フィンランド式サウナは、心身を解放する
―ヴィヒタタオルはサウナを愛する方のために生まれたそうですが、そのきっかけは何だったのでしょうか?
池永:私たちハートウエルは「暮らしと心を、タオルで自由に」というコンセプトでタオル製品を開発しています。
新型コロナウイルスによる世の中の閉塞感がピークだった頃、その閉塞感を吹き飛ばすための手段を探していました。当時、友人の影響を受けて私も熱心にサウナに通い始めた頃で、「これって一番心身を解放できるのでは?」と思ったのがヴィヒタタオル開発のスタートです。
―その中で、日本ではなく「フィンランド」に注目したのは、どういった経緯なのでしょうか?
池永:フィンランド式のサウナの考え方が、ブランドとしてやりたいことにマッチしていたんです。
まず心身の解放・リラックスといったとき、まず「人とはしゃいでストレスを発散する」という方法があります。でも、コロナ禍では人と一緒に盛りあがるなんて難しいですし、であれば”一人でデトックス”という方向かなと。
日本式のサウナは、大衆浴場の「浴槽」がそのままサウナに置き換わった感じですよね。テレビも備え付けられていることも多く、自分以外の人や物に、つい意識がいきがちです。一方フィンランド式のサウナでは、明度やセルフロウリュなど、没入感を得られ、自分と向き合って、リラックスできる環境が整えられています。
また、そこに白樺の小枝を束ねたヴィヒタをはじめとして”自然”が登場します。フィンランド本国では森の中にサウナ小屋が建てられていて、火照った身体をヴィヒタで叩いて血行を促進して、湖に飛び込んでクールダウンして……と、本当に自然と密着しているんですよね。
「心身の解放」をテーマとした際に、フィンランド式のサウナとその象徴であるヴィヒタがイメージと重なり、白樺の繊維を生地に織り込んだヴィヒタタオルの開発へと繋がっていきました。
―池永さんがフィンランド式のサウナに初めて出会ったのは、いつ頃なのでしょうか?
池永:それが、「気づいたら」なんですよ。日本式/フィンランド式という区分を知らない頃から通っていた今治のサウナが、ちょっとした竹林の中にありまして。仕事で忙殺されている時期、その場所は、自分をリセットする大切な場所でした。自然に囲まれた環境で、難しいことは置いておいて、思考せずに自分の身体の変化だけを感じていられるんです。サウナについて詳しくなっていくにつれて、そこでの経験がフィンランド式のサウナと結び付いていきました。
サウナ室内の入浴時間や温度、ロウリュや水風呂のタイミング、……これらについて人のペースを気にする必要がないことは、脱力感や入浴後の充実感に大きく影響します。
―フィンランド式のサウナでのリラックスは、いわゆる自宅で行う瞑想と近いのでしょうか?
池永:家で瞑想すると、近づくのは「無の状態」なんですよね。でも、サウナには身体の変化が伴います。熱い、冷たい、ウィスキング(ヴィヒタやアロマなどの道具を使って、体験者の血行を促進させる健康法)の刺激など、動物的に「ただ感じている」状態が続きます。その中で、自然物の作用を受けながら、身体があること、生きていることをしっかり感じられるというか……。そういった意味では瞑想とは異なると思います。
都会などで日々忙しく過ごしていると、頭を使うことばかりで、身体の実感が失われがちです。でも思考や心の部分は身体と密接に関係しています。普段押されない身体のスイッチを起動することで、心も軽くなる。ちょっと大げさにいえば、それで人生が少し良くなる。そういった可能性を秘めているのが、フィンランド式のサウナだと思います。
―フィンランド式のサウナに行ったことのない方々は、残念ながらまだ多いと思います。そういった人々に、どういったときに足を運んでほしいですか?
池永:大きく分けて2つのタイミングがありますね。1つ目は、日常で忙殺されているときですかね。心身をリセットしてくれるフィンランド式のサウナは、日常の様々なものから自分を切り離して頭や体を切り替えたい時にピッタリだと思います。
2つ目は一人旅です。「自分だけのひととき」とフィンランドサウナは相性が良いので、一人旅を充実させてくれる手段になると思います。特に北海道の宿泊施設などは素晴らしいフィンランド式のサウナを備えている所が多いです。白樺が根付いていることもあってか、意識して歩いてみるとその数に驚くはずです。サウナがある施設に着目して旅に出るのも面白いと思います。
―サウナにハマった時、ぜひこだわってほしいグッズはありますか?
池永:タオルが大事だというのは皆さんイメージしやすいと思うので、それ以外で言うと……まずはハットです。「サウナに長く入りたい」と思ったとき、ハットを被ることで得られる効果があります。のぼせにくくなりますし、頭皮や髪が傷んでしまうことを防いでくれるため、頭部を熱から守れるハットがあると安心です。
それに、裸一貫で楽しむサウナに好きなアイテムを持っていけると、シンプルに満足感が高まりますね。機能面だけでなく自分らしさをさりげなく出せるアイテムとしてもハットはオススメです。
池永:あとは、パーソナルマットなんかもこだわると良いと思います。デザインはもちろんですが、衛生面の観点からも自分専用のものを持つ人が増えてきた印象です。
というのも、新型コロナウイルスの影響もあってかサウナに備え付けのサウナマットを除菌して繰り返し使うことが気になる方もいらっしゃるようで……マスクを着けてサウナに入りたいという人がいらっしゃるのも、似たような理由かもしれません。こだわればこだわるほど+αで揃えたいグッズは増えるはずです(笑)
サウナファンが納得するヴィヒタタオル
―フィンランドのサウナの象徴となる商品を開発するうえで、最もこだわったポイントを教えてください。
池永:サウナに愛着がある方は、「ヴィヒタ(白樺)」と聞けばきっと気になるはずです。そのため、そういった人たちが試したときに納得できる、言い換えればサウナ体験の価値を最大化できる「プロ仕様の機能性」には妥協しませんでした。
例えばサウナハットでいうと、自在に視界の遮蔽性を調整できるつばでサウナに集中できるものに仕立てたり、サウナに設置されているフックにかけられるループをつけたり。シルエットも頭の形状に合わせて設計し、どんな人にでも窮屈過ぎずぶかぶか過ぎず、フィットするように計算して作っています。
―形状にかなりこだわっていらっしゃるのですね。ハットだけでなくタオルも形がポイントなのでしょうか。
池永:タオルで特に力を入れたのは、厚みと長さですね。サウナで使うタオルは、吸水性が高すぎるとむしろモタッと鬱陶しくなってしまいがちです。そのため適度に水を吸う、身体に触れた時に気持ち良いさらっとした質感の生地を目指しました。
タオルのサイズは、浴室内用としてはスリムバス(34×110)とフェイス(34×80cm)の2サイズを用意していて、首から提げたときや膝の上に置いたときの両方で最適だと感じる長さで設計しています。
また生地の厚さは、浴室内と浴後の両方で使えるオーソドックスな厚さのもの、浴室内専用で絞りやすい極薄のものを用意し、温浴施設での使い勝手を考慮しています。
―「サウナ愛好家が納得できる」と判断する基準などはあるのでしょうか。
池永:手前味噌ですが、まずは私自身が実験台となり、実際にサウナ施設で試してみることで全ての商品をレビューしています。やはり自身で使ってみることで分かることや気づくことがあります。またそれだけでは終わらずに、専門家やサウナ初心者の社員も含めて複数の人に使ってもらって、その意見を精査して製品に反映しています。
というのも、私たちが製品を通して実現したいのは「使い手の心身の解放」なんですよね。だから、私だけが納得しても意味がないと思っています。
ユーザーの使い勝手を考慮した機能性、込めた想いの紡ぎ方、ビジュアルの美しさ。これが新商品開発で必ず押さえるポイントですが、完成度を担保するためには、独善的にならずに異なる視点を取り入れることが大切だと考えています。
池永:ヴィヒタタオルとしては、愛好家の方のこだわりには確実に応えつつも、これからサウナを知っていく方も含め幅広い層に支援される姿を目指したいと思っています。サウナへの間口も広がっていますし、実際に施設に足を運ぶ人も本当に様々になってきています。ずっとサウナが好きだという人もいれば、よくわからないからとりあえずマニアの友人と一緒に行ってみる、なんて人もいるでしょう。
サウナへの関わり方や、楽しみ方は多様化していますが、ヴィヒタタオルとしてはその良質なサウナ体験の伴侶でありたいです。「フィンランド式のサウナに行く際はヴィヒタタオル」と自然に思ってもらえると嬉しいですね。
そのためにも、「ユーザー視点」は忘れず貫いていきたいです。私を含めてハートウエルの社員自身がお客さまと同じ体験をする。プロやユーザーにテストしてもらい積極的に製品に取り込む。妥協せず開発し、自信をもった品をお届けすることで「暮らしと心の自由」「心身の解放」というハートウエルとヴィヒタタオルのコンセプトの実現を目指していきます。
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