フィンランド政府観光局によるコンセプト監修
―ヴィヒタタオルは機能性以外にも「自然との調和」を重視されているそうですが、それは一体なぜでしょうか。
池永:本場フィンランドのサウナは、周りを大自然に囲まれています。白樺の林の中、湖の畔にサウナ小屋が建てられていて、温浴中はヴィヒタでウィスキング(ヴィヒタやアロマなどの道具を使って、体験者の血行を促進させる健康法)し、後には体を冷ますために湖上の氷穴にダイブします。
ですが、日本のサウナや都会においては自然に隣接した環境を完全に再現するのはかなり難しいんですよね。日本にあるフィンランド式サウナの施設でも、ウィスキングができる場所はかなり限られてしまいます。なので、サウナと切り離せないフィンランドの自然を代替・象徴するものとしてヴィヒタタオルが機能すれば、本場フィンランドのサウナ体験に近づけるんじゃないかと思いまして。
ーそのこだわりが一番表われているのは、ヴィヒタタオルのどの部分でしょうか。
池永:ユーザーが手に取ってすぐに感じられるのは、素材の工夫だと思います。ヴィヒタタオルは使ったときにさらりとしているのが特徴で、綿だけを使えばふわふわの手触りになるところ、綿だけではなく白樺の素材を混紡したレーヨン糸を用いることでしっとり感とツヤを出しました。
また、白樺レーヨンと綿では糸の染まり方が違うので、敢えてその違いを残すことでまだらのような美しい文様を表現しています。
サウナファンの方でも、仕事のある平日にはサウナに行きにくく、行けても週一くらいのペースになってしまうのが多いと思います。だからこそ、その楽しみにしている至高の瞬間に、フィンランド式サウナの象徴ともいえる白樺を感じられるグッズをそばに置いて、充足感を高めてもらいたいなと。
―ちなみに、企画者である池永さんにとって、ヴィヒタタオルで一番の推しポイントはどこになるのでしょうか。
池永:機能性・デザイン以外で言うと、「トータルサポートできる」というのも隠れた魅力です。サウナでは身につけるものが限られ、携行するものがより自身を表すことになりますから、ファッション性も大事にしています。愛着のあるものはセットで揃えたくなると思いますし、タオルとハットでコーディネートして統一感を出せると気分も上がります。だからハットとタオルは同タイミングで考え始めました。
特にハットは非常に人気ですね。サウナに馴染みのない人からすると意外かもしれませんが、有名なサウナ施設に行くと浴室内でハットを被っている人は多いですし、どんどん増えてきている印象です。
―このヴィヒタタオルはフィンランド政府観光局監修のもと制作しているそうですが、フィンランドの方と連携するうえでコミュニケーションなどには苦労されましたか?
池永:苦労どころか、フィンランドサウナをフィーチャーした点に非常に興味を持ってくださり、こちらの想像以上にご協力いただけました。
例えば、ヴィヒタタオルのカラーは「ヴィヒタ(白樺の小枝を束ねたもの)」「カーモス(極夜)」など、全てフィンランドを象徴する色になっています。これらは、大使館の方々と相談したうえで選び抜いた色です。概念としては知っていても、本場のフィンランドサウナでの体験はやはり現地の人が一番知っていますし、経験談を聞くことで何を落とし込むべきかのイメージがより立体的になりました。
白樺を糸に練り込んだこと、敢えて色ムラが出るデザインにしたこと、どれも「これでいくのが我々としてもよいと思う」とレビューを都度いただきながら、ヴィヒタタオルは完成しました。
―商品の細かい部分以外のコンセプトなどもフィンランド政府観光局の皆様と話し合いなどは重ねられたのでしょうか。
池永:そうですね。「自然と一体となる」というコンセプトも、自然のいち要素にサウナがあって日常に溶け込んでいる・自然への敬愛があるというフィンランドの皆様の価値観をうかがえたからこそ、それをプロダクトとして体現させようという方針決定に至りました。ビジュアル・機能性・込めたメッセージ……どれも監修いただいて公認をうけています。
池永:フィンランド政府観光局は、フィンランドを広報し本国に旅行する人を増やす活動を展開している公の組織なのですが、商品レビューする際、誤ったイメージを生むものには確りとNGを出し修正を依頼すると伺っています。
彼らが今治の伝統産業に興味を持ってくれて、共に1つのブランドを創り上げてゴーサインを出してくれた……これは私たちとしても誇らしいですし、だからこそ私たちは自信を持ってヴィヒタタオルを展開できています。
フィンランドの人々の毎日に溶け込むサウナが日本に住む私たちにとってもっと身近になって、フィンランドの文化により理解を深めるきっかけになってもらえれば、私たちとしても非常に嬉しいですしね。
ヴィヒタタオル、フィンランドサウナの未来
―サウナ好きとして「ヴィヒタタオルをもっとこうしたい」という想いをお聞かせください。
池永:ヴィヒタタオルは玄人向けの商品として、機能性にこだわったプロ仕様からスタートしています。形状ひとつとっても伝統を無視しておらず、プロダクトの種類としてもハットやタオルなどサウナの核となるものから開発を始めました。卸すのもフィンランドサウナがある有名な温浴施設が中心でしたし、こちらから選んでいるというよりむしろそういった施設が注目して声をかけてくださりました。
しかし、サウナを楽しむ人が増える中で、「サウナ体験がサウナだけでは完結しない」という認識が広がってきているのではないかと感じています。
―サウナだけでは完結しない……とはどういうことでしょうか。
池永:「サウナ施設の館内でどうリラックスするか」「野外サウナのテント外でどんなアクティビティを楽しむか」など、交互浴を中心としながらもサウナを楽しむ時間軸や幅が広がっているんです。
だから、そういった包括的なサウナ体験をサポートできるラインナップをマルチに展開していきたいと思っています。前者で言えばさらりとしたマスクやスリッパ・靴下、後者で言えばポンチョなどですかね。
池永:サウナを気にしたことがない人が興味を持つきっかけになるよう、ファッション性など、間口を広げていく予定です。そこからヴィヒタタオルの製品を通じてフィンランド式サウナにどんどんハマっていただきたいですね(笑)
―ちなみに、そういったお客さまとの接点を増やすために予定していることはあるのでしょうか。
池永:わかりやすいもので言えば、東京都以外への展開でしょうか。直近の予定では、フィンランドサウナの多い北海道で、ハートウエルの社員がサウナ施設を行脚します。北海道や長野は、フィンランド日本の中ではフィンランドに近い環境で、白樺も自生していますし自然に隣接したサウナもあります。そういうところでヴィヒタタオルと出会っていただけたら素敵ですよね。
現地でしか買えない各温浴施設のロゴ刺繍入りの限定商品や特注カラーのヴィヒタタオルも展開していますので、是非探して楽しんでもらえればと思います。温浴施設から、連絡いただいてコラボ商品や別注品のお話をいただくことも多々ありますし、そういった施設のスタッフの方はサウナ愛が強く、ヴィヒタタオルのコンセプトを自ら語ってくださいます。
池永:普通なら、メーカー側が「こういう風に売ってください」と説明するのですが、そういった温浴施設の方は私たちが働きかけずとも既にヴィヒタタオルのストーリーやこだわりに共感してくださっているので、皆さん熱を持って語ってくださるんです。だから、地方に展開しても私たちの想いは使い手の方にも自然と伝わるものと確信しています。
―フィンランドサウナ、そしてヴィヒタタオルがこれから日本でどう広がっていくか、池永さんの想像する未来を教えてください。
池永:今、フィンランド式のサウナ施設は、どんどん増えてきています。アウトドアがブームを迎えていますが、要因というか根っこの部分は同じです。自然に触れ合う機会が減少し、心身ともに疲労しやすい現代の日本人の生活に必要とされているのだと思います。
その一方で、サウナにジャンルがあることや、フィンランド式サウナの違いや文化的背景はまだまだ知られてない部分もあると思います。サウナの楽しみ方は人それぞれで良いと思いますが、やはり自分にあったジャンルがあると思うんです。自然と密接していることをはじめとしてフィンランド式サウナへの理解が進み、たどり着くべき人がきちんとたどり着いてくれるといいですね。
そして、フィンランド式サウナに愛着を持って、心身ともに健やかに過ごせる人が今まで以上に増えると嬉しいなと思います。ヴィヒタタオルとしては、まさにそのきっかけとなり、愛着をもっていただくことに貢献できれば、造り手としてはこれに勝る喜びはないですね。
-
- 5
- 1
- 1