観葉植物ビギナーにやさしい、&Greenの「手軽さ」
―早速ですが、&Greenで手に入る植物は、他の観葉植物とどういった違いがあるのでしょうか。
尾山:&Greenは土を使いません。パフカルというスポンジのような土台に根を張った植物をお届けするので、土のようにバラバラこぼれたり、手が汚れたりといったリスクを避けられる管理の手軽さが特徴です。
土よりも水分の減り具合が目でわかりやすく、「水がなくなったな」と思ったら注げばいいだけなので、毎日慎重に様子を見る必要もなくて、植物に詳しくない方も育てやすいですよ。
―スポンジに根を張っているなら、植え替えなども簡単そうですね。
尾山:はい。しかも植物用の底穴の空いた鉢ではなく、例えば家に眠っていた「可愛いけど使いどころに困っていたマグカップ」などに植えるなんてこともできます。植木鉢は形状が限られてしまっていますが、日常にある器を容器代わりにすると見え方が新鮮で、よりおしゃれにレイアウトできます。
この「気に入った植物 × かわいい器」というアレンジの自由さや、気分で簡単に器を変えたり、寄せ植えしたりできる手軽さが、提供したい価値の1つです。
―「観葉植物だ」と身構えずとも、家に迎え入れられるわけですね。
尾山:はい。ただ、&Greenの価値はこれらだけではありません。のびのびと自分らしい植物を作り上げていくことを&Greenでは「グリーンクリエイション」と呼ぶのですが、これらが多様な暮らしや環境に想いを馳せることにもつながります。ここまでを含めた一連が、私たちの提供したい「グリーン」の価値です。
―多様な暮らしや環境、ですか。
尾山:わかりやすいところだと、私たちは自社コンテンツ内でインタビュー記事の発信やブランドさんとのタイアップをしているのですが、植物についての情報だけでなく、インタビューに応じてくださった方のキャリア観やブランドが描く未来、環境問題にまつわるトピックなどの話が地続きになっています。
&Greenに興味を持ってくださった方が自然とそうしたコンテンツに触れれば、多様な暮らしのあり方や環境問題について考えるきっかけになると思っています。とにかく、ただ「売って/買って終わり」にはしたくなくて。
―なるほど……しかも、「売る/買う」の関係自体、通販かつ商品が植物だと難しそうな印象を受けます。植物って一つひとつの姿が微妙に変わるじゃないですか。
尾山:そうですね、サイトに載っている植物と姿かたちが完全に同じものをお届けするのは、植物が生き物である以上不可能です。そこで視点を変え、盆栽のように姿かたちを追い求めるのではなく、「自分に合った植物」をご提案すれば、お客さまに満足していただけるのではないかと考えました。
―と言いますと……?
尾山:自分のライフスタイル・性格に関する質問に答えていくだけで、おすすめのグリーンがわかる診断コンテンツ「Find My Green」はまさに代表例です。
お部屋の日当たりや風通し、エアコンの設定温度などを答えていくことで「あなたが”育てやすい”植物はこれ」と導く診断は今までにもありました。ただ、私たちが提供したい体験は「”自分に合った”植物はこれだ!」とわかることです。つまり、植物のスペックではなくお客さまが自分自身についてわかる診断こそが大事だと考えました。
―敢えて自分のライフスタイルを答えていく形にしたんですね。
尾山:もちろん、既に観葉植物をコレクションしている方にも&Greenを利用していただきたいですが、私たちは「植物、いいな……」と思いつつアクション出来ていない方の背中を押したいんです。土が不要なのも、水だけで育てられるのも、器を気分で変えられるのも、そういった方々が喜ぶ要素を考えた結果たどり着いたものです。
「植物の性質」が入口だとハードルが高く感じられてしまいますが、ライフスタイルにフォーカスしていれば植物について詳しくなくても楽しめます。楽しい体験を通じて、自分に合ったパートナーグリーンを見つけていただけると嬉しいです。
植物は暮らしの「パートナー」
―Instagramも不思議と「観葉植物ブランド!」という印象を受けないのですが、これも植物を身近に感じていただくために何か工夫されているからなのでしょうか?
尾山:そういう印象を抱いてくださるのは嬉しいですね(笑)
私たちは、敢えて既存の観葉植物ブランドを意識しないようにしているんです。現代における「モノの買い方」って昔とはかなり異なっていますし、コロナ禍でその変化に拍車がかかっているじゃないですか。とすると、お店に行って好きなものを選んで買うことが前提とされた、「商品写真」として植物だけをくっきりと写した写真を中心にするのは、後発である私たちが今からすすんで取り組むことではないかなと思いまして。
尾山:なので、SNSやネット上でたまたま見かけた方に「あ、これかわいい」「フォローしよう」と思っていただけるよう、空気感のあるフラットな撮り方・背景色・トーンを大切にしています。
―だから、初めから観葉植物を探し求めている人だけでなく、「植物とかあったらいいかもな」とライトに考えられている方にも&Greenの情報をお届けできるのですね。サービスでも、工夫されたポイントはあるのでしょうか。
尾山:「スッキリ/モサモサ/ドッシリ」「カラフル/シンプル/パターン」など、フィーリングで検索して「あ、これ好きかも!」と思える植物に出会えるのも他にはない魅力だと思っています。植物の種類って膨大ですから、「○○が欲しいな」と最初から狙い撃つのって難しいですし。
尾山:さらに、好きなものが「何となく」で分かっている方には、組み合わせを自由に変えて自分の好きなセットを作れるCustom Set。「こういう気分だな」くらいの温度感で欲しい植物は浮かんでいない方には、&Green側でテーマ別にまとめ上げたOriginal Set。どんな状態の人でも難しく考えず、自分に合った植物に出会えるようなラインナップにしています。
―テーマに沿って植物をセットにするのって、「植物博士!」みたいな人じゃないと難しそうな印象も受けるのですが、大変ではないですか?
尾山:それで言うと、&Greenを立ち上げた当時は植物に全く詳しくなかったので、まさに&Greenがお役に立ちたい「植物を家に置きたいけれど、ハードルが高く思えて手を出せずにいる人」でした。だからこそ、お客さまと同じフラットな目線で「こういうテーマのものがあったら嬉しいな」と思ったものをセットで提供できているのだと思います。最近だと、動物を飼っていらっしゃる家庭のために「ペットを飼われている方におすすめ」のセットを作ったのですが、そういったお探しの方が多くいらっしゃったのか、大きな反響がありました。
尾山:ただ、目線がフラットな分、「これセットにしたら可愛くなりそう!」と思ったものに限って、生産が難しい品種だったり、手に入りにくい品種だったりするのがネックですが……それくらい、自分の気持ちに対して正直に選んでいるからこそ、植物に対して同じ想いを抱いていたユーザーさんにも愛してもらえているんじゃないかな、なんて思います。手前味噌ですが(笑)
―私、Find My Greenでパートナーグリーンは「寡黙なミステリー小説家」と診断されたんですが、思うと&Greenではサービス全体を通じて観葉植物を「パートナーグリーン」と人のように表現されていますよね。
尾山:植物って、人工物ではなく生き物じゃないですか。なので、ペット・家族と同じように「生活上のパートナー」として接すると、愛着が湧くんですよ。
もちろん、部屋がおしゃれになって気分が上がる・緑が目の保養になって作業効率が上がる、といった機能的メリットもあります。でも例えば、厳しい環境でもすくすく育つ品種のパートナーグリーンが家にいると、くじけそうな時ふと視界に入って「あぁ、この子はこういう植物だったな」と思い、立ち向かっていけそうな気がしてくるんです。
生き物としての情緒的な「意味」が乗ってくると、ただのおしゃれなインテリアという位置づけではなくなります。だから私たちは、「パートナー」という言葉を大切にしています。
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