を不器用ながらチクチク縫って直しているとき。
ペットボトルを買えば楽なのに、お気に入りのタンブラーを繰り返し洗ってまた使うとき。
「ああ、私は今生きてる。」
そう心から思えるようになった。
一見面倒くさいことが、こんなにも楽しい。
他の人から見たら面倒でも、私にとっては大切な時間。
ものを大事にしている自分のほうが、前よりも好き。
私の行動が地球に与える影響なんてちっぽけなことかもしれない。
それでも、未来の自分のために。
将来会えるかもしれない自分の子供にも美しい地球を見せてあげられるように。
どこか遠くで暮らしている人や動物を守れるように。
日々見つけた「サステナブルなこと」をこつこつと生活に取り入れていく。
考えてみれば、急ぐことなんてなにもなかったんだ。
今日も、ゆっくり、心地よく、暮らしていこう。
Text by MARIE
Photo by meme
Model by chihiro
プロフィール
MARIE(モデル)
モデルとしてショーや広告などで活動。環境や動物に優しい生活を取り入れ、コラムやSNSを通じて発信している。またジンベイザメの保護活動にも参加している。
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