もくじ
緊張をほぐして、モノと人を結ぶタオル
―CUOLのUにはunwind(緊張を解きほぐす)という意味が込められているんですよね。これはユニークですが、日常では皆さん緊張しているのでしょうか?
木村:メイクをしているときは人の目に触れることも多く、お仕事などで「戦闘態勢」になっている方も多いのかなと。なので、メイクを落としてタオルで包まれる瞬間には、「あぁ、やわらかい、あったかい」以外考えなくていい状態になってほしいんです。CUOLでお客様を緊張から解放することで、一日の中で最もほっとできる時間にしたいです。
―ハートウエルの企業コンセプトに「自由に」とありますが、こちらはCUOLのUnwindとも通じているように感じます。ハートウエルの「自由」とはどのようなイメージでしょうか?
池永:ユーザーは、「良いタオル」ではなく具体的な課題が解決され「暮らしや心が豊かになる」ことを望んでいると思っています。
今の市場にあるタオルは吸水性・柔らかさなどを訴求ポイントとし、「お風呂上がり」「お手拭き」など決まりきったシーンに向けて開発されたものが多いように感じています。結果、「ふわふわ」「雪のような触り心地」などの風合いを推した、似たようなプロダクトが溢れている状況です。でも、ユーザーが欲しているのは柔らかいタオルだけではないはずで……。
そこで、しっかり分けた個々のニーズに対し様々なタオルの特性を生かしたプロダクトを提供していくことで、お客様の心に訴えかけられるのではないか、と仮説を立てたんです。
CUOLで言えば、日常のちょっとしたわずらわしさ、肌の悩みを日常のひと手間で解決することで、お客さまの心が解放され、自分らしく「自由」になるのではないか。2年くらいかかりましたが、お客さまの反応もよく、今では「仮説は正しかった」と実感しています。
こうした体験を生むためにも、生活者像と特定のシーンを定めて「機能的価値(利便性)」「美的価値(外観)」「情緒的価値(共感)」という3つの観点を常に意識して全ての商品を開発しています。
「タオル」というメディアを介してつながりを生む
―90周年という節目で企業のビジョンやコンセプトを一新しましたが、その背景や込めた想いを教えていただけますか?
池永:90年間のモノづくりで培った技術力やモノへのこだわりは、ハートウエルのアイデンティティです。とはいえ、もう「ただ良いモノを作れば売れる」時代ではありません。だから、メーカーとしての役割を再定義する必要がありました。
そこでハートウエルの考え・伝統を見つめなおしたとき、私たちがモノを作った先にあるユーザーの生活や心を見据えてきた事がより大事になると改めて思ったんです。
これを踏襲しつつ、作ったモノをある種メディアのようにしてお客さまと関わり、体験による価値を提供する……そういうところまでをメーカーの役割と捉え、「タオルコミュニケーション」というビジョンを定めました。
タオルって水を含んだり、肌と触れたり、人から人へ贈ったり、贈られたり……人と何かの間に介在するメディア的側面があるんですよ。それをもっと広げて、色んなビジネスにおいてもメディアとして機能させたくて。
例えば、ハートウエル自身がカフェやホテルを運営して、その中でタオルを体験してもらって、うちのファンになっていただいて、最終的には自分のモノとして買っていただく……なんて流れを作れたら素敵ですよね。
モノ作りや工場自体をオープンにして色んな人と繋がって、利益も大事ですが数値化できない部分でも喜んでいただけるような体験を生みだしていきたいです。
木村:モノと人だけでなく、モノとモノも結び付けています。今治タオルを枕カバーと掛け合わせた「枕カバーで始めるスキンケア」シリーズや、フェイスマスク と掛け合わせた「備長炭スチームマスク」がいい例ですね。
現在は、大人より毛羽に敏感な赤ちゃんのために「毛羽がつきにくいガーゼ 」を作ろうとしていて、色んなところからガーゼを取り寄せて検証している最中です。
―新製品の開発も積極的にすすめていらっしゃるのですね。そうして開発したプロダクトが、ハートウエルの掲げる「ダイナミックな機械と、職人の細やかな手作業を組み合わせ」によって形になっているということでしょうか?
池永:そうですね。例えばCUOLは通常より細くしなやかな糸を使っているのですが、当然糸は細くなればなるほど切れやすくなりますし、切れると自動で織機が停止し生産も進まなくなってしまいます。
そのため、織る工程で職人が糸に合わせて織機を逐一調整しています。
また、モフッとした質感を出すための長いパイルも、染色や縫製の作業中に機械などに引っ掛かってしまうと商品がダメになる可能性がありますから、織った後も人の目と手を使った丁寧な加工が重要になります。
乾燥の工程も、CUOLの風合いを損なわないように人が温度や時間を調整して、繊細な加工を行っています。
このように、生産性が高い機械に人の細やかさを加えることで、ユーザーに自信をもってお届けできる品質を追求しています。
木村:新聞やYouTuberの方にご紹介していただくと、あっという間に枕カバーの在庫が尽きて売り切れてしまうのですが、丁寧ゆえに製造がしばしば追いつきません。
工場として生産性を高めていくことも大事なのですが、満足いただける品質で送り出すためにも、要所では惜しまずに人の手を掛けていく姿勢は変わらないはずです。きっと、製造過程をご覧になると「こんなに手作業多いの!?」と驚かれると思います(笑)
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