もくじ
期待を超える“Oh!”の連続でたどり着く、最高の満足
―Oh my teethが目指されている「未来の歯科体験」を実現するうえで、特に変えたい「既存の歯科体験」のポイントはどこになるのでしょうか。
西野:2つありまして、まずはUXです。例えば、ビジネスパーソンが今すぐにトラブルを解決したくても待合室で長い間待たされてしまったり、当日の予約は電話必須と言われたのに電話がつながらなかったりということがあったら、気軽に「歯医者に行こう」とは思えませんよね。
そこでOh my teethでは、必要な各種検査を実施する無料歯型セッションの予約を、LINEから簡単に行えるようにしました。完全予約制なので待ち時間もゼロ。30分で必ずスキャンもレントゲンも終わるように逆算してサービスを設計しています。おかげさまで「本当に30分で終わるんですね!」という声をたくさんいただいています。
西野:もう1つは「患者-ドクター間の情報格差」ですね。歯医者で治療内容に関する説明が少なくても「“先生”だしお任せしておこう」といまいちわからないまま進んでしまう、なんて経験ありませんか。
きっと、治療を受ける私たちに専門的知識がない前提で気遣ってくださっているのだとは思うのですが、とはいえ治療の全体像がわからないまま通うのは不安ですよね。
―ユーザーにとっての「負」にもつながるような当たり前が残る歯科の世界に、西野さんが注目したきっかけは何だったのでしょうか。
西野:小さい頃から漠然と「歯医者さん」に抵抗があって、歯に問題が生じても放置、なんてことも日常茶飯事でした。でも、耐えかねていざクリニックに行ってみると先生に怒られて、また行きづらくなって……といった悪循環に陥って。自業自得と言われたらそこまでですが、こういう人って一定数いると思うんですよ。そこで考えたんです、「歯科がもっと気軽に行けるものになったらどんな世界になるんだろう」って。
思えばこの十数年で、僕たちの身の回りはとてもスマートになりました。スマホでいつでもインターネットと繋がれる、支払いも現金からキャッシュレスに。にもかかわらず、歯科体験は大きく変わっていない。ここに歯科と私たちとの間にある壁の原因があるのでは?と感じ、エンジニアであった僕は歯科業界をテクノロジーで再設計したいと思いました。
西野:矯正に関して言えば、「緊急性」も1つの論点だと思っています。例えば、虫歯には歯の痛みという具体的なペインがあるので緊急性が高く、「すぐ病院に行こう!」となりますよね。
でも歯科矯正の場合、「自分は矯正するべきなのかな?」「もっと歯並びがよくなったらどうなるんだろう?」と思うものの生活に支障はない、というケースが多いんです。そのため、もし悩みが深刻だったとしても、「緊急性・必要性」と「マイナスイメージ・思い込み」が天秤にかけられ、結局保留されることが多いんですよね。その「マイナスイメージ・思い込み」を覆せる第一歩が、Oh my teethのマウスピース矯正だと思っています。
西野:もちろん、いい口コミが増えれば増えるほど、当然ハードルは上がっていきます。それでも思わず「Oh!」と言ってしまうような驚きを提供して、その人に未来の歯科を体験してもらうことが、僕たちの使命です。「おぉ、こんなにサクッとできる時代になったんだ!」「おぉ、これならもっと早くやっておけばよかった」「おぉ、歯医者ってこうなっていたんだ!」と。
―それがOh my teethの由来にもなっているのですね。
西野:ブランド名って生活者との最初の接点で、知った段階からずっと呼ぶものですよね。だから、「ユーザーに言ってほしい」ことを入れたかったんです。そこで、先ほどの「Oh!」と言って欲しい想いのもと、目標を名前に入れ込むことで、いつでも初心に帰れるようにしました。「Oh!」と言ってもらう、つまりユーザーの期待値を超えるために努力することは、メンバーの評価制度の1要素にもするくらいOh my teethでは重要なマインドです。
「未来の歯科体験」の未来
―今後のOh my teethの展望も伺ってよろしいでしょうか。
西野:2030年までに4人に1人が、我々が生み出す新しい歯科体験を享受している世界を目指します。その第一歩として、3年以内にOh my teethがプロデュースするクリニックを70店舗まで拡大させます。並行して歯科矯正以外のあらゆる歯科体験もアップデートしていき、アジアNo.1のオーラルテックベンチャーになりたいんですよね。
―やはり核となるのはOh my teeth専門クリニックなのですね。
西野:そうですね。Oh my teeth専門クリニックでの体験が最もOh my teethを象徴する部分だと思うので。LINEを使って15秒くらいで予約できて、待たずに治療を受けられて、30分できちんと終わる……予約から始めるシームレスな全体験は、今までの歯科体験と一番違いが分かりやすいところではないでしょうか。
あと、空間づくりとして「今までの“歯医者さん”と全然違う!」と驚いていただくための工夫は徹底しています。言葉遣い一つとっても、“先生”は付けず全員“さん”付けにしていますし、受付・衛生士・先生と壁がある感じではなくフラットな関係性が分かるようにしています。
―ちなみに、Oh my teethの目指す「未来の歯科体験」に理想像のようなものはあるのでしょうか。
西野:あるとも言えますし、ないとも言えます(笑) というのも、なぜ僕たちが「未来」と冠しているかというと、「現時点で想像できる以上のもの」を目指しているからなんです。
例えば、今思い浮かぶ理想の歯科体験って、予約なしで待たずにスムーズに行けて、どんな治療もすぐに終わって、そもそも行く必要もない、などが挙げられると思います。でも、これって「今想像できること」に過ぎないですよね。なら、本質的に未来とは言えないのではないか、と思っていて。
―本質的に未来、ですか。
西野:「紙を減らすために電子カルテに切り替えていこう!」といった次元でなく、メンバー全員で「未来とは何か」から考えてサービスをアップデートし続けています。わかりやすい例として、社内では「歯医者っぽい/ぽくない」という言葉がよく飛び交っていますね。
西野:先日、小さいお子さんから「お母さんとストアに行ってもいいですか?」と言っていただいたことがあったんです。Oh my teethを「歯医者さん」って思っていなかったんですよね。そのリアクションはまさに理想で、僕らが目指しているのはApple Storeなんです。毎日新しいパソコンを買いに行くわけではないのに、フラッと行ったらイベントやワークショップを開催しているあの空間、わくわくしますよね。
多くの人はパソコンが壊れたときだけ修理のために行き、あとは一部のギークが集う「PCショップ」の概念を変えたわけですよね。これを、歯医者の世界でOh my teethは実現したいです。
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