"アプリ屋"Otomoniが提案する、クラフトビールの無限の楽しみ方【後編】

2021.10.27
Otomoniは、国内外あらゆる土地のクラフトビールをユーザー好みのセットでお届けするサブスクリプションサービス。開発者の金澤 俊昌さんが、Otomoniと共に過ごす日常で得られる無限の可能性と、クラフトビールで提供する未知の可能性について語ります。
ブランド
オトモニ / クラフトビール/サブスクリプション/パーソナライズ
ブランドが大切にしている想い
当たり前を超えて
Art&Culture
誰もがわたしらしく
Diversity&Inclusion

アプリ屋ならではの発想。起点はいつでもOtomoniユーザーの声

―前編ではOtomoniの誕生の背景を伺いました。次に、Otomoniを利用することで得られる体験を伺ってもよいでしょうか?

 

金澤:まずは、新たなクラフトビールとの出会いです。基本的に月に12種類、つまり年144本のクラフトビールを開拓していただけますので、気づいた頃には、たとえばお酒を紹介するYouTuberさんより多くの種類を体験できていると思います。

次に、知らなかった自分との出会いですね。私自身、以前はホワイトエールとかヴァイツェンとか好きだったはずが、いつの間にかW-IPAなど苦味が重めのタイプが好きになっていて、自分の好みを発見しました。「気づいていなかったけどこの組み合わせ好きなんだ」「柑橘系は苦手なんだ」「アロマホップを使っているものを好きになりやすいんだ」など。持っている情報だけをもとにした好みや価値観が、数多くのクラフトビールを体験することで整理されていきます。

Otomoni創業者の金澤俊昌さん

 

金澤:あと欠かせないのは、ブルワリーさんとの出会いです。ある曲を好きになって、そこからアーティストを好きになるのと同じように、クラフトビールを好きになってから「作り手ってどんな人なんだろう」「どこで作られているんだろう」と興味が発展して。
しかもその土地が地元や行ったことのある場所なら、愛着が強くなることは必然ですよね。地元で作られているクラフトビールにも意外と知らないものがあったりして、「知っている場所」で「知らないこと」を再発見できるのは一つの楽しみです。

 

―提供するクラフトビールに明確な基準を設けていないそうですが、そこにも理由が?  

 

金澤: 1つのビールに最高評価と最低評価が同じ量ついていることもあるくらい、好みが千差万別だからです。好きなビールがある方なら、ECサイトなどから自分で商品を選んで買います。しかしOtomoniには「選ぶ」行為がないぶん、ふだん手に取らないクラフトビールを6本お送りするので、「あなたにとっておいしいビール」を厳選するためにあらゆる選択肢を残しています。 

 

―ゲーム感覚で楽しめるアプリのUIが素敵ですよね。アプリでの体験も大切にするのは特別な想いがあるのでしょうか。

 

金澤:実は、僕たちの会社は元々「アプリ屋」として、ユーザーのデータから最適な料理をレコメンドするアプリなどを作ってきました。アプリを主体にすると、ユーザーさんとのコミュニケーション・サービス設計はどうなるだろう、という起点で普段から考えるので、他社さんではなかなかできないアプローチができているのではないでしょうか。

 

金澤:今後は蓄積したデータをユーザーの体験に還元できるように、配送内容や好みだけでなく、「レビューをビアスタイルごとに並べていくとこのスタイルが一番好みに合っていそうだよ」とその人の好みを可視化したいと思っています。

 

―「夜勤明けセット」などのユニークなキュレーションもOtomoniの魅力ですが、こうしたセットにはどうたどり着くのですか?

 

金澤:特定のシーンを想起させる企画・セットはお客さまの声から生まれています。SNSを見ていると、「夜勤明けに飲みました」という意見がありまして。実際にアンケートをとってみると、「夜勤明けにガッツリした物を食べながらお酒を飲みたいから、そのシーンに合うセットを作ってほしい」とのご要望があったので、「夜勤明けセット」を作成しました。1700種類のビールを扱っているからこそ、無限のセット・企画を世に出せます。

 

金澤:特に思い出深いのは「ネコの日セット」ですね。猫とクラフトビールを一緒に撮ってSNSにあげてくれる人がいて、うちのお客さまって猫好きな人が多いのかな?と作ったんですよ。そこでラベルに猫が描かれているクラフトビール6本と、グラスに乗せられる猫のフィギュアをセットにして、2月22日に「ネコの日セット」として販売したら、すぐに完売しました。

2月22日に発売された「ネコの日セット」

 

―同梱物もこだわっていらっしゃいますが、そこにはどんな意図があるのでしょうか。

 

金澤:届いたクラフトビールをより楽しめるアイテムを一緒に送っています。クラフトビールと共に遊べるボードゲームや、直近では「読書の秋」にちなんでビールのカラーチャートがあるしおりを作りました。

あとは、ブルワリーさんから寄せ書きをいただいて、それに返信用封筒・ハガキ・ブルワリーさんの住所一覧を添えてみたところ、ブルワリーさんからお手紙が届いたと嬉しい報告がありました。

Otomoni同梱物のコースター

 

―お客さまやブルワリーさんとの「距離の近さ」って大事な一方、実現するのが難しいと思うのですが、Otomoniはそこがすごく絶妙ですよね。

 

金澤:理想としては、コミュニティを「作る」のではなく、コミュニティに「なりたい」です。お客さまをコントロールしようとは考えていなくて、自発的にそういった動きをしていただけることを大切にしています。

とはいえ、社内ではむしろお客さまとの距離がまだ遠いと思っているので、「Otomoniの中の人」は少しずつ露出を増やす予定です。やっぱり、気軽に話せる距離感にいたいじゃないですか。僕らも「クラフトビールへの知的好奇心を満たしていくものって何だろう?」と探して、発見したら伝えたいですし、お客さまが発見したものは共有してほしくて。
やりとりがインタラクティブであればあるほど、クラフトビールの世界って広がっていくと思うんですよね。

調べて買わずとも、気づいたら「これが好き!」と言える世の中へ

―キャンペーンやコンテンツを企画する上で大切にしている価値観・ポイントはありますか?

 

金澤:業界の常識に縛られないコミュニケーションですね。「クラフトビール」と呼ばれるようになったのは最近で、元々は「地ビール」という狭い業界です。それもあってか、既存のキャンペーンは「あの有名なブルワリーが作りました!」など玄人向けのものが多いです。
でも、生活者の大半はクラフトビールに詳しくないからこそ、まずは「手を出してみよう」と思えるきっかけになるキャッチーさは意識しています。企画も、僕らが100%作り上げて提供するのではなく、お客さまと僕らが一緒に作り上げて完成する「遊べる要素」を入れています。

昨年ユーザー参加型で作成したオリジナルビール「無限HAZY IPA」

 

―Otomoniを楽しんでいくと自然にクラフトビールに詳しくなりそうですね。

 

金澤:そうですね。まさにOtomoniを楽しんでいると新たな趣味ができると言えると思います。「これが趣味です」と言うハードルって、年々上がっている気がするんです。「ワインが趣味と言うと“味の違い分からないだろ!”と怒られそうだな」みたいな。好きだからといって肩までどっぷり浸かっている方は少ないのに、一定のレベルまで持っていくにはハードルがあって。そのジレンマの中で「こんな自分はダメなんじゃないか」と自己嫌悪に陥ってしまう……。

でも逆に言えば、「これが趣味です」と胸を張れるものが一つあれば、その人の生活って大きく変わるんじゃないか?という仮説がありました。そこで、最初から道具を揃えたり、知識を入れたりせずとも簡単に始められて、「気づいたら好きになっている・語れる」状態を、Otomoniなら実現できると思っています。

サービスを使っているだけでそのうちに「ここがおいしい」って言えるブルワリーさん、「これが好き」って言えるビアスタイル、「実はこれ……」と語れるストーリーができているという体験ができます。趣味にしようと思って趣味にするのではなく、純粋に楽しんでいるうちに気づいたら趣味になっていた、という状態になっていただけたら幸せですね。

 

―Otomoniの利用者やマインドが広まった世界とは、どんな世界なんでしょうか。

 

金澤:購買の概念が変わると思います。店頭でモノを買う時代からネットで調べて買う時代にシフトしてきましたが、そこからさらに「自分で調べない・選択しないで買う時代」にできたら面白いですよね。指向性だけを伝えて、商品購入は誰かに委託するOtomoniのようなサービスが広がれば、小売の概念を進化させられると思っています。

 

金澤:「意思決定を誰かに委託する」って寂しいようにも聞こえますが、「その人をその人以上に考える人」が出てくるという意味では温かみがあると思います。何より、今の時代の「選択」って、メリットよりデメリットが大きいんです。膨大な量の対象を調べて比較検討しなければいけないし、しかも情報の真偽自体もわかりませんし、そうして苦労して選んだ結果も、結局モノが多すぎるから最適解だったのかわかりません。

なので、自分が知らなかったものと出会ったり、新しい好みが見つかったり、自己理解が深まる方が、購買行動で幸せになる人が増えると思っていますし、それがOtomoniならできると思っています。

Text by 5PM 編集部

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