もくじ
CADNIが叶えたいのは”女性のきらめき”
―「自分らしさ」を表現しようとした時、自分に馴染みのあるものではなく敢えて女性向けにフォーカスしたのは何か背景があるのでしょうか?
佐藤:一番の根本にあるのは私自身が学生の頃、女子たちが元気でいてくれたらいいなみたいな、と思う出来事がすごく多かったことにあります。中高生の頃の例でいうと、「女の子らしく○○しなさい」だったり、「女子なのに理系なの?」だったり。大学に入ってからは、女性の同級生が就職活動中に「いつ結婚するの?」「出産で仕事を休む予定はある?」といったことを当然のように尋ねられた、といった話も聞きました。女性史を学ぶ中でも、たびたび女性だけに押し付けられる烙印の多さに驚いて……
―女性の生き方に関して課題を感じる環境にいらっしゃったんですね。
佐藤:はい。同時に、その価値観を当然だと思い込んで自身を追い詰めてしまう方もいらっしゃるなと。一方、思い返してみれば、反対に女性が輝いている環境って男性も含め性別を問わず全員がイキイキしているような気がしたんです。なので女性に対して何かできることはないかだとか、少しでも人生とか個性がきらめいたりする力になれないだろうかという想いがずっとありました。
―佐藤さんが思うきらめきってどのようなものなのでしょうか?
佐藤:私の中では「自由であること」という解釈をしています。誰から何を言われようが自分の選択をできること、それってすごく縛られていない状態だと思うんですね。きらめきがある状態って自尊心が満たされていたりとか、自分に自信があったりとか、毎日楽しいとか。様々な点で満たされている状態だと思うんですけど、そういう満たされている状態ではのびのびと自己表現できます。それこそが、しがらみから解き放たれた自分らしさの象徴、つまり「きらめいている」ということになると思うんです。
―自分らしさを表現して日々をきらめかせる、その手段としてCADNIがあるわけですね。
佐藤:そうですね。「私は自分の価値観で、こだわってカスタマイズしたこのリングを着けているんだ」と感じていただきたいんです。そのようにCADNIを毎日の中に取り入れていただければ、お客さまが満たされる日常に少しは貢献できるかなと。例えばお気に入りの服見つけた時の感覚に似ていると思います。身に着けた瞬間に体温があがって、出かけるのが楽しみになるとか、新宿を我が物顔で歩くみたいな、そういう感覚ですね(笑)。
―「これ好きだな」と気づかされていくことで生活が豊かになっていくような感覚、わかる気がします。
佐藤:「自分ってこういうのが好きなんだ、じゃあちょっとこういうものを揃えていこう」だとか、そういう自分を知る体験を積み重ねていくことで、どんどん自分という存在が鮮明にできあがっていく感じですね。CADNIのアイテムは手に取ってくださった方の個性やライフスタイルを反映したものでありたいですし、身に着けた時にはその人が少しでも自分らしくあれたらなと思っています。
佐藤:その願いを込めて、私たちは「Icon of You」という言葉を使っています。その人がカスタマイズしたデザインのリングが、指元で象徴的に輝き、目立つ。そこには多くの人が着けているものに比べて「その人らしさ」が凝縮していると思うんです。その人自身がその場にいなくても、そのアイテムがあるだけで「あ、あの人のだ」と思い浮かべる。そのくらい身に着けている人の個性がちゃんと感じられるジュエリーを目指しています。
―ジュエリーということは、リング以外のアイテムも視野に入れていらっしゃるのでしょうか?
佐藤:そうですね。リングはあくまで現段階で最適だと思う「女性のきらめきを後押しする手段」なだけで、女性が主役になって自己表現するきっかけになれるものには、領域関係なく積極的に飛び込みます。例えば、アメリカではピアスやイヤーカフなど耳周りに大量のアクセサリーを着けて自己表現する方が増えていますから、これが日本にも上陸する兆しがあれば、そのブランドを立ち上げるとか。あくまでリングは「初めの一歩」です。
―お客さまの自己表現を応援するのが第一なんですね。
佐藤:実はその考えに通ずることでいうと、具体的にはお客さまがカスタマイズオーダーしたものを展示するPOPUPは開催したいと思っています。
佐藤:すでにHP上では実際にお客さまからオーダーいただいたリングを紹介しているのですが、それをリアルの場でも実現できたら素敵かなと思っていて。CADNIというブランドが主体としてなにか作ったものを飾るというよりかは、お客さまがこだわって作ったものが飾られている。お客さまのアイテムが主役となっているギャラリーをイメージしています。「その人らしさ・こだわり」が形となったものを生で見られる場は、まさに「自己表現」を応援するCADNIの理念を体現できるかなと思っています。
「私だけに合う」がもたらすエシカルな未来
―自分に合うリングをお客さまがこだわってオーダーできるシステムにはどのような想いがあるのですか?
佐藤:実はセミオーダーという形式が重要だと思っています。全くの0からリングを作り上げなくても済むという利便性の部分はもちろんなのですが、自分で自分を表現できる「余白」も用意できる形がセミオーダーだなと。それってCADNIとして用意している枠組みとお客さまの自己表現が合わさってジュエリーが作られることだと思うんですよ。ブランドの理念を考えると、これからも大事にしていきたい部分です。
佐藤:ただ、変えられるところは変えたいと思っています。元々は、購入前にサイトからデザインを一度申し込んで頂くプレオーダー形式を取っていましたが、サイト内の動きやユーザーさんの声から、「宝石のビジュアルが最初に見えていた方が良さそうだな」と思い、今ではそのようにサイト設計を変えています。一方で、特別なカスタムを楽しみたい・それを事前に見たいという方のためには、地金の加工から、宝石を着けた時のデザインイメージまでをチャットボット経由やプレオーダー形式で可視化しています。また、よりこだわりたい方のための今よりも進化したセミオーダーも考えています。もちろん、2週間お試しいただける返品可能の試着サービスは据え置きです。
―返品できます!と敢えて打ち出すブランドも珍しいですよね。
佐藤:どちらかというと返品・返金って表立って明記しないブランドの方が多いですが、お客さまに合うものだけが届いてほしいという想いが私たちとしては1番にあるので。なので合わなかったら返品してくださいと明記するのは、私たちのスタンスとしては当然かなと思っているところでもあります。もちろん合わないこともきっとあるでしょうし、そういうときは気兼ねなく戻してくださいというところはちゃんと伝えたいなと。
―CADNIのアイテムを送り出す上で、いずれ世の中がこうなってほしい、といったような理想像があるのでしょうか?
佐藤:カスタムファッションの時代がもっときてほしい、とは思っています。
大学時代に、自分でカスタムしたiPhoneケースをわざわざ海外に発注したことがあって。送料がすごくかかってしまったんですが、届いた時の高揚感は今でも覚えています。デザインをカスタムしながら「自分はこういう色が好きなのか」とか、「こういう模様入れたがるんだな」とか。自分の個性を知るきっかけにもなりましたし、自分なりのこだわりを込めたものを身に着けることが、生活においては体温あげる役割を果たすのかなと。
佐藤:今後、消費の自己表現感みたいなものがより高まっていくとしたら、その1つの方向性としてカスタムファッションをもう少し前進させたいですし、もっと言うとファッションのみならずライフスタイル全般においてその人の個性が日常に反映された状態を作りたいですね。
―必要な人に必要なものが届くカスタマイズオーダー制をとっているのには、そういった佐藤さんの想いが反映されているんですね。
佐藤:そうですね。元々私の生活の仕方としてこだわったものを買って末永く使うというスタイルなので、そう考えるとカスタマイズオーダー制をとるのは必然でした。
佐藤:またジュエリー業界では大量生産をしようとすると、どうしても採掘現場での争い・労働搾取の問題が付いて回ります。この文脈で言うと、私たちはその人にあったリングを1つひとつ作成するので、必然的に真逆の方向、つまりエシカルへと進みます。これが、私たちが掲げる「Ethical and Jewelry」の秘密です。
―想いのままにお客さまにプロダクトを届けたら、それが結果的にエシカルになったと。
佐藤:そうですね。お客さまにとって本当に必要なものだけを末永く使って欲しいと思っているんです。大量生産されたブランドやアイテムは世に多く存在しているので、私たちが新しく何かを始めようとした時には、せっかくであればその人にとっての一点ものを作りたいと思っていました。自分の個性が反映されたものだからこそ、長く使うって感情が自然と湧いてくるかなと。そのようにお客さまの想いが結果的に=エシカルに繋がっていたという形が理想ですね。
-
- 3
- 1
- 1
- 2