もくじ
手軽さと美味しさの両立が、海老の価値観を変える
―海老乃家は「海老専門のブランド」と伺ったのですが、どういった商品を扱っているのでしょうか。
船田:上質な天然海老の加工品ですね。とれたての海老を絞めてすぐに食べるのが、海老の最も美味しい食べ方です。しかし、漁に出て海老を獲って帰る……なんてご家庭は、なかなかないと思います。そこで、その美味しさを味わっていただきたいという想いから、とれたての海老本来の旨みを損なわない加工をして、かつ手軽に調理できる状態で「新しい海老の食べ方」を提案しようと立ち上げたのが海老乃家の原点です。
海老の目利きや加工については、元々事業者向けに行っておりノウハウもあったので、それをより身近に、ご家庭にお届けできると考えました。
―新しい海老の食べ方、というのは例えばどのようなものなのでしょうか。
船田:剥き海老がわかりやすい例だと思います。ご家庭で解凍してそのまま食卓に並べられる手軽さ・使いやすさにもこだわったのですが、「美味しい海老」を提供するのはもちろんですが、食卓に並び、食べるときの幸せな顔やシーンまで考えるようにしています。その全てをコーディネートし、今までの海老に対する価値観を変えるような「美味しく手軽に海老を食べる体験」を提供することを考えています。
船田:正直、大きくて美味しい海老って、背ワタを取り除いたり殻を剥いたりする手間がかかるものが多いですよね。これを家庭で行うのは大変です。でも小さい海老は価格も安く、料理にも使いやすいのですが、そこまで味にこだわっている者も少ないと感じています。
だから、味と手軽さを両立できれば、今まで海老に持っていたイメージをを大きく覆せると思っています。
―手軽ということは、料理への使いやすさを意識された商品なのでしょうか。
船田:それはもちろんです。簡単に美味しい海老料理を作っていただけます。またそれだけではなく、「海老乃家の海老」は解凍したら「そのまま食べる」こともできます。食卓に並べればお刺身として食べられますし、サラダに入れていただいても良いと思います。また、「海老乃家の海老チリソース」を使っていただければ、10分で絶品のエビチリに早変わりします。
船田:そのまま食べても、料理に使っても美味しい味付けにするために0.1g単位で調味料の配合を変え、獲れたてを絞めて食べた時のうまみが少しでも損なわれていれば調合し直して……納得いくまで繰り返したら、気づけば「海老乃家の海老」を発売するまでに10年近くの月日が経っていました(笑)
―10年ですか。凄いこだわりですね……剥き海老以外にも、お客さまから人気の商品などはあるのでしょうか。
船田:霜降り海老のステーキですね。ステーキとして楽しめるような大きい海老は、日本での流通量自体少ないです。日々最高の海老を追い求めていますが、あるとき肉厚でうまみ抜群の大きな海老に出会い、これは海老のステーキとして提案したい!と思ったんです。海老のオイルを開発したのも、美味しい食べ方を提案するための逆算で生まれました。
―今ステーキに使用している海老のお話がありましたが、海老乃家で使用している海老にはどういった特徴があるのでしょうか。
船田:海老乃家で使っているのは、美味しい海老を探して世界各国を巡り見つけ出した、ベンガル湾の天然海老です。ここの天然海老は荒波にもまれるので、肉に厚みがあってプリっとした食感を楽しめるんですよ。
素材はもちろん最高のものを追究していますが、それと共に「海老乃家の海老」で肝心なポイントは、獲れてからの処理の方法・スピードです。「海老乃家」で使っている海老は獲れてすぐ船上で冷凍するので、品質の高い海老を鮮度・触感・味を損なわずに提供できているのですが、これも設備の整った船で漁が行えるからこそできるんです。
―ベンガル湾の海老は、他の海域で獲れたものに比べ強みがあったりするのでしょうか。
船田:湾に流れ込む大河は栄養・有機物が豊富で、餌となるプランクトンも多いため海老の肉付きが良くなります。だから、身を開いても満足感ある厚みになります。
「わざわざ開かなくても……」と思われるかもしれませんが、敢えて身を開くのも理由があります。剥き海老は、開くとソースなどと味が絡みやすくなるんです。もちろん、手間はかかるのですが、お客さまに美味しいと思ってもらうために妥協はしたくないので、海老乃家では一つひとつ手作業で加工をしています。
海老の美味しさに魅了されて。新たな海老文化を創り出す
―船田さんご自身が、「海老」に注目されたのには何かきっかけがあったのでしょうか?
船田:忘れもしませんね……レスリングに打ち込んでいた学生時代、遠征でアメリカに行ったんですよ。練習でへとへとになった後、西海岸にあるシーフードのお店に連れて行っていただいて。そこは水槽も併設していて、とれてすぐの大きな海老を窯で調理するんです。その茹で上がった海老を食べた時、「こんなに海老って美味しいのか!」と衝撃を受けまして……
船田:帰国してからもそれが忘れられず、外食時も和食・洋食・中華などジャンルに関わらず、メニューに海老があれば必ず注文して食べるようになっていました。すると、気づけば水産会社に就職しており、「美味しい海老」について深く考える日々が始まっていました。
―海老との出会い含め、運命に導かれたんですね。
船田:そうかもしれません(笑)
もちろん、初めの方は苦労もありました。生産管理から機械の調節、品質の管理まですべてを自分が行っていたので、毎日朝から晩まで水産の世界に身を置いていましたし、夜中の作業で手元がおぼつかずにけがをしてしまったこともありました。
―そんな生活を続けていたら、海老が嫌いになってしまいそうですが……
船田:不思議なもので、当時から「あの日の自分のように、海老の美味しさで感動してもらいたい!」しか考えていませんでした(笑)
私たちの強みは、水産業界の「あたりまえ」に縛られることなく自由にお客さまへのアプローチを考え続けられる点ですから、努力では誰にも負けたくありませんでした。
―不屈の想いで生み出された製品なんですね……こちら、どういった方に食べていただきたい、などはあるのでしょうか。
船田:一番ご利用いただきたい、そして実際に使っていただいているのは「共働き家庭」です。忙しくて調理に時間を割けない方が増えているのに対し、美味しいものへのニーズはどんどん高まっています。私の家も共働きなのですが、実際、商品の開発過程で妻がすごく喜んでくれたんですよ。「海老がストック出来て簡単に食べられて、しかも美味しいなら最高」と。
だから、妻と同じように忙しく働いて子育てをしている世の中の人に喜んでもらうにはどうすればいいか、が海老乃家の商品を作るうえで1つの指標になりました。
現在は、共働き家庭の方を中心とした多くの方に食べていただいています。海老好きの方からは「今までで一番美味しかった」というお言葉をいただくこともあります。
―海老乃家として目指されているゴールは、どういったところなのでしょうか。
船田:新たな海老文化の創出です。
海老は色んな料理の「具材」として活躍できるポテンシャルがありますが、主役にも具材にもなれる能力があります。なので、様々な食シーンで「この海老、他の海老と全然違う!」とはっきり分かる、想像を超える海老を提供し続けることで、「今日の夜何食べたい?」と親がきいた時お子さんが「”海老乃家の海老”食べたい!」と答える光景が当たり前になっている社会を目指しています。
現状、「海老が好き!」という人は多いのに、日常で「今から海老食べに行く!」って人がいない、不思議なギャップがあるじゃないですか。これを変えて、手軽かつ自然に美味しい海老を食べる食文化を形作っていきたいです。
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